2013/07/30 Tue
 介護保険料は、住民税の課税状況と所得で決まる。住民税が非課税になれば介護保険料は下がる。この当たり前のことをめぐって、最高裁まで争った上、行政が敗訴し、国も是正をはかる通知を今年6月に出した。

 介護保険料のでたらめさを示すような事件である。

 まずは事件の概要を以下の報道から
 市民税の修正申告を行った際、その期間の介護保険料 が減額されされなかったのはおかしいとして、和歌山市に住む70歳代の男性が和歌山市を訴えていた裁判で、最高裁判所は、きょう(6月13日)までに和歌山市の上告を棄却し、男性の訴えを全面的に認めました。判決は全国に波及する可能性もあり、今後、ほかの自治体の判断が注目されます。

 訴えていたのは和歌山市に住む70歳代の男性です。

 訴えによりますと、この男性は2010年5月、2007年からの3年間の市民税の修正申告を行った際、市民税が非課税になりました。
 そして、男性は和歌山市にその期間の介護保険料も減額されはずだと訴えましたが、介護保険法が定める介護保険料の徴収の時効が2年の為、2007年分に関しては減額できないという厚生労働省の指針に基づいて和歌山市が判断し、男性はそれを不服として裁判を起こしていました。
 そして、おととし(2011年)1月に一審の和歌山地方裁判所が出した判決では介護保険法の定める介護保険料の徴収の時効とはあくまで行政側が介護保険料を徴収する際の時効であり、修正に応じるのは問題ないとして男性の訴えを全面的に認め、2007年度分の介護保険料を7万1400円から4万2840円に減額して、差額である2万8560円を男性に返還するように命じ、大阪高等裁判所もおととし8月に和歌山地裁の判決を支持していました。

 和歌山市はこれに納得できず、2011年9月に最高裁に上告していましたが、最高裁はこのほど和歌山市の上告を棄却し、男性の訴えを全面的に認めました。

 この判決について和歌山市介護保険課の山田喜道(やまだ・よしみち)課長は「残念な判決だ。厚生労働省の指針に基づいて通常の業務を行っていただけで、この判断は全国共通のはずだ。ほかの自治体にも影響が出てくると思う。」と話しました。
 また、税の減額修正について和歌山市は地方税法にのっとり、当面5年間さかのぼって行うとしています。

(和歌山放送ニュース2013年6月13日)


 市民税が5年間さかのぼって非課税になるのに、介護保険料は2年の時効があるので、2年間しか減額しない、というこの不当かつ不合理な扱いに対し、最高裁でようやく決着したわけである。
 こんな当たり前のことを最高裁まで3年近くも争わないと解決しない、ここに介護保険料の恐ろしさがある。

 厚生労働省は、この裁判結果を受けて、あわてて老健局介護保険計画課長通知(老介発0614第2号平成25年6月14日)を出した



 保険料賦課額の減額等に係る取扱いについて
 介護保険制度の円滑な運営につきましては、平素より格別の御高配を賜り、
厚く御礼申し上げます。
 介護保険料の賦課権に係る期間制限の取扱いについては、介護保険法(平成
9年法律第123号)に規定がないところであり、「保険料滞納者に対する保険給
付の制限等に係るQ&A vol.3」問15(全国介護保険担当課長会議(平成14
年6月4日開催)資料No.2。参考1)でお示ししているところです。
このQ&Aは、保険料を新規に(増額して)賦課する場合の取扱いを示した
ものですが、減額して賦課する場合にも同様に2年の期間制限を適用する取扱
いが多くの保険者で行われてきました。
今般、大阪高等裁判所の介護保険料減額更正請求事件判決(平成23年(行コ)
第30号)が確定したこと(参考2)を踏まえ、当面、下記のとおり取り扱うこ
ととしましたので、管内市町村等に周知を図るようよろしくお願いします。
               記
1.保険料賦課額を減額する場合の取扱い
 第1号被保険者の保険料賦課額については、地方税の課税標準の減額等が行
われた場合には、介護保険法第200 条第1項に定める保険料を徴収する権利の
消滅時効の2年を超えて、遡って保険料賦課額を減額できる。なお、地方税の
課税標準又は税額を減少させる賦課決定は、地方税法第17 条の5第4項の規
定により5年以内とされていることから、この場合は、5年程度遡った減額が
想定されることとなる。
2.保険料賦課額を新規に又は増額して賦課する場合の取扱い
保険料賦課額を新規に又は増額して賦課する場合については、上記のQ&A
のとのとおり、保険料を徴収する権利の時効の2年まで遡って行うことができる。



 厚生労働省は、今回の事態について、国は新規(増額)賦課は2年の期間制限を示しただけで、減額は「多くの保険者」が勝手にやっていたかのような責任逃れをしている。
 そして、判決確定を受けて、減額の場合は5年遡及新規・増額の場合は2年遡及とした。これ自体は当然のことである。
扶養家族がいるのに申告していなかったり、寡婦や障害者の非課税が適用されていなかったりするなど、この住民税の非課税問題は、介護保険料の所得段階決定に大きな影響を与えるし、2年を超えて遡る事例もまれではない。この問題を大きくしている背景には、2006年税制改正で、それまで合計所得125万円以下は非課税となっていた老年者(65歳以上)の非課税措置がなくなったことがある。

 最高裁での判決確定を受けた厚生労働省通知は、あまりにも遅すぎた。
 しかし、今後、各自治体(保険者)が真しに対応するかどうかである。少なくとも、和歌山市の事件が発生した時点を起点にして、過去5年間に市民税が課税から非課税になったり合計所得金額が変更されたすべての事例を点検し、介護保険料を減額し、過誤徴収分については返還するべきであろう。
 自治体側の誤った法解釈によって住民に被害を与えた以上当然である。また、厚生労働省も一片の通知で事を済ませることなく、全保険者に是正措置の報告を求めその集計結果を国民に報告すべきである。



参考

○確定した判決の概要大阪高等裁判所平成23年8月30日判決
平成23年(行コ)第30号介護保険料減額更正請求控訴事件
控訴人(原審被告) 和歌山市
被控訴人(原審原告) 被保険者
1 事案の概要
 本件は、被控訴人が、処分行政庁から、平成19年度の介護保険料を7万1400
円とする賦課決定を受け、これを徴収されたが、平成21年7月に平成19年度の市
民税が非課税になった結果、所定の介護保険料は2万8560円になったと主張して、
控訴人に対し、行政事件訴訟法37条の2に基づいて、原告の平成19年度の介護保
険料を2万8560円に減額更正する処分の義務付けを求めた事案である。
2 大阪高裁の判断(判決より抜粋)
 「当裁判所も、処分行政庁が被控訴人に対し平成19年度の介護保険料を4万28
40円に減額更正する処分をすべきであると判断するが、その理由は、原判決「事実
及び理由」第3に記載のとおりであるから、これを引用する。
(1) なお、控訴人は、原判決が、増額更正決定について2年の期間制限を認めなが
ら、減額更正について認めなかったのは、理論的一貫性を欠くと主張している。
確かに、更正決定を行う権限は、既に成立した保険料債権の額を確定するもの
であるのに対し、保険料の徴収権は、確定した保険料債務の履行を請求して収納
を図るものであるから、両者の性質は異なる。しかし、更正決定を行う権限のう
ち、増額更正については、新たに保険料を賦課して徴収する一連の手続の前提を
なし、増額更正処分とそれに基づく徴収権の行使とが相まって保険料請求権が実
現されるという密接な関係にある以上、介護保険料の徴収権の消滅時効の起算点
である「権利を行使することができる時」(介護保険法第200条1項、地方自
治法236条2項、3項、民法166条1項)も前記増額更正処分が可能になっ
たときから、当該部分に関する保険料請求権も行使し得る状態にあるというべき
であるから、増額更正を行う権限と同一と考えるべきである。したがって、その
消滅時効が完成したならば、原判決も判示しているとおり、もはや増額更正部分
に関する保険料の徴収手続を採ることができない以上、増額更正処分を行ったと
しても、その目的を達することができないから、同処分については、除斥期間を
定める明文の規定がなくとも、徴収権の消滅時効の完成によりそれに関する増額
更正の権限も行使できなくなると解するのが相当である。
 一方、減額更正処分は、原判決も判示するとおり、既に賦課された介護保険料
の納付義務の一部を取り消す処分であるから、新たに徴収権の行使が必要になる
ものではなく、徴収権の消滅時効の完成により、その目的を達することができな
くなるわけではない。また、減額更正処分により被保険者に発生する還付請求権
は、前記処分により初めて行使することができるのであるから、その消滅時効も
「権利を行使することができる時」(前掲各法条)である前記処分時から進行す
ると解すべきであって、この点も減額更正の権限の行使を妨げる事由とはならな
い。
 したがって、増額更正処分と減額更正処分とは、処分の性質が異なる結果、徴収
権との関係性の有無も異なるのであるから、控訴人の前記主張は理由がないという
べきである。
 さらに、控訴人は、法的安定の要請を主張しているが、和歌山市の介護保険料は
市民税の課税の有無によってその額を決定する仕組みになっている以上(本件条例
9条1項、本件政令39条1項)、本件のように、その算定の基礎となる市民税の課
税の有無が変更された場合には、それに連動して介護保険料額も変更し得るとした
方が、前記各法条の趣旨に沿うとも解される上、原判決も判示するとおり、地方税
の減額更正は法定納期限の翌日から5年内に期間が制限されているから(地方税法
17条の5第2項)、そのように解したとしても、無制限に遡って減額更正を義務付
けられる事態は生じないと解されるので、この点に関する控訴人の主張も採用でき
ない。」
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Category: 介護保険料

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このせいで・・

保険料に係る期間制限が法制化されたのって、この訴訟のせいですよね。
遡って申告すれば料の場合、還付加算金が発生してしまうケースが多くなるので、制限されるのも当然かと思うのですけど。遅れて申告して加算金というのは悪意を持って行えば、利率が金融機関の預金より良いじゃんってなってしまいますから。どうやら、そのあたりも法改正があったようで・・国のお役人は流石というか、なんというか。

Edit | 2015/04/07(Tue) 19:05:36

 
 
 
 
 
 
 
 

プロフィール

福祉・介護オンブズマン管理者 日下部雅喜(くさかべまさき)

Author:福祉・介護オンブズマン管理者 日下部雅喜(くさかべまさき)
 福祉・介護オンブズネットおおさか事務局長
 介護保険料に怒る一揆の会事務局長
 大阪社会保障推進協議会介護保険対策委員
 
 

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