2012/08/22 Wed
「全体の8割強の保険者(1,322保険者)で日常生活圏域ニーズ調査を実施」?

厚労省が21日に公表した内容である。

 介護保険事業計画の策定に当たり、高齢者のニーズなどを把握する「日常生活圏域ニーズ調査」を実施した自治体は、全体の8割強だったことが、21日までに厚生労働省の調査で分かった
CBニュース

 これだけ読むと、全国の8割の自治体が、日常生活圏域(厚労省は中学校区程度を想定)ごとの介護ニーズをくまなく調査しつくしたかのように受け取ってしまう。もし本当ならば「地域包括ケア実現」への着実な一歩と言うことになる。

 ところが、おなじ記事で
 「一方、ニーズ調査で明らかになった課題などを第5期介護保険事業計画(2012-14年度)の要介護者数やサービス見込み量の推計に反映させた自治体は、全体の2割にも満たなかった。」
 となっている。

 厚労省の報道発表でも
 要介護者やサービス見込み量の推計に当たって、地域診断の結果を反映させたと回答した保険者の割合は、保険者全体の2割弱。
 とはっきり認めている。

 日常生活圏域調査はしたが、計画には反映できなかった - あまりにもおかしな事態ではないか。

 厚労省の公表資料(集計表)を少し見れば 原因は はっきりする。

日常生活圏域ニーズ調査は、 
「地域包括ケア」推進の前提として、地域やその地域に居住する高齢者ごとの課題の的確な把握、具体的には、
①どこに、
②どのような支援を必要としている高齢者が、
③どの程度生活しておられるのか、
 等をより的確に把握し、より地域の実情に応じた各サービスの過不足の無い目標整備量の設定等、介護拠点の計画的整備に繋げ、地域で必要な介護サービス等が確実に提供される体制の整備を進めることが重要
(全国厚生労働関係部長会議H23.1.21)

 というものである。

 これは、基本的に日常生活圏域ごとに、高齢者全員を対象としたきめ細かな調査を行わない限り把握できないものである。

 ところが、集計表では、高齢者全員を調査対象とした自治体は全国でたったの131(9.9%)にすぎない。非認定者のみ全数とした自治体71を足しても16%そこそこである。

 私たちが指摘してきたように 圧倒的多数の自治体は、ごく一部の抽出サンプル調査を行っただけで「日常生活圏域ニーズ調査を実施した」としているのである。

 全数調査のないところに①どこに、②どのような支援を必要としている高齢者が、③どの程度生活しておられるのか などは 正確に把握も推計もできない。
 まさに「地域包括ケア」の前提となる「地域実態把握」をいい加減にしているのであり、実態把握のないところに地域包括ケアの目標や計画は本当の意味ではありえない。

 もともと、厚労省の示した調査項目は、「介護予防」に力点を置き過ぎたもので、地域での介護者・家族の生活困難を全般的に把握するには不十分なものである。これを多くの自治体ででは、調査項目は活用しながら、あえて全数調査による実態把握を中途半端にしたのである。

 したがって、

要介護者数の推計にあたり、日常生活圏域ニーズ調査の結果等から把握した圏域ごとの課題や地域診断の結果を反映させましたか。
 1.反映させなかった(推計は管内の人口推計や過去の認定率をもとに行った) → 80.7%

サービス見込量の推計にあたり、日常生活圏域ニーズ調査の結果等から把握した圏域ごとの
    課題や地域診断の結果を反映させましたか。
 1.反映させなかった(推計は認定者数の推計と過去の受給率をもとに行った) → 84.3%


 という、調査はしたが 第5期計画にまともに活用されない という おかしな現象になったのである。 

 厚労省集計表

 調査は それ自体が目的でない。①調査によって何が把握でき、それに基づき ②どのような計画・目標を立てたかである。そして、③それをどう実施し、④どこまで達成できたか という ことが大切である。

 厚労省の公表では「8割の自治体が日常生活圏域ニーズ調査をしました」 しかし、「計画・目標に反映したのは2割以下でした」 ということになってしまう。

 国民をたぶらかすような公表を行う前に、日常生活圏域ニーズ調査そのものの問題を真摯に分析し総括することが先決であろう。
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Category: 介護保険見直し
 
 
 
 
 
 
 
 

プロフィール

福祉・介護オンブズマン管理者 日下部雅喜(くさかべまさき)

Author:福祉・介護オンブズマン管理者 日下部雅喜(くさかべまさき)
 福祉・介護オンブズネットおおさか事務局長
 介護保険料に怒る一揆の会事務局長
 大阪社会保障推進協議会介護保険対策委員
 
 

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