2011/10/17 Mon

 介護保険改定でのもう一つの争点は、「埋蔵金」(都道府県財政安定化基金)である。
 以下は、介護保険料に怒る一揆の会が提起し、大阪社保協介護保険対策委員会として取りまとめた。取り崩し・全額保険料軽減へ の要求である。

 


都道府県介護保険財政安定化基金の取崩し要求について

「財政安定化基金」の取崩しが可能に
 介護保険法「改正」が行われ、2012年度に都道府県財政安定化基金の取り崩しが行われることになりました。
 私たちはかねてから、「埋蔵金」と化している財政安定化基金を取り崩し介護保険料軽減に充てるよう求めてきましたが、法「改正」により、ようやく可能となりました。
「財政安定化基金」は、都道府県が管内の市町村で介護保険財政の財源不足が起きた時に、その市町村が、一般財源から繰入れを行わなくてもよいよう、資金の貸付等を行うために基金を積み立て、運用する仕組みです。市町村と都道府県、国がそれぞれ3分の1ずつを拠出していますが、市町村からの拠出分は全額が高齢者の介護保険料です。また、貸付けを受けた市町村はその償還は介護保険料を原資としておこうことになっており、貸付けても確実に償還されることから、これ以上積み立てる必要はまったくないものです。
介護保険制度開始時から、09年度までの10年間で市町村から集められた拠出金(介護保険料)は954億7千万円、基金積立総額は2848.7億円に上っています。この金額は、全国の第1号被保険者2907万人(2011年5月時点)で割ると一人当たり約9,800円になります。

介護保険料の全国平均基準額は、現在月額4160円ですが、厚労省の試算でも第5期介護保険料は「5000円を超える見込み」と言われている中で、この基金の取崩し及び使途をどうするかは大きな課題です。

1 取崩し額をめぐって

過大な基金温存を指示する厚労省

 厚生労働省は、本年7月11日の「第5期介護保険事業(支援)計画策定に係る全国会議」で、「財政安定化基金の取崩し額の考え方」を示しました。これによると、各都道府県の「過去の最大貸付率」で残すべき基金額を計算するもので、さらに、これまで活用実績が少なかった都道府県については、「標準貸付率」なるもので計算するとの「考え方」を示しています。
 注)「標準貸付率」 厚労省は、「すべての都道府県において、全保険者の過去最高の貸付額と同率の貸付けが、単一年度に行われると仮定した場合の給付費等に対する貸付率の全国平均」を標準貸付率としている。
厚労省は、この「標準貸付率」を「0.78%」とし、具体的には第5期末(2014年度)の給付費等見込み額の0.78%とし、さらにこれに2013年度分をその50%、2012年度分をその9%をとして計算する方式を示しています。
 
 
 これを機械的に09年度の保険給付費(6兆8838.9億円にあてはめて計算すると、858.7憶円もの金額を残すことになってしまい、14年度の給付費見込みが増加することを考えれば場合によっては1000億円以上もの「基金保有額」とされ、取り崩せるのは、1000数百億円程度になってしまいます。なお、厚労省は、過去の最大貸付率が「標準貸付率」を上回る都道府県は、第5期末の保有額は高い方で計算するとしており、さらに取崩し可能額は切り下げられ、場合によっては、半分程度しか取り崩せない可能性もあります。

 全国の過去の貸付け実績では、制度開始後間もない第1期(2000年~2002年度)では、最高で286.2億円(02年度)の貸し付けが行われ、第2期(2003年~2005年度)でも最高197.7億円(05年度)の貸付けが行われましたが、それでも保険給付費に対する比率は0.613%(02年度)、0.34%(05年度)に過ぎません。2005年の介護保険法改悪と給付適正化により、2006年度から給付が大きく抑制された結果、貸付けは大幅減少しました。第3期(06年~08年度)は、最高で8.5億円で保険給付費の0.013%、第4期の09年度にいたっては、貸付額も3.9億円で、0.006%で、まさに「桁違い」です。
 市町村介護保険財政は大きな黒字(09年度介護給付費準備基金保有額4426億3013万5千円)を保有しており、第4期ののこり2年間も貸付け率が大きく増えることは考えられません。


可能な限り多くの取崩しを
 全国の介護保険財政は、明らかに制度改悪前の第2期までと、改悪後の第3期以降は異なった傾向を示しています。何重にも重ねられた給付抑制の仕組みと毎回の介護保険料引上げによって、圧倒的多数の自治体では、介護保険の資金不足は単年度単位ではおこることは極めて稀になっています。実際に09年度の貸付け状況は、1587保険者中わずか9保険者で0.6%という微々たるものになっています。貸付額3.9憶円は基金積立総額の(2848億7千百万円)の0.13%に過ぎません。
 この実態からすれば、第5期に1000億円もの基金を保有する必要性はまったくありません。厚生労働省は、このことを百も承知の上で、「過去最高の貸付け率」を持ち出し、不当かつ過大な基金を温存しようとしています。
 
 私たちは、介護保険会計への一般会計繰り入れ制限のための制度である財政安定化基金は本来廃止すべきと考えていますが、当面、2012年度の財政安定化基金の取崩しにあたって次の2点を要求します。
① 厚労省が示した「財政安定化基金の取崩し額の考え方」及び「標準貸付率」を撤回すること
② 計算根拠を示すならば第3期以降の貸付実績に応じたものとすること


2 取崩し資金の使途をめぐって

法「改正」による規定
 取崩した財政安定化基金の使途については、その「3分の1」(市町村拠出分)は、第5期の保険料増加の抑制のために「市町村に交付しなければならない」とされています。すでに述べたように、市町村拠出分は、全額介護保険料であり、これは全額介護保険料軽減に使用して当然のものです。
一方、国・都道府県拠出分については、「介護保険に関する事業に要する経費に充てるよう努める」と「改正」法では規定されており、保険料軽減以外にも使われる可能性のあるものとなっています。
あいまいな態度に終始する厚労省 
 厚生労働省は、国拠出分についての使途を現時点では明らかにしていません。また、都道府県拠出分については、「基本的に都道府県の裁量に委ねられる」「都道府県分の取崩し額については、保険料率の上昇抑制や職員研修の充実(地域包括支援センター職員やケアマネジャー等)などへの活用を想定している。」(平成23年8月22日「第5期介護保険事業支援(計画の策定に係る全国会議に関するQ&A)とあいまいな回答を行っています。
取崩し額は全額介護保険料軽減へ
 厚労省の試算でも第5期介護保険料は「全国平均基準額が5000円を超える見込み」としており、高齢者の負担の限界を超えるものとなろうとしています。このような時期に財政安定化基金取崩しによって生じた資金を国や都道府県が、保険料軽減に回さず、他に流用するなどあってはならないことです。
自公政権でも2008年度補正予算で、09年度介護報酬改定での引上げ分が介護保険料の急上昇を抑制するため半額相当分を「介護従事者処遇改善臨時特例交付金」として、1154億円計上したことを考えるならば、国は国庫負担で保険料上昇を抑制するべきであり、ましてや、財政安定化基金取崩し分は国・都道府県拠出分とも保険料軽減に全額使用するべきです。

政府・厚生労働省への要求案
1 厚労省が示した「財政安定化基金の取崩し額の考え方」及び「標準貸付率」を撤回すること。計算根拠を示すならば第3期以降の貸付実績に応じたものとすること。
2 取崩した基金の都道府県拠出分については、全額保険料軽減に充てることとし、市町村に交付するよう指導すること。
4 国拠出分についても、全額保険料軽減に充当するため市町村に交付すること。

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Category: 介護保険料
 
 
 
 
 
 
 
 

プロフィール

福祉・介護オンブズマン管理者 日下部雅喜(くさかべまさき)

Author:福祉・介護オンブズマン管理者 日下部雅喜(くさかべまさき)
 福祉・介護オンブズネットおおさか事務局長
 介護保険料に怒る一揆の会事務局長
 大阪社会保障推進協議会介護保険対策委員
 
 

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