2012/03/17 Sat
 ある訪問介護事業者。規模は地方の中堅といったところだが、今年3月にこんな連絡文書を居宅介護支援事業所と地域包括支援センターあてにファックスしている。


 居宅介護支援事業所 地域包括支援センター 各位
 
  平成24年度介護報酬改定によるプラン見直しのお願い


 拝啓 早春の候、時下ますますご清祥のことと、お喜び申し上げます。
(中略)
 さて、平成24年度の介護報酬改定に伴い、大きく訪問介護の生活援助のサービス時間等が変更されることとなり、○○○○福祉事業部ホームヘルプサービスといたしましては、以下のような目安で援助を進めさせてうただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
<生活援助サービスについて>
 「45分未満」・・・援助の目安は、20分~40分前後
 「45分以上」・・・援助の目安は、45分~60分
※尚、身体介護に続く生活援助サービスにおきましては、以下を目安に考えています。
 「20分」・・・援助時間の目安は、20分~40分前後
 「45分」・・・援助時間の目安は、45分~60分前後
 「70分」・・・援助時間の目安は、70分
〈介護予防訪問介護サービスの提供時間について〉
 今まで○○ホームヘルプサービス事業所といたしましては、予防のプランに対して、出来うる限りの対応をするべく、実施時間の上限をギリギリ90分までは対応可能と判断し、サービス提供して参りましたが、このたびの各種改正を受け、予防における派遣は、勝手ながら45分~60分を上限とすることを経営的判断とさせていただくことをご理解いただきますよう、何卒お願い申し上げます。
 (中略)
 ご利用者様にとって、今回の見直し(時間短縮等)がマイナスとなることなく、皆様と連携を強め、より良いサービス提供をすすめていく所存でございます。



 利用者の状態や意向と関係なく、事業者の「経営的判断」によって、一方的・一律的に、サービス提供時間の「上限」を切ってしまう。それも、堂々と文書にして居宅介護支援事業者や地域包括支援センターに送りつける。報酬改定による経営悪化をさけたいという気持ちは分かるが、介護サービス事業者として一番大切な「利用者本位」「在宅生活を送る上で必要なサービスの提供」を完全に忘れている。
 一部自治体によるかってな「ローカル(地方)ルール」によるサービス制限の事業者締め付けも問題だが、事業者が経営的判断優先で、法令を無視してサービス短縮をする「カンパニー(会社)ルール」も許せない。

厚労省Q&Aでも否定 
厚労省は、3月16日に各種通知改正とともに、
  事務連絡「平成24年度介護報酬改定に関するQ&A(平成24 年3 月16 日)」の送付について を出した。

 ○ 生活援助の時間区分の見直し
問9 今般の生活援助の時間区分の見直しにより、従前の60 分程度や90 分
程度の生活援助は提供できなくなるのか。
(答)
今般の介護報酬改定により、生活援助の時間区分が20 分以上45 分未満
と45 分以上の2区分と見直されたが、これは必要なサービス量の上限等を
付したわけではなく、利用者個々の状況に応じた介護支援専門員とサービ
ス提供責任者による適切なアセスメント及びケアマネジメントに基づき、
利用者のニーズに応じた必要な量のサービスを提供するべきであることは
従前どおりである。
また、この見直しにより、これまで提供されてきたサービスを利用者の
意向等を踏まえずに、新たな時間区分に適合させることを強いるものであ
ってはならず、適切なアセスメントとケアマネジメントに基づき、見直し
以前に提供されていた60 分程度のサービスや90 分程度のサービスを45 分
以上の生活援助として位置付け、見直し後も継続して提供することは可能
である。
また、必要に応じて見直し以前に提供されていたサービスに含まれる行
為の内容を再評価し、例えば、1回のサービスを午前と午後の2回に分け
て提供することや、週1回のサービスを週2回とする等、より利用者の生
活のリズムに合わせた複数回の訪問により対応することも可能である。


「60分程度のサービスや90分程度のサービスを45分以上の生活援助として位置付け、見直し後も継続して提供することは可能」と明記しており、この事業者の「45分以上は、45分~60分」という扱いは誤りである。

 また、介護予防訪問介護では、厚労省Q&Aでは、
【介護予防訪問介護】
○ 提供時間
(答)
介護予防訪問介護のサービス提供時間は、予め介護予防支援事業者によ
る適切なアセスメントにより作成された介護予防サービス計画に設定され
た生活機能向上に係る目標を踏まえ、必要な程度の量を介護予防訪問介護
計画に位置づけられるものであり、今回の改定において変更はない。
なお、サービス提供時間に一律に上限を設けることや、利用者の生活機
能の改善状況にかかわらず同じ量のサービスを継続して行うことは不適切
であり、利用者が有する能力の発揮を阻害することのないよう留意された
い。また、サービスの必要な量や内容の変更にあたっては、介護予防支援
事業者と十分な連携を図り、介護予防サービス計画との整合性を図る必要
がある。


 と明確に、今回の報酬改定で、サービス提供時間の変更はないこと、サービス提供時間に一律に上限を設けること についても「不適切」とされている。

 これらの厚労省Q&Aも活用しながら。行政(保険者や都道府県)に対し、報酬改定に便乗した、一律的なサービス時間短縮が行われることのないように、責任ある説明、そして指導を 行うよう求めていく必要がある。

 
 さらに、サービス事業者が、個々の利用者のサービス時間を、アセスメントやケアマネジメントにより必要とされた提供時間よりも短い時間しか提供しない扱いとした場合は、運営基準に規定する「サービス提供拒否」に違反することとなる。

指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準((平成十一年三月三十一日厚生省令第三十七号)
(提供拒否の禁止)
第九条  指定訪問介護事業者は、正当な理由なく指定訪問介護の提供を拒んではならない。


H11老企25号(指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準について)
 居宅基準第9条は、指定訪問介護事業者は、原則として、利用申込に対しては応じなければならないことを規定したものであり、特に、要介護度や所得の多寡を理由にサービスの提供を拒否することを禁止するものである。提供を拒むことのできる正当な理由がある場合とは、当該事業所の現員からは利用申込に応じきれない場合、利用申込者の居住地が当該事業所の通常の事業の実施地域外である場合、その他利用申込者に対し自ら適切な指定訪問介護を提供することが困難な場合である。


 問題と矛盾に満ちた今回の介護報酬改定であるが、この悪影響を介護現場で 可能な限り跳ね返し、利用者の生活を守るためにも、介護保険の守るべき原則に立ち返った対応が求められる。
 「経営的判断」優先のサービス時間カットなどは論外である。
 
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Category: 介護保険見直し

mari. >>URL

まさしくカンパニールールです。

何度か、日下部さんの講演会には参加させていただきましたが、
このサイトでも、いつも勉強させていただいています。

今回の改定の一番矛盾している点は、やはり生活援助の時間区分の見直しです。
生活援助単独と身体介護に引き続く算定項目の表記時間が違うのは、
以前からでしたが、慣例で“1”が30分で運用されていたので、あまり
議論にならなかったのですよね。
今、居宅には特に大手の事業所数社から同じようなFAXが届いています。
事業所も経営を考えなければならないことは承知していますが、
同時に特定事業所を取得する通知もあり、なんだか便乗の感も否めません。
しかし、これも国があいまいな表現をしておいて、「適切な・・・・」と
運用を丸投げし、利用者・ケアマネ・事業所間の不和を生じさせたから。
マネジメントの放棄と言われても、概ね○分と明記してほしかった。

すみません。長くなりました。

日下部さんの学習会でのコメント。
介護報酬改定  今こそケアマネジャーの役割発揮を
 ①「待ち」の姿勢、サービス事業者いいなりではケアマネジャーの存在意義にかかわる
 ②問題と矛盾に満ちた報酬改定に対し、いかに利用者本位を貫き、調整するか
  ⇒アセスメント・マネジメント力を発揮するとき
 ③次期改定でのケアマネジャーの役割否定、資格制度改悪許さないためにもがんばりどき
 ケアマネジャーが生き生き、 思いっきり 働けてこそ  よりよい介護が実現する 
この文章でモチベーションを維持していきたいと思います。
ほんとうに、ありがとうございます。これからもよろしくお願いいたします。

Edit | 2012/03/18(Sun) 02:05:59

 
 
 
 
 
 
 
 

プロフィール

福祉・介護オンブズマン管理者 日下部雅喜(くさかべまさき)

Author:福祉・介護オンブズマン管理者 日下部雅喜(くさかべまさき)
 福祉・介護オンブズネットおおさか事務局長
 介護保険料に怒る一揆の会事務局長
 大阪社会保障推進協議会介護保険対策委員
 
 

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