2016/04/14 Thu
大阪市と堺市の「総合事業案」を比較する 
 大阪市と堺市はともに、総合事業実施は2017年4月で、2015年中に審議会で「素案」のまとめ、その後2016年度前半に決定、後半から実施準備というスケジュールで準備をすすめています。サービス類型など共通するものもありますが、現行の指定事業者の取り扱いについて、隣接する市でありながらまったく逆の方針をとっています。(両市とも案の段階であり、3月時点での状況です)
①大阪市 
 「住民主体サービス」はなし

 大阪市の特徴は、生活支援体制整備事業はモデル事業実施はしているものの、総合事業移行時点では、「住民主体サービス」はまったく想定していないことです。担当課長は「これまでどおり必要な方に責任をもって提供できるようボランティアや個人にゆだねることなく、指定事業者制により実施してまいりたい」(大阪市社会福祉審議会高齢者福祉専門分科会での説明)と、総合事業においては「指定事業者」によるサービス提供を明言しています。
 サービス類型では、訪問型・通所型とも「現行相当」「基準緩和「短期集中」の3類型で住民主体型はありません。しかし、現行相当とともに、基準緩和型が「事業の柱」になるとしています。

○介護予防・生活支援サービス事業 (要支援1・2、基本チェックリスト該当者)
【訪問型サービス】
・介護予防型訪問サービス (既存の介護予防訪問介護相当)
・生活援助型訪問サービス (基準緩和型:A型)
・サポート型訪問サービス (短期集中型:C型)
【通所型サービス】
・介護予防型通所サービス (既存の介護予防通所介護相当)
・短時間型通所サービス (基準緩和型:A型)
・選択型通所サービス (短期集中型:C型)

訪問型は無資格サービスを既存事業所に参入させる 
 訪問型サービスでは、介護人材確保が困難になっており、将来大きく人材不足になる見込みであることを理由に「新たな領域」での人材確保として、資格要件を緩和した「緩和型サービス」を導入し、これへの参入は既存の訪問介護事業所を想定しています。
 生活援助については、「訪問介護員から研修受講者による支援に置き換える」とし、単価設定は「現行相当サービス」の75%というものです。大阪市の説明では、人件費部分は、訪問介護員の身体介護の時給単価が1300円程度、家事援助の方の単価が950円程度と一定の差が見られる」というのがその理由です。
 利用対象者については、「既存の利用者は現行相当サービス」としながら、新規の利用者は身体介護以外は、緩和型の利用という考え方です。「93%の方は掃除洗濯買い物等の生活援助のサービスを中心」との認識で、将来的に増加する利用者は「緩和型」で対応したいとの考え方です。
 しかし、最大の問題点は、無資格者にしたからといって介護事業所が人材を確保できる展望が全くないことです。わずか950円程度の時給で人材が確保できるとは到底考えられません。さらに、わずかな研修で実際に訪問活動が円滑にできるとも考えられず、多くに事業所は既存の有資格のヘルパーで対応せざるを得ず、報酬だけが大幅に下がるという結果になりかねません。
 通所型は「緩和困難」といいながら短時間緩和型を導入
 大阪市は通所型サービスについては、「定員が少なくなると実際のミニデイ相当まで基準が緩和されている」「国の基準緩和の考えで設定すると現行と何ら変わらない運営をしているのに、報酬だけがさげられるという可能性がある」ときわめて正しい指摘をし、人員・設備基準の緩和は行わないという結論に至っています。ところが、「時間で基準緩和」という考え方を打ち出し、「3時間未満」の場合は報酬を70%にするとしています。
 大阪市は、「入浴だけのニーズ、利用開始時の短時間利用」などを想定し、短時間はコストがかからないと、大幅カットの理由を説明していますが、パワーリハビリなどが低コストとは限りません。こうした理由なき報酬の切り下げは、2015年度報酬改定で20%以上もの切り下げで疲弊し経営困難となった通所介護事業の経営にさらなる打撃を与えかねません。
 自立支援型ケアマネジメントは特段の仕組みなし
 大阪市では、現行の介護予防プランは大半が居宅介護支援事業所に委託しており、総合事業でもこの枠組みを維持するようです。利用者に「卒業」を迫ったり、緩和型サービスへの移行を促進する「予防マネジメント」の仕組みについては、今のところ「考えていない」との対応です。
基本チェックリスト+要支援認定 ―事業対象者判定の独自ルール
 私たちは、「要支援認定をさせず、基本チェックリストで振り分けを行うことは認定申請権の侵害につながる」と指摘し、すべての利用者相談者に要介護認定申請を促すように要求してきました。
 そうした中で、大阪市は今年(2016年)3月末に突如、「事業対象者判定」の独自ルール案を示しました。
 大阪市案は
 ①基本チェックリストで「該当」となった人は、健診を受けて、総合事業の「短期集中型サービス」は利用できる
 ②基本チェックリストで「該当」となった人が、総合事業の「基準緩和型サービス」「現行相当型サービス」を利用する場合は、さらに「要支援認定」を受けて要支援1・2と認定されることが必要
 というものです。
  これは、基本チェックリストによる事業対象者判定では問題があるということを大阪市が認めたという側面はありますが、基準緩和・現行相当サービスを利用するためには、また、要支援認定を受けなければならず、「二重の関門」による利用抑制という重大な問題があります。大阪市は、「真に必要な方に適切なサービスが提供され、いたずらに事業費が増加することがなくなる」としており、二重関門による給付抑制が狙いであることは明らかです。
  不当な「独自ルール」を撤回させ、私たちが要求しているように、チェックリストによる振り分けを止めて、最初からすべての相談者に要介護認定申請を案内するという方法に変更させるべきです。
一人暮らし・低所得の要支援者を支える訪問介護・通所介護のサービス切捨ては大問題
 大阪市の高齢者介護の特徴は「低所得者と一人暮らし」が全国平均よりも多く、要支援者の構成割合が多いことが特徴です。そのため、居宅サービスの利用割合が高く、とくに、給付総額に占める訪問介護の割合が高いという特色があります。言い換えれば貧しい一人暮らしの高齢者をホームヘルプサービスとデイサービスなどが支えることによって、地域での暮らしを維持しているといえます。大阪市の総合事業案は、ホームヘルプを無資格者導入で大幅に報酬を切り下げ、デイサービスは短時間を大幅にカットするというものです。低所得・一人暮らしの生活を支える訪問介護・通所介護事業所はこれによって大打撃をこうむることになります。
②堺市
二転三転する当局案、運動の力で一定修正
 
 堺市では、総合事業にサービス類型案が提示されるごとに内容が変わるという混乱した検討姿勢でした。堺社保協を中心に、市内の介護事業者に広く呼びかけて学習会開催、アンケートを行い、市当局への要求提出と交渉、議会への市署名提出などの運動を進めた結果、市当局の総合事業案を手直しさせました。
 今年3月末時点での到達点と特徴については次のようなものです。
ガイドラインの類型を実施せず
 堺市は、当初のサービス類型案では、国のガイドラインのサービス種別を踏まえて訪問型、通所型とも4種類の類型を示していました。
 しかし、さまざまな意見が寄せられる中で修正され、3月29日の審議会では、次のような素案となりました。
「多様なサービスは現行サービスに置き換わらない」と明記
 「国の例示と堺市の考え方」として、「現行相当サービス」について「生活援助であっても、専門職であるヘルパー等の有資格者によるサービスは必要。」「多様な主体によるサービスは徐々に整備されていくものであり、また現行サービスに置き換わるものではない。」と明記しました。
緩和基準サービスは「実施しない」
 「緩和した基準によるサービスA型」については、「国が示している人員基準緩和(一定の研修受講者によるサービス)により、ヘルパー等の有資格者に換わる人材の確保及び事業者の参入が見込めないため実施しない。」(訪問型)、「国が示している人員基準緩和(生活相談員、機能訓練指導員、看護職員が不要)では、通所介護事業者が併設して実施する場合、基準緩和にはならないため、通所介護事業者の参入は想定できない。」「他の事業者による参入も見込めないため実施しない。」(通所型)と、明確に実施しないとしました。とくに、国の例示が自治体レベルでは実態に合わず現実性がないことを明記した意義は大きいものがあります。
住民主体サービスは「趣旨がちがう」としながら「担い手登録型」をもくろむ
 「住民主体サービスB型」については、現に市内にある地域の自主的取り組みについては、「ケアプランに基づいたサービスに位置付けることは、趣旨が異なる。」と明確にしました。しかし、「意欲ある担い手が、事業者に登録することにより、事業者が担い手と支援が必要な者を結びつける仕組みをつくる」として「高齢者が社会参加する仕組みのひとつとして実施する」としました。これが、「担い手登録型サービス」という堺市独自の類型です。訪問型では、「従来のヘルパーに加えて新たな担い手の確保を目指す」として、1日6時間×2日間程度の研修修了者によるサービス、通所型では数団体のNPOによるサービスをもくろんでいます。
 なお、当初案では「各サービスの併用不可」としていたものを撤回し、現行相当サービスと他のサービスとの併用利用への道を開きました。

堺市のサービス類型案(要支援1・2、基本チェックリスト該当者)
【訪問型サービス】
Ⅰ現行相当訪問サービス (予防訪問介護の指定事業者(訪問介護員))
Ⅱ担い手登録型訪問サービス(本サービスの指定事業者(登録会員等))
【通所型サービス】
Ⅰ現行相当通所サービス (予防通所介護の指定事業者(専門職等))
Ⅱ担い手登録型通所サービス (本サービスの指定事業者・団体(登録会員等))
Ⅲ短期集中通所サービス (本サービスの委託事業者(専門職等))
 移行初年度は
 総合事業への要支援者の「移行時期」については、ガイドラインの「更新認定者から順次移行」方式でなく「2017年4月1日一斉切り替え」としています。
 ただ、移行前と後の対比表(H28-29年度対比表)では、ホームヘルプ・デイサービスの利用者すべてが現行相当サービスに移行することを明確にし、移行時の「平成29年度は100%現行相当サービスになる」(ヒアリングでの回答)と言明しています。
自立支援型ケアマネジメント 打ち出す 堺市は「自立支援型ケアマネジメントへの転換」を図るとして、多職種によるケアプランの内容を検討する「ケアプラン支援会議」の開催を打ち出しました。
要支援1のプランを作成者(ケアマネ・包括)とサービス事業者が会議に招集され、理学療法士などリハビリ関係職から助言を受けるもので、1件30分で1回の会議で6件、最低、週1回は開催するというものです。大分県や埼玉県和光市などの方法をまねただけとしか考えられないものですが、多様なサービス整備が進まない中で、「サービスからの卒業」が強制されるような仕組みになれば、重大です。
総合事業費 上限額について
 堺市資料によれば、直近4年の後期高齢者の平均伸び率は約4.7%。予防給付のうち総合事業への移行分と予防事業の合計額は同時期平均14.8%と3倍になっています。これについて、堺市当局はこのギャップについて示すだけにとどまり、どう対応するかの具体的な説明はありません。

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Category: 介護保険見直し
2016/04/08 Fri
公務員から、一転、ケアマネジャーになって1週間。新しい地域で、まだまだ右も左もわからず。毎日が初体験です。でも、「自分が本来やりたかったのはこういう仕事だったのでは」と思うようになりました。
事業所の近くのお寺の桜です。デイサービスのご利用者様と🌸散歩に出かけた時に撮りました。
Category: 雑感・雑記
2016/04/03 Sun
日下部雅喜の2016年4月の講師活動予定。
今月は1件だけです。
長岡の介護と医療を考える会(ながおか自治体研究所・長岡市社会保障推進協議会)主催
「改定介護保険法を考える」学習会
テーマ「介護保険改定で問われる地域・自治体の課題」
4月16日(土) 14:20~16:30
新潟県長岡市立中央図書館2階講堂
Category: 活動日誌

プロフィール

福祉・介護オンブズマン管理者 日下部雅喜(くさかべまさき)

Author:福祉・介護オンブズマン管理者 日下部雅喜(くさかべまさき)
 福祉・介護オンブズネットおおさか事務局長
 介護保険料に怒る一揆の会事務局長
 大阪社会保障推進協議会介護保険対策委員
 
 

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