2008/06/29 Sun
 6月27日~28日、熱海で開かれた中央社保協第52回総会に参加した。後期高齢者医療制度廃止を求める各地の運動が報告され、熱気溢れる会議。
 各地での取り組みで注目されたのはマスコミの取材攻勢、どこの社保協も大いに注目を集めている。
 もう一つは「不服審査請求」。石川県、北海道、福岡県、京都府などをはじめ、「当事者の怒りを訴える行動」として、完全に定着した。7年前、大阪で介護保険料の不服審査請求運動を始めたときとは隔世の感がある。

 私も、この不服審査請求運動について、発言させていただいた。


医療差別と年金収奪政策は憲法違反!
高齢者の怒りを集団不服審査請求運動へ
     中央社保協第52回総会への提案
   2008年6月27日 大阪社保協・介護保険料に怒る一揆の会 日下部雅喜

4月からスタートした後期高齢者医療制度に対する高齢者・医療関係者・国民の怒りと反発は「制度廃止」の大きな世論となり、参議院での「廃止法案」の可決、衆議院での継続審議となりました。さまざまな運動のなかで、差別医療・年金収奪の当事者となる高齢者自身が異議を申し立てる「不服審査請求運動」が大きな注目を集めています。これまで、年金者組合や高齢者運動組織によって取り組まれた不服審査請求は、全国で約2400人になり大きな広がりを見せています。

不服審査請求運動は現代の「一揆」
 行政が一方的に保険料や給付などを決める行為(行政処分)が納得いかないとき、主権者である国民には、異議を申立て審査を請求する権利(不服審査請求権)が保障されています。
 大阪では、介護保険料の年金天引きが始まった2000年の10月から介護保険料集団不服審査請求を毎年取り組んできました。国が勝手に決め、自治体が一方的に高齢者の年金から保険料を天引きすることに対する高齢者の声なき声を集め、誰でも「ペン1本、印鑑一つ」で出来る運動として呼びかけました。不服審査請求に対し、自治体は必ず「弁明」を行わねばならず、その弁明に対し「反論書」を出すことができ、口頭で意見を述べる場も保障されます。都道府県の審査会は、不服審査請求を審理し、「裁決」を行わなければなりません。
 行政が一方的に決めたことに対し、主権者として異議を唱え、弁明、反論、意見陳述を通じて対等に主張を述べることができる。一揆の会では、集団不服審査請求運動を「現代の直訴」として多くの高齢者に呼びかけ、これまで大阪では毎年1000人~2000人の審査請求を組織してきました。これを背景に「介護保険料は憲法違反!」とする裁判闘争を5年間にわたってたたかい、大阪高裁で敗訴したものの、8割以上の自治体での独自減免の制度化や低所得者への負担軽減措置の実現という貴重な成果をあげました。

後期高齢者医療制度廃止の世論を審査請求で
 後期高齢者医療制度は、制度そのものが高齢者に対する医療差別であり、医療費の一部を年金から収奪することによって、医療抑制の仕組みを持ち込もうとするものです。政府は「微調整」というべきわずかな手直しをもって国会を乗り切ろうとしていますが、制度の違憲性を明らかにし、「廃止」を前面に掲げたありとあらゆる運動が求められています。その中で、制度の当事者である高齢者の方々が直接、異議を申し立てる不服審査請求がきわめて大きな意義を持っています。
 4月の保険料仮徴収通知に続き、これから7月頃にかけて「本算定」の後期高齢者医療保険料賦課決定と徴収決定の通知が送られてきます。この中で、政府与党のいわゆる見直し措置も具体化されます。国会は閉会中ですが、不服審査請求運動はいよいよ正念場を迎えていると思います。「制度廃止」を前面に掲げながら、高齢者自身が絶対納得しない、ますます怒っているという決意を強く広く社会的にアピールし国に迫っていく本格的な「高齢者一揆」の出番です。仮に後期高齢者1300万人の1割、130万人が全国で不服審査請求を行えば、与党の見直し措置など完全に吹っ飛び、制度廃止の圧倒的な世論の中で福田内閣を打倒し、解散・総選挙、後期高齢者医療制度廃止法案可決も現実のものとなるでしょう。現代の一揆である集団不服審査請求運動とはそのようなものです。

不服審査請求運動を成功させるために
 不服審査請求運動を取り組むにあたっての留意点を述べます。
第1に、後期高齢者医療制度、保険料に納得ができない75歳以上の高齢者は誰でも出来る運動として幅広く取り組むことです。行政の決定に「不服」を申し立てることは何か「お上に逆らう」物騒なことのような理解がありますが、国の主人公、主権者としての正当な権利として審査請求権があることを広く訴えていくことが重要です。また、当事者である75歳以上の本人が出来ない場合でも家族や知人が代わって行うこともできる「誰でもできる運動」として取り組むことができます。
第2に、行政(市町村、広域連合、審査会事務局である都道府県)に対し、名実ともに審査請求権を保障させる取り組みを行うことです。県によっては審査請求ができるという案内パンフレットも審査請求用紙も用意していないところがあります。また、審査請求書の記載内容にさまざまなケチをつけて受付しない、門前払いをしようとするところもあります。ひどいところは「法で決まっていることは審査請求してもムダだ」「制度問題は審査請求できない」などという場合もあります。こうした対応に厳しく抗議し、住民の審査請求権を保障させるための措置を講じるよう求めていくことが重要です。また、審査請求は処分庁である自治体の窓口を経由して行うことも出来るので、審査請求希望者への用紙の配布、懇切丁寧な説明をさせるよう求めていくことが大切です。主権者としての権利を行使するためにこうした行政の態度を改めさせるところから始めなければならないのがわが国の現実です。
第3に、後期高齢者医療保険料の特徴を踏まえた審査請求を行うことです。後期高齢者医療制度では、①保険料の金額は広域連合が決める(賦課決定) ②保険料の徴収方法-年金天引き(特別徴収決定)、自主納付(普通徴収決定)は市町村が決める という二重の行政処分です。したがって審査請求書には、この二つに対して不服を記載することが必要です。「保険料負担に納得できない」「徴収方法の一方的な決定には納得できない」この2点を明記することです。なお、4月の仮徴収通知に不服審査請求を行った人も、今回の本算定通知は別の処分であるので、改めて審査請求を行うこともできます。

年金収奪政策を転換させる運動を
 後期高齢者医療保険料の年金天引きに便乗して65歳~74歳の前期高齢者の世帯主の国民健康保険料も今年度から天引きが開始されることになりました。
地方税法改定で2009年10月からは住民税も年金天引きの対象となります。2000年10月介護保険料が年金天引き開始されてから、2006年度の税制改悪による年金課税強化を経て、65歳以上になって年金を受給するとただちに介護保険料、国民健康保険料、住民税が天引きされ、さらに75歳になると後期高齢者医療保険料の天引きという、まさに「年金収奪システム」が完成することになりました。「宙に浮いた年金記録問題」が未解決で、生活を保障する年金制度も未整備なまま、年金から保険料と税を取り立てる仕組みだけが構築されたのです。
 年金天引きは単なる「集め方」の問題ではありません。老後の生活を保障する社会保障給付である年金から行政が一方的に保険料や税を取り立てるという強制徴収は、生存権侵害であり、年額18万円・月額1万5千円の低年金者も対象にするということも含めて高齢者収奪の政策です。こうした年金天引き制度は行政からすれば何の徴収努力もなしに保険料徴収できることから、減免制度や徴収猶予・分納制度など納付困難者に対する配慮措置を大きく後退させることになります。また、滞納者に対する制裁措置をいっそう強化することにもつながります。
 しかし、後期高齢者医療制度に対する国民的な怒りは、この年金天引き路線を一定後退させました。
与党見直しでは、年金天引きについて、
①国保の保険料を確実に納付していた者(本人)が口座振替により納付する場合 
②連帯納付義務者(世帯主又は配偶者)がいる者(年金収入180万円未満の者)でその口座振替により納付する場合 については「申し出」により普通徴収ができる、とされました。
そしてこの措置は、後期高齢者医療保険料とともに65歳~74歳の世帯主の国保料の年金天引き対しても適用するとしています。
これまで年間18万円以上年金があれば一方的に天引き対象とされたことから比べればまさに、風穴を開けさせたことになります。
 私たちは、これを足がかりに一方的な保険料年金天引き制度をやめさせる運動を本格的に強化しなければなりません。とくに、今回の天引き緩和措置は「申出」によるものとされていますので、天引き離脱者を意識的に増やす取り組みなしには事態は進展しません。この意味からも不服審査請求で「一方的に年金天引きをせず、まず本人の意思を確認して徴収方法を決めよ」という申立を組織していくことが重要です。

不服審査請求から違憲訴訟へ 全国的討議を呼びかけます
 不服審査請求は、主権者としての権利行使としては大きな意義を持っていますが、同時に限界性を持っています。個々の行政処分の「適法性」を争うことしかできないため、法令違反でない限りその請求が認められることはまずありません。大阪でこれまでのべ1万件近く行った介護保険料の不服審査請求はすべてが「棄却」でした。
 やはり、後期高齢者医療保険料の不当性を本当に審理し、裁いていくためには行政不服審査でなく、後期高齢者医療制度そのものが日本国憲法と高齢者の実態に照らして違憲・不当であるという裁判闘争を検討せざるを得ません。
 不服審査請求運動の全国的な展開を基礎に、「後期高齢者医療制度は憲法違反」という裁判闘争ができないか、と考えています。後期高齢者医療制度は、75歳という年齢で命を差別する制度であり、憲法14条の平等原則に反します。また、高齢者の収入に関わりなく全員に保険料を課し、年金から天引きするという制度は憲法25条の生存権保障にも違反します。
 行政に対し、不服審査請求運動で抵抗・告発し、立法(国会)の場で制度廃止法案の可決を求めていくという運動を展開しているところですが、国会での状況次第では、司法(裁判所)で、後期高齢者医療制度の憲法違反を告発していくたたかいも必要になると思います。
 いったん決まった制度を廃止させようという日本の社会保障闘争史上かつてなかったたたかいを取り組むわけですから、立法、行政、司法の3分野でやれることはすべてやり尽くす、このような構えが必要ではないかと思います。
 かつて朝日訴訟が生活保護行政を変え、学生無年金訴訟や生活保護学資訴訟が制度を変え、中国残留孤児裁判が新たな支援策を確立し、原爆症認定裁判が国の認定基準を変えようとしています。
 後期高齢者医療保険料に対する不服審査請求を土台に全国の各地裁に集団で提訴するような歴史的な社会保障裁判-後期高齢者医療制度違憲訴訟が全国で取り組めないか、みなさんのご検討をお願いし、提案といたします。
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Category: 社会保障問題
2008/06/23 Mon
 与党がドタバタでまとめた後期高齢者医療保険料の見直し案。見直しというより「微修正」というべきケチな内容だ。
 が、しかし、年金天引きの緩和は現場に新たな混乱を呼んでいる。

 報道によれば
 〈1〉年金収入が年180万円未満で、口座振替できる世帯主または配偶者がいる〈2〉国民健康保険(国保)の保険料の滞納がなかった―人は、申し出により、年金天引きでなく、口座振替の選択も可能に。
 また、軽減措置との関係では、
 今年度、年金収入が年168万円以下の人は10月から半年間、保険料徴収を凍結し、保険料の「均等割」を実質8割5分減額。 来年度以降は、年金80万円以下の人は9割減額。
 というものだが、

 10月からの年金天引きをこれから停止するのは時間があまりにない。年金保険者(社保庁など)へのデータは8月はじめが締め切りのはずだ。
 これを申出により普通徴収に切り替えるというのだ。

 さらにこれは、後期高齢者医療保険料にとどまらない。
65~74歳で国保に加入する世帯主も、滞納がなければ、後期高齢者医療保険料と同様に選択可能にするという。

 国保料の年金天引きを10月から開始しようとしていた大阪市などはてんやわんやである。
 6月に全員に国保料本算定通知。これは全員普通徴収である。
 そして7月には65歳以上74歳の世帯の特別徴収(年金天引き)への「変更通知」。ところが、年金天引きの緩和措置の対象になる人は、8月初めまでに申し出すれば10月からの天引きを止めるという。

 つぎはぎだらけ、その場しのぎの対応は現場と高齢者に混乱をもたらすだけだ。

 やはり、後期高齢者医療制度は廃止、そして国保料の年金天引きは全員停止。

 これしかすっきりする方法はない!
Category: 介護保険料
2008/06/09 Mon
 大阪府は、今年3月「大阪府介護給付適正化計画」を作成しました。5月末に一部大阪府ホームページに公表されましたが、肝心の市町村ごとの「適正化運動実施状況調査」や「市町村指導体制」、「保険者別実施計画」は公表されていません。そこで大阪府介護支援課に情報公開請求を行い市町村別計画を含め「介護給付適正化計画」の全文を入手しました。
 大阪府の計画の特徴は、東京都などの計画と比べてもきわめて膨大なページ数(東京都128ページ、大阪府は保険者ごとの計画含め453ページ)の計画であることです。内容も国の示した「実施目標」(適正化重要事業実施保険者数を2010年までに100%)に加えて大阪府独自の「努力目標」を定め、「定量指標」の設定など、国をはるかに上回る目標を各市町村に課していることです。 とくに「ケアプラン点検」では、現在実施自治体は22(53.7%)、未実施自治体が19です。これを2010年度までに全自治体実施(100%)にするという実施目標に加え、それぞれの自治体ごとに「定量指標」を設定させています。「最低基準の実施量率」として「保険者の圏域ごとに1事業所」を定め、さらに3年間の実施量率を上乗せして実施することにしています。
 不正請求、虚偽申請による不正事件が後を絶たない状態で給付の適正化そのものは必要です。しかし、今回の国の「給付適正化事業」は給付費全体を抑制・削減を目的としたものであり、利用者に必要なサービスが取り上げられる危険性がきわめて大きいものです。大阪府はこれにさらに「独自目標」を設定し、全自治体に計画化・実行を迫っています。
 とくに、「ケアプランチェック」は、現状のまま実施された場合、自治体職員の機会的な「点検」により、利用者の状況を無視した「ケアプラン見直し指導」の乱発により、地域のケアマネジャーを大きく萎縮し、利用者本位の要とも言うべきケアマネジャーの裁量や利用者の意向尊重を大きく制約される危険性があります。

 6月21日、給付適正化事業を考える学習会を開きます。
http://www2.ocn.ne.jp/~syahokyo/bira/080621-keamane.pdf
Category: 介護保険見直し
2008/06/01 Sun
 5月31日は、「ヘルパー何でも110番」で1日国労大阪会館。電話番号案内の不備もあって午前中はさっぱり相談電話がかかってこなかったが、昼からポツリポツリで電話が入った。
 内容は、訪問介護のサービス内容や指導監査のことばかり。

 相談1
 認知症の利用者に牛乳や水を買いに外出介助をしています。元気だったころの利用者が自分で買物にいっていたスーパーにヘルパーと一緒に行くことで、充実感もあり買物をしているという実感も味わっていただいているのですが、実地指導で、「買物というが、水や牛乳だけで日常生活に必要な買物と言えない。実際は気分転換の散歩ではないか」と言われた。
 
 回答
 その指導は行き過ぎです。水や牛乳は利用者本人が飲むものであれば日常生活に必要なものであるのは明らかです。また、厚生労働省通知老計第10号の「自立支援のための見守り的援助」にも買物介助の意義が明記されています。そもそも認知症の利用者の閉じこもり予防等のための外出介助はヘルパーの専門的援助の一つであり、これを否定している大阪府のQ&A自体が不当です。利用者の状態からその買物介助の必要性を明らかにし、援助目標をきちんと文書化して認めさせましょう。
 
 相談2
 通院介助で、タクシーにヘルパーが同乗していくのですが、座位が保持できず支えが必要な利用者や酸素を使用しているような利用者であっても「車中は給付対象外」と指導された。

 回答
 通院介助で院内の受診中の「単なる待ち時間」は除外するというのはある程度理解できますが、タクシーを含む公共交通機関の車中でも見守り、気分の確認などの行為を一律に給付対象外とするのは行き過ぎです。利用者の心身の状態から必要なサービスは車中であっても給付の対象です。大阪府のQ&Aでも車中は対象外などと書いていません。
 まったく見守りの必要のない利用者と何時間も同乗するような場合は別として、行政区内の病院に同乗し、見守り、介助するサービスは、利用者の状態から必要な援助内容、所要時間を訪問介護計画にも記載し、認めさせましょう。


 相談3
 買物介助は、本人がヘルパーと行くことで心身の状態の維持・改善の見込める利用者だけに認められるもので、それ以外は、ヘルパーが買物代行し、「生活援助」で算定しなさい、と指導された。

 回答
 そのような規定は、ありません。援助目標に状態の維持改善は、含まれますが、そのような機械的な線引きで買物介助の対象者を限定することは不当です。
要は、利用者の心身の状態から必要な外出介助か、援助目標が適切に設定されているかの問題です。保険者と話し合ってみてください。




 ほかにもいろいろ、相談を受けたが、へルパーに対する過剰規制のひどさを改めて実感した。これではヘルパーやケアマネジャーはやってられないし、こうしたアホ行政の過剰規制で生活に必要なサービスを奪われる利用者が不幸である。
Category: 未分類

プロフィール

福祉・介護オンブズマン管理者 日下部雅喜(くさかべまさき)

Author:福祉・介護オンブズマン管理者 日下部雅喜(くさかべまさき)
 福祉・介護オンブズネットおおさか事務局長
 介護保険料に怒る一揆の会事務局長
 大阪社会保障推進協議会介護保険対策委員
 
 

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