2016/09/28 Wed
障害者にはまったく無用の介護保険料、裁判で「憲法違反」を訴える
「65歳になった障害者から介護保険料を取るのは憲法違反だ」。広島県熊野町の車いすの障害者・中田輝義さん(本名:仲田輝美さん。69歳)が、広島地裁に介護保険料決定の取り消しを求める訴訟を起こしました。
無年金者に介護保険料
中田さんは、重症筋無力症の1級の身体障害者で車椅子生活。無料で障害者福祉サービスを受けていたのに、六十五歳になったとたん「介護保険」に切り替えられ、月7000円以上の負担になり、通院介助も利用できなくなりました。中田さんは、無年金で親の残した預金を切り崩す生活ですが、介護保険料を徴収されます。
昨年介護保険料決定に対し不服審査請求を行いましたが「棄却」されたため、今年9月21日に裁判闘争に踏み切りました。中田さんは「大阪の一揆の会の闘いに学んだ。介護保険は収入の少ない者や障害者の生存権を侵す憲法違反の制度。裁判で問い直したい」と語っています。
中田さんの裁判支援を
介護保険料を「憲法違反」と訴える裁判は一〇年前の私たち一揆の会の裁判闘争以来のことです。重い障害を持ちながら人生をかけて立ち上がった中田さんの裁判闘争を私たちも支援していきたいと思います。
理不尽な介護保険への移行。障がい者の新たな闘い2015年7月19日



訴   状
2016(平成28)年9月21日
介護保険料賦課決定処分取消請求事件
請 求 の 趣 旨
1 被告が原告に対し平成27年7月13日付で行なった介護保険料賦課決定処分を取り消す。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
との判決を求める。
請 求 の 原 因
第1 当事者
1 原告
原告は、広島県安芸郡熊野町内に居住する昭和22年7月16日生まれ の男性であり、熊野町介護保険条例により平成27年7月13日付け通知書により、被告から本件介護保険料賦課決定処分(以下「本件処分」という)を受けた者である(甲1、2)。
また、原告は、およそ20年前に重症筋無力症を患い、上肢、下肢の機能に障害があり、併せて呼吸器機能障害などにより身体障害者手帳1級1種が交付されている重度障害者である。この他に全身性の変形性関節炎と神経障害疼痛とヘバーテン結節などの病気も抱えており、日中は車いす生活であり、月に一度の県立広島病院神経内科に通院している。
2 被告
被告は、介護保険法に基づき、保険者の代表者として、原告に対し本件処分を行なった者である。
第2 本件処分にいたる経緯
1 原告は、上述の障害のために稼働収入がなく、また、障害年金も支給されていなかったので無収入であり、亡き父親の残した遺産で生活を維持していた(甲3)。
2 原告は、64歳までは障害者総合支援法による障害支援区分3の認定に基づき、障害福祉サービスの居宅介護(ホームヘルプ)を受けて生活を維持してきたが、前同法により自己負担はなかった。
3 ところが、65歳になった平成24年7月16日の後、原告が居住する熊野町は、一方的に障害福祉サービスから介護保険サービスに切り替え、原告に対する事前の十分な説明もないまま要介護認定手続きを行い、要介護2と認定した。
そして、熊野町は原告に対し、原告が無収入であることから、熊野町介護保険条例第4条の規定に基づく介護保険料の賦課決定をし、原告はやむなく納付した。
4 原告は、介護保険に切り替わった後、障害福祉サービスでは自己負担のなかった居宅介護(ホームヘルプ)については月に7000円~8000円の自己負担が必要となり、通院介護は給付対象外とされ、自己負担を求められるようになった。
5 被告は、平成27年7月13日、原告は前述の通り無収入であったが、前記条例に基づき、所得区分では第1段階(生活保護を受給している、または、課税年金収入額と合計所得金額の合計が80万円以下)に該当するとして、年額3万0759円の保険料の賦課決定をした。
第3 本件処分に対する審査請求
1 原告は、本件処分について、平成27年9月11日付け書面により、広島県介護保険審査会に対し審査請求をした。
2 広島県介護保険審査会は、平成28年3月17日付け裁決書により、原告の審査請求を棄却した(甲4)。
3 原告は、前記裁決書を平成28年3月22日に受領した。
第4 介護保険法の概要
1 生存権保障と介護保険法
介護保険法1条は、「加齢に伴って生ずる心身の変化に起因する疾病等により要介護状態となり、入浴、排せつ、食事等の介護、機能訓練並びに看護及び療養上の管理その他の医療を要する者等について、これらの者がその有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、必要な保健医療サービス及び福祉サービスに係る給付を行うため、国民の共同連帯の理念に基づき介護保険制度を設け、その行う保険給付等に関して必要な事項を定め、もって国民の保健医療の向上及び福祉の増進を図ることを目的とする」とその目的を定めている。
すなわち、介護保険法は、要介護状態となった(または、なるおそれのある)高齢者等が「自立した日常生活を営むことができるよう、必要な保健医療サービス及び福祉サービスに係る給付を行う」ことを立法目的とするものであり、憲法25条に基づく生存権保障を具体化する法律である。
2 介護保険制度の仕組み
(1)要介護者・要支援者
介護保険制度において保険給付の対象となるのは「要介護者」及び「要支援者」である。
ここに要介護者とは、「要介護状態にある65歳以上の者」及び「要介護状態にある40歳以上65歳未満の者であって、その要介護状態の原因である身体上又は精神上の障害が加齢によって生ずる心身の変化に起因する疾病であって政令で定めるもの(特定疾病)によって生じたものであるもの」をいう(介護保険法7条3項)。
また、要支援者とは、「要介護状態となるおそれがある状態にある65歳以上の者」及び「要介護状態となるおそれがある状態にある40歳以上65歳未満の者であって、その要介護状態となるおそれがある状態の原因である身体上又は精神上の障害が特定疾病によって生じたものであるもの」をいう(介護保険法7条4項)。
そして、要介護状態とは、「身体上又は精神上の障害があるために、入浴、排せつ、食事等の日常生活における基本的な動作の全部又は一部について、厚生省令で定める期間にわたり継続して、常時介護を要すると見込まれる状態であって、その介護の必要の程度に応じて厚生省令で定める区分(要介護状態区分)のいずれかに該当するもの」をいう(介護保険法7条1項)。
(2)保険給付の種類
介護保険制度による保険給付には、①被保険者の要介護状態に関する保険給付(「介護給付」)②被保険者の要介護状態となるおそれがある状態に関する保険給付(「予防給付」)③その他要介護状態の軽減若しくは悪化の防止又は要介護状態となることの予防に資する保険給付として条例で定めるもの(「市町村特別給付」)の3種類がある(介護保険法18条)。
(3)介護給付の種類
介護給付は、下記の9種類である(介護保険法40条)。
①在宅介護サービス費の支給(同41条)
②特例居宅介護サービス費の支給(同42条)
③居宅介護福祉用具購入費の支給(同44条)
④居宅介護住宅改修費の支給(同45条)
⑤居宅介護サービス計画費の支給(同46条)
⑥特例居宅介護サービス計画費の支給(同47条)
⑦施設介護サービス費の支給(同48条)
⑧特倒施設介護サービス費の支給(同49条)
⑨ 高額介護サービス費の支給(同51条)
(4)予防給付の種類
予防給付は、下記の7種類である(介護保険法52条)
①居宅支援サービス費の支給(同53条)
②特例居宅支援サービス費の支給(同54条)
③居宅支援福祉用具購入費の支給(同56条)
④居宅支援住宅改修費の支給(同57条)
⑤居宅支援サービス計画費の支給(同58条)
⑥特例居宅支援サービス計画費の支給(同59条)
⑦高額居宅支援サービス費の支給(同61条)
(5)保険者
介護保険の保険者は、市町村及び特別区である(介護保険法3条)。
(6)被保険者
介護保険の被保険者は、①第1号被保険者と②第2号被保険者の2種類である(介護保険法9条)。
上記第1号被保険者とは「市町村の区域内に住所を有する65歳以上の者」をいい(9条1号)、同第2号被保険者とは「市町村の区域内に住所を有する40歳以上65歳未満の医療保険加入者」をいう(9条2号)。
(7)費用の負担
介護保険制度における費用の負担については、介護保険法第7章(121条~158条)に定めがある。
①国の負担(121条)
国は、政令で定めるところにより、市町村に対し、介護給付及び予防給付に要する費用の額の100分の20に相当する額を負担する(1項)
②調整交付金(122条)。
国は、介護保険の財政の調整を行うため、第1号被保険者の年齢階級別の分布状況、第1号被保険者の所得の分布状況等を考慮して、政令で定めるところにより、市町村に対して調整交付金を交付する(1項)。
調整交付金の総額は、各市町村の121条1項に規定する介譲給付及び予防給付に要する費用の額の総額の100分の5とする。
③都道府県の負担(123条)
都道府県は、政令で定めるところにより、市町村に対し、介護給付及び予防給付に要する費用の額の100分の12.5に相当する額を負担する。
④市町村の一般会計における負担(124条)
市町村は政令で定めるところにより、その一般会計において、介護給付及び予防給付に要する費用の額の100分の12.5に相当する額を負担する。
⑤介護給付費交付金(125条)
市町村の介護保険に関する特別会計(介護保険法3条2項)において負担する費用のうち、介護給付及び予防給付に要する費用の額に第2号被保険者負担率を乗じて得た額(「医療保険納付対象額」という)については、政令で定めるところにより、社会保険診療報酬支払基金が市町村に対して交付する介護給付費交付金をもって充てる(125条1項)。
上記第2号被保険者負担率は、すべての市町村に係る被保険者の見込数の総数に対するすべての市町村に係る第2号被保険者の見込数の総数の割合に2分の1を乗じて得た率を基準として設定するものとし、3年ごとに、当該割合の推移を勘案して政令で定める(125条2項)。
⑥保険料(129条)
市町村は、第1号被保険者に対し、政令で定める基準にしたがい条例で定めるところにより算定された保険料率により算定された保険料額を賦課し徴収しなければならないものとされている(129条1項、2項)。
他方、市町村は、第2号被保険者からは保険料を徴収しない(129条4項)。
(8)保険料徴収の方法
保険料徴収の方法については介護保険法131条~146条に定めがある。
①普通徴収の原則(131条)
保険料の徴収は、法135条により特別徴収の方法による場合を除き、普通徴収の方法によらなければならない。
ここに普通徴収とは、市町村が、保険料を課せられた第1号被保険者又は当該第1号被保険者の属する世帯の世帯主若しくは当該第1号被保険者の配偶者に対し、地方自治法第231条の規定により納入の通知をすることによって保険料を徴収することをいう。
また、特別徴収とは、老齢又は退職を支給事由とする公的年金給付であって政令で定めるもの(「老齢退職年金給付」という)の支払をする者(「年金保険者」という)に保険料を徴収させ、かつ、その徴収すべき保険料を納入させることをいう。
②普通徴収に係る保険料の納付義務(132条)
第1号被保険者は、市町村がその者の保険料を普通徴収の方法によって徴収しようとする場合においては、当該保険料を納付しなければならない。
世帯主は、市町村が当該世帯に属する第1号被保険者の保険料を普通徴収の方法によって徴収しようとする場合において、当該保険料を連帯して納付する義務を負う。
配偶者の一方は、市町村が第1号被保険者たる他方の保険料を普通徴収の方法によって徴収しようとする場合において、当該保険料を連帯して納付する義務を負う。
第5 本件処分の違法性(その1)
1 住民税の非課税、低所得の障害者は、65歳までは障害者総合支援法による障害福祉サービスを自己負担なしで利用できるが、65歳になると介護保険の第1号被保険者とされて介護保険サービスに切り替えられ、「1割」の利用者負担を課せられるだけでなく、サービス内容も障害福祉サービスよりも制限が多くなることが多い。
2 平成18年に施行された障害者自立支援法は、介護保険制度と同様に障害者に対して障害福祉サービスについても「1割の応益負担」を導入したが、広範な反対運動と障害者自立支援法違憲訴訟の勝利的和解(「基本合意」平成22年1月7日)に基づき、政府は「低所得者の障害福祉サービスは無料」を約束し実現した(甲5)。
ところが、介護保険制度は「1割負担」がそのまま継続しているため、低所得の障害者が65歳になれば介護保険への切り替えを強要され、否応なしに「1割負担」を強いられることになり、先の「低所得者の障害福祉サービスは無料」という障害者運動の成果は台無しとなっている。
3 障害者にとって、障害福祉サービスにおける「固有のニーズ」は老化によって消滅することはなく、場合によればさらにニーズが高まることがあり、65歳という「年齢」でもって障害福祉サービスを打ち切ることは明らかに不当である。
障害者総合支援法第7条は、その条文上では介護保険が優先するかのような書きぶりとなっているが、先の「基本合意」の四項による「低所得者の障害福祉サービスは無料」が優先すべきであり、障害の特性を配慮したサービスの利用を保障するべきである。
4 本件処分は、この障害者自立支援法違憲訴訟の勝利的和解の「基本合意」に反したものであり、違法である。
第6 本件処分の違法性(その2)
1 介護保険法では、市町村に住所を有する65歳以上の人と40歳以上6 5歳医未満の医療保険加入者は、介護保険の被保険者としている。
しかし、例外として、介護保険法施行法第11条1項の規定により、「指定障害者施設等に入所している人は、当分の間は介護保険の被保険者としない」という経過措置がおかれ、その対象となる施設等は、介護保険法施行規則第170、171条及び国民健康保険施行規則第5条の4で定められている。
そして、この例外となる施設は、介護保険法施行時には身体障害者療護施設等に限定されていたが、障害者自立支援法により、障害者施設の種類が再編された結果、それまでは対象ではなかった知的障害者入所更生施設等も対象になるなど、例外の範囲は広がっており、以下の通りである。
【介護保険適用除外施設】
1.障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律第29条第1項に規定する指定障害者支援施設(生活介護施設入所支援に限る)
2.障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律第5条第12項に規定する障害者支援施設(生活介護に限る)
3.児童福祉法第42条第2号に規定する医療型障害児入所施設
4.児童福祉法第6条の2第3項の厚生労働大臣が指定する医療機関
5.独立行政法人国立重度知的障害者総合施設のぞみの園法に規定する福祉施設
6.国立及び国立以外のハンセン病療養所
7.生活保護法第38条第1項第1号に規定する救護施設
8.労働者災害補償保険法第29条第1項第2号に規定する労働者災害特別介護施設
9.障害者支援施設 (備考) 知的障害者福祉法第16条第1項第2号に係るものに限る
10.指定障害者支援施設 (備考) 生活介護及び施設入所支援の支給決定を受けて入所している知的障害者及び精神障害者に係るものに限る
11.障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律第29条第1項の指定障害福祉サービス事業者であって、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律施行規則第2条の3に規定する施設(療養介護に限る)
2 国は、この介護保険の被保険者の例外となる「適用除外」を設けた理由について、
・介護保険施設と同等若しくはそれ以上の水準のサービスが提供され
ていること
・入所者の入所期間が長期にわたる実態があり、将来的にも介護保険 の給付を受ける可能性が極めて低いこと
・40歳以上の者が一定程度入所している実態があること
の3点をあげている。
このことは、他の法律により、介護保険施設と同等若しくはそれ以上の水準の介護サービスが保障されるならば、当人を介護保険の被保険者にして保険料負担をさせる必要がないという考え方に基づくものである。
3 この考え方からすれば、障害福祉サービスで介護保険と同等またはそれ 以上の介護サービスが提供されるのであれば、そもそもその当人を介護保険の被保険者とし、介護保険料負担の「義務」を負わせる必要がない。
原告は、「障害者総合支援法の給付を受けており、かつ、介護保険法の給付を受けていない人」であるから、この「適用除外」の施設に入所している者と同様に扱われるべきである。
第7 本件処分の違法性 一 憲法14条の平等原則違反―
1 熊野町における介護保険料額の逆進性
同町における65歳以上の住民が賦課される介護保険料額は、次のとおり所得段階に応じて10段階に分かれている。
第1段階(基準額×0.45)
生活保護受給者
世帯全員が住民税非課税で合計所得金額が80万円以下
保険料額(年額)3万0759円
第2段階(基準額×0.75)
世帯全員が住民税非課税で合計所得金額が80万円超120万円以下
保険料額(年額)5万1266円
第3段階(基準額×0.75)
世帯全員が住民税非課税で合計所得金額が120万円超
保険料額(年額)5万1266円       第4段階〈基準額×0.85〉
本人は住民税非課税で世帯は課税されていて、合計所得金額が80万円以下
保険料額(年額)5万8101円
第5段階(基準額×1.00)
本人は住民税非課税で世帯は課税されていて、合計所得金額が80万円超
保険料額(年額)6万8355円
第6段階(基準額×1.15)
世帯全員が課税されていて、合計所得金額が120万円未満
保険料額(年額)7万8608円       第7段階〈基準額×1.30〉
世帯全員が課税されていて、合計所得金額が120万円以上190万円未満
保険料額(年額)8万8861円
第8段階(基準額×1.50)
世帯全員が課税されていて、合計所得金額が190万円以上290万円未満
保険料額(年額)10万2532円
第9段階〈基準額×1.70〉
世帯全員が課税されていて、合計所得金額が290万円以上400万円未満
保険料額(年額)11万6203円
第10段階(基準額×1.80)
世帯全員が課税されていて、合計所得金額が400万円以上
保険料額(年額)12万9874円
2 このように、所得額が400万円以上の場合の最高保険料額(12万9 874円)は、収入が全くない場合も含む最低保険料額(3万0759)の4倍にしかならない。
すなわち、無収入者や住民税非課税世帯からも介護保険料が徴収されるのに対し、その所得が400万円以上ある町民は、たとえ1000万円、数億円の所得があっても12万9874円しか保険料が賦課されない。しかも、介護保険料は、医療保険料と同様に、個人所得課税(所得税・住民税)の課税控除の対象となるから、課税世帯にとっては非課税世帯に比べて有利な結果となる。
また、介護保険以外の社会保険である健康保険では保険料は50段階であり、厚生年金保険や雇用保険の保険科も最高額が最低額の数十倍になるなど、収入に応じた保険料が設定されていることと比べて、介護保険料の逆進性は極めて著しいものである。
3 平等原則違反
憲法14条1項は、「すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。」として平等原則を規定している。ここでいう平等原則は、現代の社会福祉国家においては、社会的・経済的弱者に対してはより厚く保護を与えることによって、他の国民と同等の自由と生存を保障するというものである(実質的平等)。
被告は、同条項に基づき、社会的・経済的弱者に対して積極的に厚い保護を与える義務を有しているものであり、間違っても、社会的・経済的弱者に対してより厳しい負担を強いてはいけない義務を有しているのである。
介護保険法及び熊野町介護保険条例は、憲法25条の定める生存権を保障するための社会福祉を実現するために定立されたものであるから、前記「実質的平等」を高度に保障しなければならず、実質的にみて低所得者の負担を少なくしなければならない。
にもかかわらず、被告の定める介護保険料は、最高保険料額が最低保険料額の4倍程度にしかならないだけでなく、無収入者や町民税非課税世帯からも保険料を徴収するのに対し、何千万円または数億円の所得がある町民の保険料が、保険料の所得控除の結果、住民税非課税の町民の負担する保険料よりも低額になるという逆転現象をも生じている。
この不平等は、「実質的平等」の観念に反する甚だしいものであり、被告の立法裁量として許容される限度をはるかに超え、裁量を著しく逸脱したものであって、本件保険料額を規定する介護保険法と熊野町介護保険条例は憲法14条1項に反する違法なものである。
第8 本件処分の違法性 ―憲法25条の生存権侵害―
1 介護保険の第1号被保険者の介護保険料は、保険者たる市町村が各市町 村ごとに、「政令で定める基準に従い条例で定めるところにより算定された保険料率について算定された保険料額」を、当該市町村の区域内に住所を有する65歳以上の者(1号被保険者)に対し課すことになっている(法129条2項)。
そして、具体的な介護保険料の徴収方法は、「特別徴収」と「普通徴収」が設けられており、「普通徴収」は、市町村が、保険料を課せられた第1号被保険者又はその者の属する世帯主、あるいはその配偶者から保険料を徴収する方法である。
そして、熊野町介護保険条例では、所得が80万円以下の者であれば、無収入の者であっても介護保険料3万0759円を徴収することとしている。
2 原告は、前述の通り、無収入で住民税も非課税であり、そのことから65歳までは障害福祉サービスについて自己負担をすることなく利用していた。
ところが、65歳をなると一方的に介護保険サービスに切り替えられ、保険料の賦課決定を受けてやむなく負担してきたが、どう考えても無収入の者から保険料を徴収することは不合理であり、その徴収により憲法25条の生存権保障に基づく生活保護法の最低生活基準をも下回る結果を生み出している。
憲法25条の生存権は、いわゆる社会権と言われるが、現実に国や地方自治体が、同条の具体化である生活保護法の保護基準を下回る収入のない者に対して、保険料の賦課決定をすることは、健康で文化的な生活を保障した社会権としての憲法25条に違反するだけでなく、同条の生存権の自由権的な側面を侵害するものであり、明らかに違法である。
第9 結論
以上の通り、本件処分は、障害者自立支援法違憲訴訟の勝利的和解の「基本合意」に反したものであり、介護保険法施行法第11条1項の規定に基づき原告を介護保険の被保険者としない扱いは介護保険法それ自体にも違反しているだけでなく、原告に保険料を賦課決定した介護保険法及び熊野町介護保険条例の規定は憲法14条及び憲法25条に違反の違法がある。
よって、本件処分の取消を求めるため本訴提起に及んだ。
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Category: 介護保険見直し
2016/09/23 Fri
9月23日午後、介護保険料に怒る一揆の会、年金者組合大阪府本部、全大阪生活と健康を守る会連合会は、2016年度の介護保険料決定等に対する不服審査請求の集団提出行動を行いました。

  行政不服審査法が改正されたことを逆手にとって大阪府審査会事務局は、「審査請求書は正副二部提出」「記載事項はもれなく点検」「決定通知書のコピー添付」など受付審査を厳しくしました。各団体ではこれまで以上にきっちりと書き込み会などを取り組みました。一斉提出では、これまで1時間程度で終わっていたのが、4時間もかかり、細かくチェックされました。それでも七一一件を受付させました。審査会事務局のいやがらせ的受付厳格化を乗り越えて昨年以上の審査請求を受け付けさせた大阪の高齢者パワーの粘り強さを示すものです。


9月23日審査請求提出件数
介護保険料 711件
後期高齢者医療保険料 146件
国民健康保険料 80 件
合計 937件
Category: 介護保険料
2016/09/01 Thu
日下部雅喜の講師活動  2016年9月


9月1日(木)午後2時~4時 大阪市福島区民センター
おおさか福島医療生活協同組合・生協強化月間スタート集会
「地域包括ケア時代に求められる運動」


9月3日(土)午後2時10分~3時20分 かんぽの宿富田林
八尾民主商工会夏季研修会
「介護保険の現状とこれから」

9月4日(日)午後1時~4時  国労大阪会館
高齢者の居場所づくりを進める連絡会学習会
「どうなる介護保険・総合事業」

9月10日(土)午後2時~5時 ホテル・アジール奈良
一般社団法人全日本視覚障害者協議会 テーマ別集会「福祉」イン奈良
「障害者65歳問題 要支援の介護保険外しにどう立ち向かうか」

9月11日(日)午後1時30分~4時 京都商工会議所3階会議室
高齢社会をよくする女性の会・京都 学習会
「介護保険が変わる!これまでとこれから」

9月21日(水)午後5時30分~7時 大阪市淀川区のざと診療所3階会議室
一般財団法人淀川勤労者厚生協会 学習会
「どうなる介護保険・大阪市新総合事業」

9月22日(木・祝)午後1時30分~4時 エルおおさか南館会議室
国土交通労働組合近畿地区協議会 女性協学習交流集会
「老人介護について」

9月24日(土)午後1時30分~4時30分 愛知労働会館
愛知県社会保障推進協議会・愛知ケアマネの会 介護保険改善運動交流集会
「どうなる 介護保険・総合事業~サービスを守るために」


Category: 活動日誌

プロフィール

福祉・介護オンブズマン管理者 日下部雅喜(くさかべまさき)

Author:福祉・介護オンブズマン管理者 日下部雅喜(くさかべまさき)
 福祉・介護オンブズネットおおさか事務局長
 介護保険料に怒る一揆の会事務局長
 大阪社会保障推進協議会介護保険対策委員
 
 

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