2011/02/20 Sun
 介護療養型医療施設廃止の「延期期間」が6年とする方針が報道されている。

 厚生労働省はこのほど、今国会に提出する介護保険法の改正案に、介護療養病床の廃止期限の延長を盛り込む方針を固めた。延長後の期限については、2017年度末を軸に調整を進めている。
 介護療養病床については自公政権時代に、11年度末までに廃止することが決まっていた。だが、厚労省の「療養病床の転換意向等調査」によって、昨年4月段階でも、約6割の介護療養病床の転換先が未定であることが判明。さらに、昨年3月末までに転換を済ませた約2万1000床のうち、厚労省が想定した老人保健施設へ転換したのは約1000床にすぎず、大半(約1万8000床)が医療療養病床へ転換していることも分かった。
 この結果を受け、長妻昭厚労相(当時)は昨年9月、11年度末までに介護療養病床を廃止するのは困難とする見解を発表。「国会で法改正が必要であり、今後の猶予(期限の延長)も含めて方針を決定する」と述べた。昨年11月にまとまった、介護保険制度の見直しを検討する社会保障審議会介護保険部会の報告書「介護保険制度の見直しに関する意見」でも、介護療養病床の新規の指定を行わず、廃止を一定期間に限って猶予することが必要とする意見が示された。また、民主党の厚生労働部門会議の介護保険制度改革ワーキングチームが昨年12月にまとめた提言には、廃止を3年間猶予する方針が盛り込まれている。(医療介護CBニュース)



 もともと民主党の09年衆院選マニュフェストでは「廃止計画の凍結」で、撤回ではなかった。政権交代後、当時の長妻昭厚労相が廃止期限を先送りする「猶予」へさらに後退。昨年12月の民主党WTでは「3年間猶予」とされていたが、今度は厚労省がそれより長い6年間延期となった。
 介護難民・医療難民の大量発生の危機はとりあえず先送りされたことになるが、この方針では、医療と介護の施設を一体的に見直す必要性から、診療報酬と介護報酬が同時に改定される18年4月に合わせて廃止とする者であり。その間、介護型の新設は認めず、医療型や介護施設への移行を促すことになり、依然として問題は解決しない。
 
 これまでの介護療養型の縮小で、行き場を失った人々、さらに特養などの入所待機者は、介護業界に様々な影響を及ぼしている。

 行き場のない要介護高齢者を入居させる「寝たきり専用賃貸住宅」が問題化した中部地方の新聞にこんな特集記事がある。

 長いので、一部分を引用する


(前略)
 病院からも介護施設からも拒否され、在宅介護も困難な高齢者の受け皿として急増する「寝たきり専用賃貸住宅」。自己負担月15万円以下の「低価格」と24時間態勢の「手厚いサービス」には、多額の医療保険など公金を吸い込む巧妙な仕組みが隠されていた。介護に苦しむ家族の救世主としてにわかに現れた「終(つい)の棲(す)み家(か)」の裏側を探った。
 病室のような、白を基調とした一室。空間の大半を占めるベッドの上で母は身を横たえていた。鼻には体内に栄養を送るチューブがつながれている。洗濯物を取り換え、布団を整えてあげた帰り際、女性は物言えぬ母の手を握り締めた。「母さん、生きているだけでうれしいもんね」
 愛知県内の「寝たきり専用賃貸住宅」と称する無届け施設に母を入れたのは2008年の冬。07年秋、脳内出血で倒れた母は全身まひの障害が残り、転院先の病院からも早期の退院を迫られた。
 子育てにパートを抱え、母を引き受けるのは困難だった。「病院のケースワーカーに泣きついたが、特別養護老人ホームも老人保健施設も難しいと言われた」。ようやく紹介してもらえたのが、ここだった。
 「病院では入浴もろくにさせてもらえなかった。ここでは母の体も清潔に保ってもらえている。私は100パーセント満足している」
 厚生労働省の調査によれば、病院から退院を迫られるなどして、特別養護老人ホームへの入所を希望する待機者は42万人を超えている。その4割以上が寝たきりか、ほぼ寝たきりとされる要介護4、5の高齢者だ。
 06年の医療制度改革で、国は長期入院が必要な患者のための療養型病床を大幅削減する方針を決めた。同時にこうした患者への診療報酬を引き下げたことで、病院を追われた医療・介護難民が大量に生まれた。
 行き場を失い、さまよう重度の要介護者。寝たきり専用賃貸住宅は救世主なのか−。その問いをNPO法人・東濃成年後見センター(岐阜県多治見市)の山田隆司事務局長は真っ向から否定する。「(鼻や胃に通した管から栄養を取る)経管栄養が基本で、回復の見込みがある人に、食事を取らせようという努力すらしない。本来の福祉のあり方から逸脱している」
 裁判所から入居者の成年後見人に選任されたことで施設とかかわりを持つようになった。契約関係の書類に目を通し、疑念を抱いた。「たとえ(病院に)搬送しても改善は非常に困難」と、事実上病院への搬送を拒否する同意書を取られていた。ベッドのレンタル料は当時月5万円。実際は1割負担なので見落としがちだが「通常より倍以上の設定」だった。
 後見人になった女性を訪れ、つばを飲み込める様子に「食事を取ることができる」と確信した。施設を退居させリハビリを試みた結果、女性は再び食事を取れるようになったという。
 その後移った特養で、医療・介護保険を含めた全体の経費は月額43万円だった。調べてみると、食事も取らせず、救急車も呼ばない“賃貸住宅”での経費は、その倍以上の99万円だった。
 何かがおかしい。が、山田事務局長の表情はやるせない。「私のような主張をするのは福祉の世界でも少数派。『必要悪』と容認する声は少なくない」

 「先生、5年で2億になりますよ」
 5年前、岐阜県多治見市のファミリーレストランでのこと。医師は「寝たきり専用賃貸住宅」の創設者を名乗る男性から、巨額の報酬を約束する“殺し文句”で、ビジネスに加わるよう誘われた。
 医師は3年前まで、施設の訪問診療を担当していた。開設した診療所で50人の入居者を受け持ち、年間の売り上げは1億円をゆうに超えたという。入居者1人に月額20万円近い医療費がかかった計算で、本紙が入手した資料とも合致した。その費用の半分以上を占めていたのが、週3回行っていたという訪問診療だった。
 1回の訪問で、医師は診療報酬として8300円を請求していたという。1カ月平均で13回とした場合、患者1人で10万円を超える計算だ。50人なら500万円になる。
 ただし、8300円は本来、在宅で療養する患者を1軒ずつ訪ねた場合を想定した金額だ。有料老人ホームのように患者が1カ所に集まっている場合、移動の負担が省かれるため、金額は4分の1以下の2000円に抑えられている。国も4月の診療報酬改定でその区別を明確化し、「同一建物」か否かを判断基準に明示した。
 重度の要介護者が同じ建物に集まる寝たきり専用賃貸住宅も、有料老人ホームと同じ扱いと考えるのが自然だ。ところが、有料老人ホームの届け出がないことを理由に、施設を担当する診療所は「在宅」同様の高額請求を続けていた。
 どんな“ビジネス”を展開しようと「業者が『有料老人ホームではない』と主張する以上、手の出しようがない」。施設を抱える岐阜県の担当者は釈明する。老人福祉法は、いわゆる無届け施設への強制的な立ち入り調査や改善勧告、命令を認めていない。「届け出を行うか否かの判断はあくまで施設側に委ねられている」(同県)
 昨年3月に入所者10人が死亡した群馬県の無届け施設「静養ホームたまゆら」の火災を受け、県は一斉調査を実施。初めて寝たきり専用賃貸住宅にも立ち入った。だが「ただのアパート」と繰り返す施設側の主張を受け入れて終わった。「現時点で岐阜県内に無届けの有料老人ホームはない」。これが担当者の見解だ。
 その姿勢にまゆをひそめる関係者も少なくない。「業者に逃げられでもしたら、入所者を移すあてがないから。結局、県は足元を見られている」
 「それって何か違法なの? 入居者を困らせてる? 税金使って何が悪いんだ」。入居者1人あたりで1カ月に100万円近い経費が使われ、その大半が公金でまかなわれている−。その現状に話題が及ぶと、「寝たきり専用賃貸住宅」の事業本部責任者を名乗る男性は、質問を制するようにたたみかけた。
 施設で暮らす寝たきり高齢者のほとんどは口から食事を取ることのできない人たちだ。食事に代わり、胃ろうと呼ばれる胃に人工的に取りつけた小さな穴や、鼻の穴に差し込んだチューブを通じて体に栄養を流し込む。介護施設が入所拒否の理由に挙げ、在宅介護の現場では家族が担うこともあるこの「医療行為」が、高額の保険請求と密接にかかわっていた。
 担当医によれば、入居者はいずれも「ほぼ終末期」にあたるため、再び自力で食事を取ることができるような訓練を試みることはないという。1日3回、チューブを通じて体内に送られる栄養できょうの命をつなぎ、いずれ訪れる死の瞬間をベッドの上でひたすら待つ。それが「手厚い介護」の実態である。
 男性は言い切る。「クレームなんて一切ない。家族は喜んでるし、入居者も幸せだと思うよ」
(以下略)



 中部地方では、こうした問題についてのシンポジウムも開かれている。 最近、行政も動き出し、「有料老人ホーム」の届け出をさせる方向であるとの話もある。

 介護療養型医療施設の廃止を単に6年延ばせばいいという問題でない。現に発生している「介護難民」「医療難民」とそれに群がるように出没する「介護ビジネス」の実態と、野放しにしない取り組みが急務である。そして何よりも、誰でも安心して負担できる範囲で入居できる施設・居住系サービスの整備が不可欠である。これなしには「地域包括ケア」など絵空事である。
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Category: 介護保険見直し

古瀬 徹 >>URL

リンクさせていただきました。

鹿児島で介護関係の教員をしています。
貴ブログの記事を
いつも拝見させていただいています。

下記の拙ブログに
これまでもしばしば貴ブログ名を添えてリンクさせていただいています。

そのつど
ご連絡・お願いすべきですが
失礼してきました。

http://blog.livedoor.jp/kouyama2012-001/archives/51700079.html

Edit | 2011/02/20(Sun) 13:34:32

福祉・介護オンブズマン管理者 日下部雅喜(くさかべまさき) >>URL

Re: リンクさせていただきました。

リンクの件、了承いたします。旧厚生省で老人福祉課長までなさった先生に紹介いただいて光栄です。
 私は、行政の末端の木っ端役人をしながら、一方で社会的活動を行っている者で、大したことは出来ていません。一個人としてぎりぎりの限界まで、主張したいことは主張し、問題提起すべきはしたい、と考えています。
 今後ともよろしくお願いいたします。

Edit | 2011/02/20(Sun) 19:26:30

 
 
 
 
 
 
 
 

プロフィール

福祉・介護オンブズマン管理者 日下部雅喜(くさかべまさき)

Author:福祉・介護オンブズマン管理者 日下部雅喜(くさかべまさき)
 福祉・介護オンブズネットおおさか事務局長
 介護保険料に怒る一揆の会事務局長
 大阪社会保障推進協議会介護保険対策委員
 
 

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