2011/02/20 Sun
 社会保障審議会介護給付費分科会(第71回)での「区分支給限度基準額に関する調査結果」報告を機に「ケアマネジメントの質について議論」がおかしな方向に進みつつある。
 この報告は、「区分支給限度額超過者の8割が2種類以下のサービス」「超過者の9割はケアプランを見直す余地がある」などと報道され、これが、独り歩きし、区分支給限度額見直しの議論でなく、「ケアマネジメントの質」の論議にすり替えられようとしている。

 とくに、同分科会での池田省三委員(龍谷大学教授)は、この調査結果を受けて、まるで鬼の首をとったかのように、ケアマネジャーの行っているケアマネジメントについて
「サービスの組合せなんか考えていない。利用者・家族の要求の言いなりになっている。ニーズ(必要性)とデマンド(要求)の区別がついていないということだ」「緊急にケアマネジメントの再構築を考えなければならない」と発言したそうである。
 また、医療系のある委員は、「ケアプランは、誰かのチェックを受けているという現実があるのか」と質問し、「専門職としての意識が低く、利用者側の意見をほとんど聞いてしまうような場合では、本当は医療が必要なのに、ヘルパーがいてくれれば助かるということで選んでいるケースもあるのではないか。」などの意見を述べたそうである。
 ケアプラン点検について、厚労省は、ケアプラン点検の実施率は21年度実績で56%程度、また、サンプル的な調査であるため実施率を上げることが大きな課題であると説明(古川介護保険計画課長)したという。

 本来区分支給限度基準額の議論は、介護保険制度開始後基本的な見直しがされていない中で、この限度額では在宅介護が賄いきれないという現場や利用者家族の切実な声から始まったはずだが、完全に論議がすり替えられている。

 やり玉にあがっているのはケアマネジャーである。

 鹿児島で開かれた「第5回日本介護支援専門員協会全国大会」で、報告した厚生労働省老健局振興課の川又竹男課長は、
 ケアマネジャーの質向上や資格制度、研修のあり方を議論する検討の場を設置するのに先立ち、ケアマネジメントに関する大規模な実態把握調査を実施する方針であることを明らかにした。
 川又課長によれば、ケアマネジメントの実態を正確に把握できるデータがなければ、実情に即した議論ができず、「結局、(議論は内容を伴わない)空中戦で終わってしまう」と指摘。その上で、検討の場を設ける前に、▽利用者の状態像▽実際に作成されているケアプランの実態▽ケアマネジャーの属性や、ケアマネジャーがプランを作成するに当たっての考え方▽ケアマネジャーが所属している事業所の実情―などの調査を実施する方針を明らかにした。調査の時期や規模などの詳細は未定だが、7日に厚労省が結果を発表した区分支給限度額に関する調査よりも大規模な調査が実施される見通し。(医療介護CBニュースより)

 ケアプランに自己負担を導入することを画策し、反対世論の前にこれを見送らざるを得なくなった厚労省が、今度は「質向上」「資格・研修の在り方」を前面に、ケアマネジャーをやり玉にあげだしたのではないか。

 というのも、厚労省が、「地域包括ケア」を支える新たなサービスの目玉とされている「24時間対応の定期巡回・随時対応サービス」は検討会の中間報告によれば、居宅介護支援事業所のケアマネジャーとは別に独自にアセスメント・ケアマネジメントを行うとされており、ケアマネジャーとは「共同マネジメント」の関係とされているからである(「24 時間地域巡回型訪問サービスのあり方検討会」 中間取りまとめ)。
 この検討会での最終報告での扱いは、現時点では分からないが、「訪問サービス」でありながら、ケアマネジャーの「守備範囲」から相対的に独立した「マネジメント」権限を与えらるという、まったく新しい「居宅サービス」である。
 さらに、この「24時間対応の定期巡回・随時対応サービス」の指定に関係して、他の居宅サービスの指定も影響を受けることになる。
 「第5回日本介護支援専門員協会全国大会」で、報告した厚生労働省老健局振興課の川又竹男課長は、
「2012年度に本格導入が予定されている事業者の指定権者となる市町村が、都道府県による居宅サービス事業者の指定に当たって協議を求めることができる『居宅サービス指定に当たっての市町村協議制』を導入する方針も示した。類似サービスである居宅サービスと24時間対応の定期巡回・随時対応サービスの事業者の指定を調整することで、確実な利用者の確保を実現することが狙い」(医療介護CBニュース) と報じられている。在宅介護の「要」とされてきた居宅介護支援事業所のケアマネジャーの守備範囲が大きく変えられようとしているのではないか。

 思えば、6年前の介護保険改定の時に、軽度者の「介護予防」が不十分として、要支援者のケアマネジメントを居宅介護支援事業所のケアマネジャーから奪い、地域包括支援センター(介護予防支援事業所)に移したように、今度は、「中重度者のケアマネジメントが不十分」として、「24時間対応の定期巡回・随時対応サービス」や「複合サービス」といった「地域包括ケア」の目玉となる新たなサービスを居宅介護支援事業所のケアマネジャーの守備範囲から除こうとする策動ではないか。軽度者のマネジメントを奪われ、重度者のマネジメントも奪われるならば、在宅介護の「要」としての居宅介護支援事業所のケアマネジャーはどうなるのか。中立公正・利用者本位はどうなるのか、ケアマネジメントへの自己負担導入議論も復活しかねない。
 
 「ケアマネジメントの質」をめぐる議論の中にこの危険な意図が隠されてはいないだろうか。
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Category: 介護保険見直し

どりーむ >>URL

ここまでバカにされては!

今回の記事は、
さすがに、twitter上でも、
反響が大きかったですね。

このまま、
厚労省に振り回され続けるのは
ゴメンです。

Edit | 2011/02/20(Sun) 23:14:40

福祉・介護オンブズマン管理者 日下部雅喜(くさかべまさき) >>URL

Re: ここまでバカにされては!

ほんとですね。
ツイッター、一晩明けてみたら びっくりでした。このケアマネのみなさんの怒りがとっても大切です。

Edit | 2011/02/21(Mon) 08:12:58

 
 
 
 
 
 
 
 

プロフィール

福祉・介護オンブズマン管理者 日下部雅喜(くさかべまさき)

Author:福祉・介護オンブズマン管理者 日下部雅喜(くさかべまさき)
 福祉・介護オンブズネットおおさか事務局長
 介護保険料に怒る一揆の会事務局長
 大阪社会保障推進協議会介護保険対策委員
 
 

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