2013/01/26 Sat
 ケアマネ公務災害裁判の内容について、知りたいという声があるので、私が、2012年末に 大阪地方裁判所第5民事部に提出した陳述書を順次紹介します。

陳述書 日下部雅喜  その④

第3 「不正関与疑惑」はなぜ起こったのか

1 事業者指導室の構成とU氏の役割
2006年4月にKさんが採用・配属された当時の事業者指導室の給付適正化関連の構成は次の2グループからなっていました。
 指導Ⅰグループ (正職員2人 非常勤7人) 給付適正化指導を担当
 指導Ⅱグループ (正職員2人 ) 指定事務、訴訟関係等を担当
 指導Ⅰグループの非常勤7人のうち、ケアマネジャー(介護給付費調査員)は3人で、内1人は、当初の介護保険課の時期からいるU氏(給付費調査経験1年3ヶ月)と、Y氏(経験3ヶ月)、そしてKさんという構成でした。同グループの正職員2名は、H氏(主幹、給付費調査経験なし)とN氏(給付費調査経験なし)でした。なお、H主幹は、体調を崩し同年10月に指導ⅡグループのM氏(主幹、給付費調査経験なし)と交代されました。
 事業者指導室長に就任したMS氏も介護保険関係業務は経験がなく、給付適正化指導については、非常勤とはいえ唯一の経験者であるU氏の影響がきわめて大きかったことが当初の特徴でした。事業者からの問い合わせなども一手に引き受けるなど、まさに「業務の中心」と言える状態のように見えました。

2 KさんとU氏の対立
 そのU氏とKさんが、決定的に対立し、その後U氏からいじめや嫌がらせを受けることになるきっかけは、2006年5月24日の実地調査での意見対立でした。
 外出困難な要介護者が、訪問介護員(ホームヘルパー)の介助で医療機関に通院した帰り道に買物に立ち寄ることが保険給付の対象となるかどうかは、訪問介護事業の中では大きな問題となっていました。
 本件も契機になって、堺市は「通院帰りの買物は認められない。その時間の介護報酬は返還対象になる」という指導を徹底するようになっていきました。しかし、その後2009年4月に大阪府が態度を一転させ、必要性・合理的理由があるものとして保険者が判断すれば、ケアプランに位置づけ保険給付の対象となるとしたことから、堺市も方針転換を行い、通院帰りの買物を保険給付の対象とするようになりました。これは、外出介助は通院目的ならば通院に限定され、途中の立ち寄りは一切認めないとする画一的・機械的な解釈が介護保険利用者の実態に合わないものであったことから当然のことです。
 本件の実地調査現場でのKさんとU氏の意見対立は、ケアマネジャーとして要介護者の生活に向き合ってきた立場から事業者指導にあたろうとしたKさんと、行政の画一的・機械的解釈で報酬返還を指導しようとしたU氏の「路線対立」の表面化でもありました。
 当時の堺市の給付適正化指導の問題点について、私は次のような指摘をしていました。
「『給付適正化』と称して、利用者にとって必要なサービスまで『不適正』とされ報酬返還(過誤調整)指導される事例もある。また、適正化指導といいながら、事業者に対する説明や指導なしに、実地に調査に入り、報酬返還のみを迫る指導のあり方には多くの事業者が萎縮し、サービス提供にも支障が生じるおそれがある。」(堺市の介護給付費適正化事業の状況(第1次報告)2006年12月  福祉・介護オンブズネットおおさか)
 この事件は、U氏が事業者の面前でKさんを罵倒し、「こんなもん返還にきまってるやろ」と主張した上に言う通りにならないと調査の途中で帰ってしまうという事態になりました。

3 Kさんへの意図的な「濡れ衣」
 Kさんは「はるか在宅サービス」で1年半パートのケアマネジャーとして勤務しましたが、不正請求には一切関与していません。それは、①Kさんが担当していた13人の利用者のプランには不正請求に結びつくような内容は一切なかったこと ②Kさんのケアマネジャーとしての仕事は、サービス利用の実績を入力するまでが仕事で、国保連への請求事務は一切タッチしなかったこと ③担当外の利用者のプランや利用状況を見る立場になく、それらの不正請求を知ることはできなかったこと からも明らかです。
 不正関与の疑惑は、「常勤ケアマネとして働いていないのに月20万円以上も給料もらえるのはおかしい」というU氏の決めつけが発端です。介護事業者と深いつながりを持ち、事業者指導室発足直後の期間は「業務の中心」的存在のU氏の影響力はきわめて大きいものでした。はるか介護サービスの不正発覚当時にKさんが息子の介護のために休暇中で不在であったこともあり、そうした見解が支配的になったと考えられます。このことは、福祉推進部のトップである芳賀部長までもが同様の認識を発言していることからも明らかです。
 しかし、この認識は、介護保険の事業所のケアマネジャーの実態を知らない勝手な思い込みと言うべきものです。居宅介護支援事業所の収入は、介護保険からの「居宅介護支援費」が唯一の収入で、これはケアプラン1件につき、要介護度によって月1万円~1万3千円程度の報酬が支払われるが、ケアマネジャー一人が担当できる件数は運営基準では35件と決められており、多数を担当すると減額される措置もあります。このため、居宅介護支援事業所は、厚生労働省の介護事業経営概況調査でも収支差率は事業種別の中で唯一全国平均で「マイナス」を続けています(2008年マイナス17.0%、2011年マイナス2.6%)。しかし、ケアマネジャーの給与額は、常勤のヘルパーや介護職員よりもかなり多いのが実態です。これは、居宅介護支援事業所の9割以上が訪問介護事業所や通所介護事業所などと併設であり、これらの併設事業所の収益をケアマネジャーの人件費など経費に充当することによって維持しているためです。また、ケアマネジャー(介護支援専門員)は基礎となる資格(看護師、介護福祉福祉士、社会福祉士など)と実務経験年数を満たす者が、介護支援専門員実務研修受講資格試験を受験し、受講することによって得られる資格であり、基礎資格の職種によっては、高い給与でケアマネジャー業務につくことも多くあります。
 Kさんは准看護師であり、以前働いていた老人保健施設(パート、夜勤なし)でも月額25万円程度、訪問看護ステーションでも同様の給与を得ていました。その後、堺市の介護認定調査員として週3日勤務しながら非常勤で働いた4ヶ所の居宅介護支援事業所でも多くは月15万円~20数万円の給与を得てきています。また、私の知るケアマネジャーの中にも非常勤で20万円以上の給与を得ている人は何人もいます。
 Kさんのはるか在宅サービスでの給与額が20万円を超えていたことをことさら問題にする発想自体がおかしいと言わざるを得ません。
 さらに、個人営業に毛の生えた程度の零細企業が多い介護事業所の多くは就業規則や給与規定もろくに整備されないまま、きわめて不明瞭な根拠で給与を計算し支払っているところも少なくありません。歩合給という口約束が実際はちがっていたりすることも多々あり、Kさんのケアプラン担当件数と給与計算に整合性がなかったとしてもそれを不正関与を疑う根拠にするのはあまりに意図的と言えます。

4 堺市の調査なし
 はるか在宅サービスは、訪問介護事業所について、実際に提供していないサービスについて不正に請求したとして、2006年11月9日に介護保険法に基づく指定取消し処分を受け約65万円の報酬返還を命じられました。しかし、居宅介護支援事業所については、2006年4月1日に廃止していたため、行政上の処分はなしで済まされています。
 この居宅介護支援事業所は、指定の最低要件である「常勤介護支援専門員1名以上」を満たしておらず、指定そのものが虚偽申請にもとづくものであり、介護保険法上は無効であり、堺市から得た介護報酬全額が返還対象になるものです。
 しかも、唯一の常勤介護支援専門員として指定申請書に記載されたのがKさんであり、週3日は堺市で勤務していたという明白な事実があります。ところが、この件について、堺市は、いっさいの独自調査を行わず、大阪府の監査に「同席」しただけで、全てをあいまいにしています。このことが本件の「不正疑惑」を生み出し拡大した最大の原因といえます。
 私は、本年7月24日にKさんと同行して大阪府に対し、はるか在宅サービスにかかわる情報公開請求とKさんの個人情報公開請求に同席し、当時の大阪府に担当職員と面談しましたが、大阪府も堺市もこの件について、まともな究明を行っていないことが判明しました。
 公開された監査の確認調書(質問顛末書)によれば、はるか在宅サービスの取締役のY氏は、Kさんの勤務について「週3日と認識していた」としながら、週5日勤務の常勤・専従職員として虚偽の申請を行ったことについて「人員基準をよく理解していなかった」「申請のときにひな型どおりに作成すればいいという認識しかもっていなかった」などと述べています。
 常勤・専従として勤務する見通しがないKさんをY氏が、週5日勤務と偽る勤務形態表を作成し届け出たことは明白です。しかも、Y氏は、「わたしとKさんとの間では事業開始から週3日の勤務であるということが共通の認識でした」と明言しており、「架空の『常勤ケアマネ』を了承したことはない。あくまでパートとの条件でケアマネジャーとして働いた」というKさんの釈明を裏付けるものです。
 これだけ、明白な虚偽申請であり、被告堺市に勤務していたという動かぬ証拠がありながら、この件について不問にしたという堺市のいい加減な姿勢が本件の根本的な原因です。
 保険者として監査権も有し、報酬返還請求権ももっていながらその責任を放棄し、さらにKさんの任用者でありながら、Kさん本人への聴取すら独自に行わないまま、不正関与を疑い続けた結果、長期間にわたって①本来業務から排除し、②雇い止め通告を行い、③Kさんの釈明を聞く耳持たなかった これらが、発症の直接の原因となったことは明らかです。
 あらゆる角度から見て堺市に全面的に責任があることを申し上げます。

 (おわり)

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プロフィール

福祉・介護オンブズマン管理者 日下部雅喜(くさかべまさき)

Author:福祉・介護オンブズマン管理者 日下部雅喜(くさかべまさき)
 福祉・介護オンブズネットおおさか事務局長
 介護保険料に怒る一揆の会事務局長
 大阪社会保障推進協議会介護保険対策委員
 
 

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