2012/07/01 Sun
 昨年8月に出した「平成23年度介護保険料決定」に対する不服審査請求に対する「裁決」が今年5月に出された。
 すべてが「棄却」の採決であるが、過去の裁決と比べて、看過しがたい重大な見解変更がある。 
 
2011年度の大阪市介護保険料決定に係る不服審査請求に対する採決
「保険料は、3年間の介護保険事業計画の期間を通じ財政の均衡を保つよう設定される(法第129条第3項)。この計画期間内に剰余金が生じた場合は、介護給付の実績が見込みを大きく上回る場合等において活用するため、介護給付費準備基金として積み立てられる。そして、積み立てられた介護給付費準備基金は、保険者が最低限必要と認める額を除き、基本的には次期計画期間内において歳入として繰り入れられるべきものとされている(平成17年12月6日事務連絡厚生労働省老健局介護保険課)。
 しかし、介護給付費準備基金にいくら留保して、いくら取り崩すべきかは、法令には明文の規定がなく、かつ財政運営という高度な専門的判断を必要とする事項でもあることから、保険者の裁量が広く認められると解される。
 そして、介護給付費準備基金からの取崩し額を反映した保険料は、議会における審理、議決を得て市条例の一部として施行されているものであるから、その妥当性は確保されているものと解される。

 よって、請求人の主張は理由がなく、採用できない。」

 ようするに、介護給付費準備基金(介護保険料の余り)を、どこまで取り崩すかは法令で決まっていないから、保険者の裁量で、議会でも議決されているから妥当、という見解である。無責任きわまりない。しかも、過去の採決で述べていた意見をごっそりと削っているのである。

 おなじ大阪府介護保険審査会は過去には、こう述べていた。
2009年度の大阪市介護保険料決定に係る不服審査請求に対する採決
「さらに、本件処分について、請求人は『大阪市は保険料の取りすぎが2,890,000,000円もあり、これを繰り入れて保険料を下げるべきである。』と主張するが、介護保険の運営から生じる剰余金については、保険者が条例により介護給付費準備基金を設けて管理しており、その積み立てや取り崩し等は条例の規定に従い適正になされていると認められ、これをもって本件処分を違法または不当とする理由とはならない。
 なお、法第129条第3項は、保険料率はおおむね介護保険事業計画の期間である3年間を通じ財政の均衡を保つことができるものでなければならないと定めており、前期における各年度の黒字を積み立てた介護給付費準備基金については、保険者が最低限必要と認める額を除き、基本的には次期計画期間において歳入として繰り入れるべきものと考えるとされている(厚生労働省老健局介護保険課17年12月6日付け事務連絡)。
 もとより、介護保険の保険料率は各市町村の条例で定められるものであり、その財政運営についても法の範囲内で各保険者の裁量に委ねられていることは言うまでもないが、およそ保険料が介護保険事業に要する費用に充てるために徴収されるもの(法第129条第1項)である以上、当該積立金の一部でも歳入として繰り入れることなく保険料率を改定する場合は、その金額と必要性を明らかにして被保険者の理解を得るべきであって、当審査会としては、今後とも、処分庁がそうした不断の努力を継続することを望むものである

 大阪府介護保険審査会として、処分庁(大阪市)に対し、ため込み保険料のうち28億9千万円を繰り入れずに、第4期の保険料を下げなかったことについて、
①保険料が介護保険事業に要する費用に充てるために徴収されるもの 
②積立金の一部でも歳入として繰り入れることなく保険料率を改定する場合は、その金額と必要性を明らかにして被保険者の理解を得るべき
③処分庁がそうした不断の努力を継続することを望む
 
 大阪府の審査会として、大阪市に説明責任を果たすよう「ひとこと言った」という限りでは評価できるものであった。
 それが、今回、ごっそり削除され、かわりに「いくら取り崩すかは保険者の裁量」「議会で議決を得ており妥当」とした。

 結果的に、大阪市は、第5期は、これまでため込んできた介護給付費準備基金を全額取り崩さざるを得なかった。
 しかし、第4期の3年間、大阪市は、第3期の取りすぎ介護保険料85億円のうち56億円しか第4期に繰り入れていなかったことについて「その金額と必要性」について、いっさい市民に説明せず、まったく「理解を得る努力」をしてこなかったのである。

 それをまったく無視して、大阪府介護保険審査会は、今度は、「保険者の裁量」「議会の議決があれば妥当」としたのである。
 
 これでは、第5期で大幅に上がった大阪市の介護保険料が 今後、余ったとき、「いくらため込むかは大阪市の自由」とされてしまいかねない。

 被保険者の救済機関であるはずの介護保険審査会の責任放棄もはなはだしい。
 
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Category: 介護保険料
 
 
 
 
 
 
 
 

プロフィール

福祉・介護オンブズマン管理者 日下部雅喜(くさかべまさき)

Author:福祉・介護オンブズマン管理者 日下部雅喜(くさかべまさき)
 福祉・介護オンブズネットおおさか事務局長
 介護保険料に怒る一揆の会事務局長
 大阪社会保障推進協議会介護保険対策委員
 
 

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