2011/05/05 Thu
 2012年度介護報酬・基準の改定に向けて開かれている社会保障審議会介護給付費分科会でとんでもない議論がされている。
 

 まず分科会の会長からしてこの発言。

 現行の介護職員処遇改善交付金分を介護報酬に入れると2%程度引き上げとなることを前提に、それすら「震災対応」があるので「通用しない」という、ゼロ・マイナス改定を宣言するに等しい発言である。


介護報酬:「プラス改定は困難」 社会保障審議会分科会長 
 厚生労働相の諮問機関、社会保障審議会介護給付費分科会の大森弥会長(東京大名誉教授)は27日の同分科会で、「震災対応がある中で(介護報酬の)単価が上がるなんて話は通用しない」と発言した。東日本大震災の被災地復興に巨額の財源を要する中、12年度の介護報酬改定ではプラス改定は難しいとの認識を示したものだ。
 次期12年度改定は、低賃金が人手不足の要因とされる介護職員の処遇改善が焦点だ。政府は月額賃金を1万5000円アップさせるため、約4000億円の補助金をつぎ込んできたものの、補助金は11年度で失効する。介護保険で恒久的に賄うには2%強のプラス改定が必要だが、大森会長は「被災地に相当のお金を投入することを念頭に置いて議論する。従来型の議論はできない」と指摘した。 介護報酬改定は3年に1度。00年度の制度発足以来マイナス改定続きだったが、09年度は3%アップした。【山田夢留】(毎日新聞 2011年4月27日

 さらに、もはや 「御用学者」を通り越して、全国の「ケアマネジャーの敵」とよんでよいこのセンセイの発言である。

■震災復興のため「要支援は介護保険から外すべき」―池田委員
 
 池田省三委員(龍谷大教授)は、「(東日本大震災の被災地では)自分たちで助け合う自助と互助が、感動的なくらいよみがえっている。地方公務員は一部を除いて寝食を忘れて働いている。もし介護保険がなかったら、ケアマネジャーは自分のお客さんを守ることもなく大混乱になっている」と述べた上で、被災地で自助と互助と共助と公助が見事に動きだしている点に学ぶべきと指摘。さらに、被災地の要介護者を支えるためにも、「どこに給付を配分するかをまじめに考えなければならない。わたしとしては、要支援1、2は介護保険から外すべきと思うが、(こうした線引きを)どこかでやらなければならない」と訴えた。…一方、池田委員は、被災した要介護高齢者への支援に資金を回すことこそが急務と強く主張。さらに「介護保険(の利用料)は1割負担にすぎない。しかも日本の低所得者対策はものすごく良くできている。お金がないからサービスを使えない、なんていうのはうそ。払いたくないだけ。そういうものに議論を誘導してはいけない」と指摘し、改めて要支援者への給付の見直しの必要性を訴えた。2011年04月27日 19:26 キャリアブレイン

 被災地の人々が、必死で助け合っている姿をとらえて「自分たちで助け合う自助と互助が、感動的なくらいよみがえっている」とし、「被災地の要介護者を支えるためにも…要支援1、2は介護保険から外すべき」などというムチャクチャな論理である。

 介護給付費分科会は、2012年度報酬改定の議論を2月7日に開始した、冒頭から、「支給限度額超過はケアマネジメントが不適切なことによる」というような資料(区分支給限度基準額に関する調査結果概要)を出したり、分科会長の意向に基づく検討メモと称して「給付の重点化」を強調するなど、不当な給付削減姿勢が見えていた。これが、震災後の「国難」「復興支援第一」の世論に便乗して、何でもかんでも「震災復興」を口実に、財源抑制に走ろうとしている。

 「震災復興」を口実にはしているが、彼らは、被災地の高齢者や要介護者の犠牲をまったく問題にしていない。「被災地で自助と互助と共助と公助が見事に動きだしている」などと、ご都合主義的に軽々しく発言しているが、その必死の助け合いによっても助けられなかった尊い命がいかに多かったことか。
 警視庁が震災後1ヶ月時点で発表した情報でも、犠牲者の3分の2は高齢者で、そのほとんどは溺死だったという(年齢が確認された死亡者数11108人のうち、65パーセントが60歳以上の人だった)事実。さらに、介護保険施設、病院へ入所・入院していた高齢者・要介護者が、震災・津波から助かって以降、避難の過程で、そして避難生活でどれだけ犠牲になったか。震災まで自宅で生活していた要支援や軽度の方々でも避難生活でどれだけ体調を崩し、生命を奪われたか。多くの介護事業所・介護従事者が被災地で活動困難に陥り、利用者の介護ができなくなったか。地震と津波に襲われた東日本の沿岸部一帯は高齢化が進んだ地域が多かったという事情もある。日本の防災体制、地域社会の在り方とともに、介護と含めた社会保障は問われている。
 
 このセンセイは、そんなことはお構いなしに、「被災地の自助・互助に学べ」「被災地のために要支援は介護保険から外すべき」「1割負担を引き上げるべき」とここぞとばかり叫んでいるだけである。

 まさに、「震災便乗」どさくさにまぎれて介護保険改悪を押し通そうとする「火事場泥棒」のような論である。

 次回社会保障審議会介護給付費分科会は5月13日。今後の議論に要注意である。

 
 
 
 



スポンサーサイト
Category: 介護保険見直し

tomoyan >>URL

No title

介護保険制度下で働いているものの意見として、今回の震災では、自らも被災しながらも、高齢者の為に休みなく働いている介護職員もおられ、介護職員の不足が大きな声で叫ばれている中、「そこまできつい仕事を安い給料で」したいと思う人が増えて行くわけもなく、給与面や、勤務労働条件の向上の必要性を逆に痛感しました。
 もうこの人は「介護保険の費用をいかにおさえるか」しか考えておらず、「介護保険制度や、要介護高齢者や、その家族にとって良い制度にしようなんてことは微塵も考えていないことがはっきりしたのではないでしょうか。
 こんな人主導では、介護従事者、高齢者、家族の生活は良くならない。何とかできませんかね。

Edit | 2011/05/06(Fri) 12:39:45

福祉・介護オンブズマン管理者 日下部雅喜(くさかべまさき) >>URL

Re: No title

本当にそうですね。
被災地の高齢者や要介護者そして 多大な被害を受けた方々のことを正面から向き合い考えないで、勝手な議論をする人々は許せません。

Edit | 2011/05/07(Sat) 00:13:12

 
 
 
 
 
 
 
 

プロフィール

福祉・介護オンブズマン管理者 日下部雅喜(くさかべまさき)

Author:福祉・介護オンブズマン管理者 日下部雅喜(くさかべまさき)
 福祉・介護オンブズネットおおさか事務局長
 介護保険料に怒る一揆の会事務局長
 大阪社会保障推進協議会介護保険対策委員
 
 

月別アーカイブ

ブロとも申請フォーム

ブログ内検索