2015/03/31 Tue
大阪市解体・府への吸収で国保・介護・生活保護はどうなるか  その② 国保-2
                          日下部雅喜

(2)大阪市消滅とともに独自繰入消滅で国民健康保険料大幅引上げも

大阪市の国民健康保険には、市民の約3割にあたる約76万人が加入し、全国の政令指定都市では最も高い加入率となっています。国民健康保険はサラリーマンなどの被用者保険に加入できない人を対象としているため、自営業者とともに無職者や年金生活の高齢者などの低所得者を多く含みます。一方で医療を利用する人の割合が高いので、医療給付は多くかかります。国民健康保険は、「公費5割・保険料5割」が原則ですが、低所得者の保険料は公費の負担で軽減しています。そして、多くの市町村は保険料を抑制するために、さらに独自に自治体の一般会計から国民健康保険会計へ任意の繰り入れを行っています。大阪市の国保加入者の1世帯当たりの平均所得は全国平均よりも低いため、大阪市は加入者の保険料を抑えるため任意に繰り入れをしており、2014年度は176億円を国保会計に繰り入れています。
大阪市が解体消滅し、5つの特別区からなる「特別事務組合」運営の国保となればどうなるでしょうか。特別事務組合の国保の財源は、特別区の負担金や国・府の支出金などです。大阪市が現在、国民健康保険料抑制のために支出している176億円の繰入金はどうなるかは「協定書」ではまったく書かれていません。この独自繰入金がなくなれば、国民健康保険料は一人当たり年間2万3千円以上の値上げとなることを、昨年10月の大阪市会で大阪市当局がみとめました。4人家族で年間10万円近く保険料があがることになります。
特別事務組合には、特別区の議会の権限は及ばないため、住民の要求は届きにくくなります。現在の大阪府が府内市町村の国保会計への独自繰入を解消させる方向で指導していることと合わせて考えると、大阪市消滅と同時にこの独自繰入も「消滅」してしまい、大幅な保険料引上げとなる危険性はとても高いと言わざるを得ません。現在、大阪市では国保加入世帯のうち約80%が所得200万円以下の世帯です。そして加入世帯の24%が保険料を滞納しています。大阪市は高すぎる国民健康保険料が払えない滞納者に対し、保険証取り上げや無慈悲な取立て、預貯金の差し押さえなどが大きな問題となっています。国保料大幅引上げが住民のいのちと暮らしを大きく破壊することは目に見えています。
(3)国の「国保都道府県化」で“3重行政”の無責任国保へ
国は、社会保障改革の一環として、国民健康保険を市町村に代わって都道府県が財政運営の主体になる法案の国会提出・成立を狙っています。その内容は、①国民健康保険の財政運営は都道府県が担う ②都道府県は市町村に「分賦金」の納付を求め、市町村は「分賦金」を納めるのに必要な保険料率・額を定め住民から保険料を集める ③都道府県は、市町村に「収納率目標」を設定。「標準保険料率」等を提示し、賦課・徴収を指導する ④保険給付、資格管理、届出などは引き続き市町村が担う というようなものです。これは、市町村から国保の財政運営の責任・権限を取り上げ、保険料徴収強化に駆り立てる「住民いじめ」の国保への変質をもたらすものです。国保財政を都道府県運営にするのは、社会保障改革の中で「病床削減」など医療費抑制を都道府県に行わせることと一体のものです。
この「国保広域化」は、橋下徹が大阪府知事時代から、全国に先駆けて2010年から推進し、国保への一般会計繰入と独自減免廃止、統一保険料(大多数の市町村は大幅引上げ)をめざしていたものです。今回の国の「国保都道府県化」はかつての大阪府の構想とは少し違いますが、市町村国保を否定する点では同じ動きです。
この国の「国保の都道府県化」と、大阪市消滅・「国保の特別事務組合運営」が一緒になればどうなるでしょうか。
第1に、大阪府内全市町村の国保の財政運営は、大阪府に移ります。特別事務組合の国保も同様です。
第2に、大阪府は、「分賦金」を各市町村に求めます。特別事務組合も大阪府から「分賦金」を割り当てられます。
第3に、特別事務組合は、「分賦金」を納めるのに必要な保険料を決定しますが、国保の対住民の事務は「出先」である特別区の区役所等で行います。
住民から見れば、国保の「窓口」は区役所・支所。しかし、保険料を決めるのはその「上」にある特別事務組合。国保の財政運営はさらにその「上」の大阪府が決める。まさに3重行政で、住民の声はまったく届かないところで国保財政や保険料が決められ、管理統制と保険料取立だけが徹底して強化されるという事態になります。もっとも大切な「住民のいのちとくらし」はどこも責任をもたず、保険料取立てだけは徹底強化。まさに、無責任・無慈悲の3重行政の国保となります。

(つづく)
スポンサーサイト
2015/03/31 Tue
大阪市解体・府への吸収で国保・介護・生活保護はどうなるか  その① 国保-1
                          日下部雅喜

はじめに
 大阪市を廃止して5つの「特別区」に解体し、大阪府に統合する「特別区設置協定書」(以下「協定書」)が実施されると、基礎自治体のもっとも大切にしなければならない住民の「いのちとくらし」にとってどうなのしょうか。自治体のもっとも基本的な仕事である国民健康保険と介護保険、そして生活保護について見てみることにします。
 
1 国民健康保険
(1)基礎的自治体の呈をなさない「特別事務組合共同処理」
 国民健康保険は、被用者保険などの対象とならない人が加入する健康保険で「国民皆保険」の柱です。国民健康保険法では、その目的を「国民健康保険事業の健全な運営を確保し、もつて社会保障及び国民保健の向上に寄与する」(国民健康保険法第1条)とし、「市町村及び特別区は、この法律の定めることにより、国民健康保険を行うものとする。」(同第2条)と定めています。
市町村が運営し、必要な財源を公費負担とともに、国民健康保険料として住民から集め、医療給付を行っています。これは健診事業などとあいまって住民の健康を守る重要な仕事です。したがって、一部の例外を除きほとんどすべての市町村は国民健康保険を自前で運営しています。
「協定書」では、大阪市を解体することで、国民健康保険の運営者(保険者)である大阪市も消滅します。そうなれば、「特別区」が国民健康保険の保険者となるはずです。ところが、特別区単独では運営せず「特別区を構成団体とする一部事務組合」(仮称「大阪特別事務組合」)で事務処理を行うとしています。特別区の区役所・支所では、申請・届出などの窓口業務を行うだけになり、国民健康保険運営には、各特別区は責任をもちません。協定書ではその理由を「専門性の確保、サービスの実施に係る公平性及び効率性の確保をはかるため」と説明しています。
しかし、住民の「いのちと健康」にかかわるもっとも基本的な仕事である国民健康保険も自前で運営できない「特別区」とは、いったい何なのでしょうか。「協定書」は、特別区について「中核市の要件を上回る35~70万人の人口」にしたとして、現行の中核市以上の権限を持たせるかのような説明を行い、「住民に身近な業務は特別区が担う」としていますが、国民健康保険のような市町村の基礎的な事務すら単独で担えないのが実態です。保健事業や住民健診事業を連動させながら住民のいのちを守る仕事を自前でできない特別区は、たとえ規模が70万人であっても、基礎的自治体の呈をなしていないと言わざるを得ません。東京都の23特別区は、国民健康保険はすべて単独で運営しています。大阪府内でも最小の自治体である千早赤阪村を含む全市町村が単独で国保を運営しています。このことからも、国保の「特別事務組合」運営がいかに異常なものかが分かります。この1点を見ても大阪市解体・特別区分割が住民のいのちや健康を守る役割を否定するものであることを物語っています。

(つづく)
2015/03/30 Mon
日刊ゲンダイ2015年3月30日付け特集「これが日本の格差」の介護のところで小生のインタビューが載りました。
記者の方は、介護給付の「地域格差」を問題にしたかったようですが、小生の方は、所得による格差、介護保険料負担についてお話ししました。電話インタビューなので、十分に伝わっていたかどうか。

日刊ゲンダイ紙面

Category: 雑感・雑記
2015/03/24 Tue
3月10日の町議会委員会で、介護保険料引き上げ案が否決されていた大阪府田尻町。
残念なことに昨日(3月23日)の本会議では、介護保険料値上げは、委員会で反対した議員も切り崩され、共産党以外賛成で可決された。
田尻町当局は、委員会否決後、大阪府に、介護保険料据え置きについて「照会」し、大阪府は3月13日付けで回答。田尻町が介護保険料を据え置くために、町の一般財源から介護保険への繰入れについて、「繰入れを行うことのないようお願いします。」とする大阪府福祉部長名の文書が出された。

田尻町議会には住民677人から、「介護保険料引き上げ中止、町独自の軽減」を求める請願が出され委員会では全会一致可決されていた。まさに介護保険料据え置きは「町民の声」であった。これに、干渉する文書を出し介護保険料引き上げを誘導した大阪府の態度は許しがたいものである。
また、介護保険法令のどこにも自治体が一般財源を介護保険特別会計に繰り入れることを禁じる規定はない。政府厚生労働省も「禁止ではないので制裁措置もない」と明言している。今回の大阪府福祉部長回答も「お願い」に過ぎない。
田尻町当局がこれに迎合し全議員に大阪府福祉部長回答を配布し「国と大阪府が適当ではない、と言っているからできない」などと言って回り、議員の多数が屈服したことは、極めて残念である。
Category: 介護保険料
2015/03/21 Sat
3月10日、大阪府の田尻町で第6期介護保険料引き上げ案が町議会の委員会で否決された。さらに677人の町民から出されていた「介護保険料引き上げ中止、町独自の軽減」を求める請願は委員会全会一致で可決。これに対して大阪府は13日に「一般財源の繰入れを行うことのないようお願いします」との福祉部長回答を出し、干渉している。3月23日が本会議。基準月額4870円を5880円へと、一挙に1010円もの大幅引き上げを許さない田尻町のたたかいに支援を!
Category: 介護保険料
2015/03/06 Fri
 鹿児島大学大学院の伊藤周平先生と共著で出版しました。

「改定介護保険法と自治体の役割─新総合事業と地域包括ケアシステムへの課題~改定された介護保険制度に自治体はどう対応するか」



伊藤周平,日下部雅喜(著)
本体1204円+ 税
120ページ A5

自治体研究社 「改定介護保険法と自治体の役割」

介護保険制度が改定され、要支援サービスが保険対象外となった。サービスを継続し、地域包括ケアへつなぐための自治体の役割を明らかにする。

目次

★第1章 改定された介護保険法と介護保険制度の本質
1改定された介護保険法
2安倍政権の社会保障改革の特徴
⑴打ち出された社会保障の削減
⑵消費税増税と社会保障削減の「一体的実現」
3介護保険制度導入の目的とその本質
⑴「介護の社会化」という理念
⑵高齢者医療費の抑制と医療の安上がり代替
⑶給付金方式・直接契約方式の導入と「介護の商品化」

★第2章 介護保険制度改革と医療・介護一体改革
1プログラム法にみる医療・介護分野の改革方針
⑴プログラム法の基本的考え方
⑵医療・介護分野の改革方針――医療・介護一体改革の必要性
2医療制度改革――医療提供体制の改革と療養の範囲の適正化
⑴医療提供体制の改革――受け皿としての地域包括ケアシステム
⑵医療保険制度の財政基盤の安定化と保険料負担の公平の確保
⑶医療保険の保険給付の対象となる療養の範囲の適正化
⑷TPP と医療保険
3介護保険制度改革――保険給付の範囲の適正化と利用者負担の増大
4医療・介護総合確保法の目的とねらい
5改正医療法の内容と問題点
⑴病床機能報告制度の創設と地域医療構想の策定
⑵財政支援制度の創設
⑶医療計画の見直しなど
6医療・介護総合確保法成立後の改革動向
⑴「骨太の方針」にみる改革案
⑵患者申出療養制度の創設
⑶小括

第3章 改定介護保険法の内容と問題点
1予防給付の見直し――要支援者の保険給付外し
⑴予防給付見直しの概要
⑵厚生労働省のガイドライン案にみる新総合事業のサービス事業
⑶上限が設定される新総合事業と予想される要介護認定の厳格化
2居宅・施設サービスの見直し
3費用負担の見直し
4改定介護保険法がもたらすものと今後の課題
⑴改定介護保険法がもたらすもの
⑵今後の課題

第4章 自治体での運動課題
はじめに――自分のアタマで考える自治体へ
1介護保険改定が自治体行政にもたらすもの
⑴自治体での対応が問われるもの
⑵政府・厚生労働省が自治体に「期待」したものと現実
⑶市町村の介護保険行政に何をもたらすか
2要支援サービス見直しの狙いと典型例
⑴要支援サービス見直しの狙いと「地域包括ケアシステム」
⑵要支援外し・新総合事業を三重県桑名市に見る
3要支援サービス見直し・新総合事業に対する運動――要求と取組み方
⑴「猶予期間」と私たちの「目標」
⑵要支援者のサービスを守る3 つの課題
⑶要支援者のサービスを守るための制度的課題
⑷「猶予期間活用」の場合の各時期の運動の課題
4地域包括ケアシステムをめぐる取組み
⑴地域支援事業(包括的支援事業)の新メニューと実施体制
5制度改定に対応する一連の変更への対応
⑴利用者負担問題
⑵補足給付(施設利用者の食費・部屋代軽減)問題
⑶特別養護老人ホーム入所問題
6介護保険料問題
⑴大幅な引上げとなる第6 期介護保険料
⑵公費投入による低所得者軽減を法制化
⑶消費税再増税延期で、軽減強化の大部分を延期
⑷「公費」による保険料軽減の活用を

第5章 介護保障制度への改革提言
1超高齢社会と「介護の危機」
2介護保険開始後の社会保障と国民の反撃
⑴障害者分野での貴重な到達
3介護保険の危機的状況打開のための当面の「部分的改善」の政策・制度提言
4「根本改善」――保険制度廃止へ、そして人権保障の介護制度の創造へ
⑴「介護の社会化」と介護保険の功罪
⑵「障害者・高齢者総合福祉法」提言に学ぶ
⑶「保険方式」は世界では圧倒的少数
⑷今後の議論と運動の発展のために
Category: 介護保険見直し
2015/03/01 Sun
3月の講師活動です。

3月3日(火)19:00~20:00
阪南市 サラダホール(阪南市立文化センター)
介護保険と国民健康保険の広域化を考える
明るい民主的な大阪府政をつくる泉南地域連絡会

3月4日(水)18:30~20:30
和泉市コミュニティセンター
医療・介護制度はどうなる
和泉市の社会保障をよくする会

3月7日(土)18:30~20:00
札幌市中央区 毎日札幌会館TKPセンター
「改正」介護保険にいかに立ち向かうか
介護に笑顔を!北海道連絡会

3月13日(金)10:00~11:30
堺市北区市民センター
介護保険制度改定について
堺市老人介護者家族の会北ブロック

3月15日(日)13:35~15:35
和歌山市日赤会館
介護報酬改定、介護保険事業計画による利用者・事業者への影響
介護保険の改善をめざす和歌山実行委員会

3月18日(水)18:30~20:30
堺市東区北野田診療所ホール
介護保険制度改定を学ぶ
北野田医療生活協同組合

3月19日(木)18:30~20:30
大阪市浪速区大阪府保険医協会M&Dホール
介護報酬改定
大阪社会保障推進協議会

3月21日(土)13:00~14:30
長野市 長野中央介護センターつるが
2015改正介護保険徹底解剖
長野県民医連介護ウェーブ推進委員会

3月22日(日) 13:30~16:00
津市 三重県教育文化会館
介護報酬改定
三重県社会保障推進協議会

3月28日(土)13:40~15:00
中津川市福岡区民会館
改正介護保険に地域でどう対応するか
NPO法人ぎふ市民協・NPO法人中津川福祉・医療ネット
Category: 雑感・雑記

プロフィール

Author:福祉・介護オンブズマン管理者 日下部雅喜(くさかべまさき)
 福祉・介護オンブズネットおおさか事務局長
 介護保険料に怒る一揆の会事務局長
 大阪社会保障推進協議会介護保険対策委員
 
 

月別アーカイブ

ブロとも申請フォーム

ブログ内検索