2013/08/02 Fri
 8月2日の第19回社会保障制度改革国民会議でやっと「各論」部分(少子化対策分野、医療・介護分野、年金分野)の案が公表された。7月29日の第18回会議で公表された「総論」部分と合わせ、政府が講じるべき社会保障改革の方向性が示されたことになる、あとは8月5日の国民会議での報告書了承、8月6日に安倍首相へも提出という段取りと報じられている。(一部新聞は、社会保障改革推進法の「法施行後1年以内の法的措置」として、8月21日までに「改革プログラム法案」の大綱閣議決定を報じているが現時点では確認できない)

 ようやく公表された各論報告書案の中から介護保険制度にかかわる部分を分析してみた。

その1 要支援者の保険給付外し

 国民会議報告書案の中で介護保険の要支援者については、
「地域支援事業については、地域包括ケアの一翼を担うにふさわしい質を備えた効率的な事業(地域包括推進事業(仮称))として再構築するとともに、要支援者に対する介護予防給付について、市町村が地域の実情に応じ、住民主体の取組等を積極的に活用しながら柔軟かつ効率的にサービスを提供できるよう、受け皿を確保しながら新たな地域包括推進事業(仮称)に段階的に移行させていくべきである。」
 と表現された。

①現行の地域支援事業を「地域包括推進事業(仮称)」に再編
②要支援者に対する予防給付は地域包括推進事業(仮称)に段階的に移行させていく
 というものである。目新しいと言えば、地域支援事業を地域包括推進事業(仮称)に再編する という点である。2011年の介護保険法「改正」で地域支援事業の中に「介護予防・日常生活支援総合事業」を設け、要支援者を予防給付から移行させる受け皿としたばかりである。しかも、「仮称」であっても具体的な事業名まで登場したこの地域包括推進事業(仮称)なるものは、厚生労働省の社会保障審議会・介護保険部会で提案もされたことのない代物であり、この国民会議の「頭ごなし」のものである。

 国民会議報告書案は、医療・介護分野の改革の中で「医療・介護サービスの提供体制改革」として、
「医療から介護へ」、「病院・施設から地域・在宅へ」という流れを本気で進めようとすれば、医療の見直しと介護の見直しは、文字どおり一体となって行わなければならない。
 としている。
 具体的には、高度急性期医療から始まる医療を「川上」、在宅介護を「川下」と表現し、患者(要介護者)の早期退院、在宅化を徹底して推進しようというのだ。費用のかかる「川上」から安上がりの「川下」へ早く流れていくよう、在宅医療・在宅介護の体制を整えようというのである。
  報告書案では「川上」の医療病床機能の再編とセットで「川下」の退院患者受け入れ体制描き、この中に「地域包括ケアシステム」を位置づけている。
 そして、介護サービスについては、24 時間の定期巡回・随時対応サービスや小規模多機能型サービスの普及など、退院患者の受け皿となりうる重度者向けの基盤整備とともに、要支援者・軽度者については、保険給付からの追い出しを図ろうというのである。
 「介護保険給付と地域支援事業の在り方を見直すべきである」として登場させたのが、地域包括推進事業(仮称)である。「市町村が地域の実情に応じ、住民主体の取組等を積極的に活用しながら柔軟かつ効率的」に行うという地域包括推進事業(仮称)は、現行の予防給付に代わって要支援者の受け皿になりうるだろうか。
 断じて否である。

 第一に、その内容の無責任さである。「柔軟かつ効率的」と言えば聞こえはいいが、柔軟=人員設備基準なし、効率的=安上がり ということに他ならない。現行の地域支援事業も財源の上限が保険給付の3%以内とされていることから、介護保険の指定サービスである予防給付のサービスとは比べようのない劣悪で低水準なものとなるであろう。
 第二に、この事業そのものが本当に全国に普及するかどうか疑わしいことである。市町村が「地域の実情に応じ」とは、基本的に市町村任せである。また、「住民主体の取組の積極的活用」とは、地域住民の互助などボランティア、NPOなどに委ねるということである。現行の「介護予防・日常生活支援総合事業」は、市町村判断で実施とされたこともあり、2013年3月時点で全国わずか37自治体でしか実施されていないという惨憺たる状況である。これを法で義務化したとしても、介護保険のヘルパーやデイサービスに代わる事業を担うボランティアなど「住民主体の取組」を市町村が育成できるかどうかは、はなはだ心もとない。とうよりどう考えても不可能であろう。
 
 結局のところ、これが強行されれば、受け皿があろうがなかろうが、要支援者の予防給付を各自治体が取り上げていくということになる危険性が極めて高い。国民会議報告書案は「受け皿を確保しながら新たな地域包括推進事業(仮称)に段階的に移行させていく」などとしているが、現実には大多数の市町村は住民主体の取組もまともに組織できず、申し訳程度の「ボランティア事業」「民間活用」などのメニューを作ったことを口実に片っ端から要支援者を介護保険給付から追い出していくことになろう。

 国民会議報告書案は、「平成27 年度からの第6 期以降の介護保険事業計画を「地域包括ケア計画」と位置づけ、各種の取組を進めていくべき」と市町村に何としても実施させるようはっぱをかけている。

 要支援者のサービス取り上げ問題は、断じて具体化させてはならない改悪内容である。

 要支援者の予防給付問題は、介護保険法「改正」のなかでどのように規定されるか、内容・対象など政令・省令・告示、通知などでどのようになるか。さらに現場である各市町村の第6期事業計画でどのようになるか、まさにこれから1年半近い政府・厚生労働省、国会、地方を通じての一大攻防戦となるであろう。

第19回 社会保障制度改革国民会議 資料1-2 各論部分(医療・介護分野)(案) 



参考 第19回 社会保障制度改革国民会議 資料1-2 各論部分(医療・介護分野)(案) の一部抜粋

Ⅱ 医療・介護分野の改革
(略)
2 医療・介護サービスの提供体制改革
(略)
(4)医療と介護の連携と地域包括ケアシステムというネットワークの構築
「医療から介護へ」、「病院・施設から地域・在宅へ」という流れを本気で進め
ようとすれば、医療の見直しと介護の見直しは、文字どおり一体となって行わな
ければならない。高度急性期から在宅介護までの一連の流れにおいて、川上に位
置する病床の機能分化という政策の展開は、退院患者の受入れ体制の整備という
川下の政策と同時に行われるべきものであり、また、川下に位置する在宅ケアの
普及という政策の展開は、急性増悪時に必須となる短期的な入院病床の確保とい
う川上の政策と同時に行われるべきものである。
 今後、認知症高齢者の数が増大するとともに、高齢の単身世帯や夫婦のみ世帯
が増加していくことをも踏まえれば、地域で暮らしていくために必要な様々な生
活支援サービスや住まいが、家族介護者を支援しつつ、本人の意向と生活実態に
あわせて切れ目なく継続的に提供されることも必要であり、地域ごとの医療・介
護・予防・生活支援・住まいの継続的で包括的なネットワーク、すなわち地域包
括ケアシステムづくりを推進していくも求められている。
 この地域包括ケアシステムは、介護保険制度の枠内では完結しない。例えば、
介護ニーズと医療ニーズを併せ持つ高齢者を地域で確実に支えていくためには、
訪問診療、訪問口腔ケア、訪問看護、訪問リハビリテーション、訪問薬剤指導な
どの在宅医療が、不可欠である。自宅だけでなく、高齢者住宅に居ても、グルー
プホームや介護施設その他どこに暮らしていても必要な医療が確実に提供される
ようにしなければならず、かかりつけ医の役割があらためて重要となる。そして、
医療・介護サービスが地域の中で一体的に提供されるようにするためには、医療・
介護のネットワーク化が必要であり、より具体的に言えば、医療・介護サービス
の提供者間、提供者と行政間などさまざまな関係者間で生じる連携を誰がどのよ
うにマネージしていくかということが重要となる。たしかに、地域ケア会議や医
療・介護連携協議会などのネットワークづくりの場は多くの市町村や広域圏でで
きているが、今のところ、医療・介護サービスの提供者が現場レベルで「顔の見
える」関係を構築し、サービスの高度化につなげている地域は極めて少ない。成
功しているところでは、地域の医師等民間の熱意ある者がとりまとめ役、市町村
等の行政がそのよき協力者となってマネージしている例が見られることを指摘し
ておきたい。
 こうした地域包括ケアシステムの構築に向けて、まずは、平成27 年度からの第
6 期以降の介護保険事業計画を「地域包括ケア計画」と位置づけ、各種の取組を
進めていくべきである。
 具体的には、高齢者の地域での生活を支えるために、介護サービスについて、
24 時間の定期巡回・随時対応サービスや小規模多機能型サービスの普及を図るほ
か、各地域において、認知症高齢者に対する初期段階からの対応や生活支援サー
ビスの充実を図ることが必要である。これと併せて、介護保険給付と地域支援事
業の在り方を見直すべきである。地域支援事業については、地域包括ケアの一翼
を担うにふさわしい質を備えた効率的な事業(地域包括推進事業(仮称))として
再構築するとともに、要支援者に対する介護予防給付について、市町村が地域の
実情に応じ、住民主体の取組等を積極的に活用しながら柔軟かつ効率的にサービ
スを提供できるよう、受け皿を確保しながら新たな地域包括推進事業(仮称)に
段階的に移行させていくべきである。
 また、地域包括ケアの実現のためには地域包括支援センターの役割が大きい。
かかりつけ医機能を担う地域医師会等の協力を得つつ、在宅医療と介護の連携を
推進することも重要である。これまで取り組んできた在宅医療連携拠点事業につ
いて、地域包括推進事業として制度化し、地域包括支援センターや委託を受けた
地域医師会等が業務を実施することとすべきである。
 さらに、中低所得層の高齢者が地域において安心して暮らせるようにするため、
規制改革等を進めつつ、地域の実情に応じ、介護施設等はもとより、空家等の有
効活用により、新たな住まいの確保を図ることも重要である。
 なお、地域医療ビジョン同様に、地域の介護需要のピーク時を視野に入れなが
ら2025 年までの中長期的な目標の設定を市町村に求める必要があるほか、計画策
定のために地域の特徴や課題が客観的に把握できるようにデータを整理していく
仕組みを整える必要がある。また、上記(1)で述べた都道府県が策定する地域
医療ビジョンや医療計画は、市町村が策定する地域包括ケア計画を踏まえた内容
にすべきであるなど、医療提供体制の改革と介護サービスの提供体制の改革が一
体的・整合的に進むようにすべきである。
 いずれにせよ、地域包括ケアシステムの確立は医療・介護サービスの一体改革
によって実現するという認識が基本となる。こうした観点に立てば、将来的には、
介護保険事業計画と医療計画とが、市町村と都道府県が共同して策定する一体的
な「地域医療・包括ケア計画」とも言い得るほどに連携の密度を高めていくべき
である。
 なお、地域包括ケアシステムを支えるサービスを確保していくためには、介護
職員等の人材確保が必要であり、処遇の改善やキャリアパスの確立などを進めて
いく必要がある。また、地域医師会等の協力を得ながら、複数の疾患を抱える高
齢者が自分の健康状態をよく把握している身近な医師を受診することを促す体制
を構築していくことも必要である。



(つづく)
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Category: 介護保険見直し
 
 
 
 
 
 
 
 

プロフィール

福祉・介護オンブズマン管理者 日下部雅喜(くさかべまさき)

Author:福祉・介護オンブズマン管理者 日下部雅喜(くさかべまさき)
 福祉・介護オンブズネットおおさか事務局長
 介護保険料に怒る一揆の会事務局長
 大阪社会保障推進協議会介護保険対策委員
 
 

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