2013/08/05 Mon
 社会保障制度改革国民会議は8月5日、消費増税に伴う社会保障改革の報告書をまとめた。高齢者をはじめ国民に徹底した「負担増」を求めながら、医療・介護を中心に大幅な切り下げを断行しようとする内容である。今日6日に安倍晋三首相に提出するという。

 5日の第20回会合ではじめて公表された「国民へのメッセージ」。

福沢諭吉は「学者は国の奴雁なり」と書いています。奴雁とは雁の群れが
一心に餌を啄ばんでいるとき一羽首を高く揚げて遠くを見渡し難にそなえる
雁のことで、学者もまた「今世の有様に注意して(現状を冷静に分析し)、以
って後日の得失を論ずる(将来にとって何が良いかを考える)」役割を担う、
という意味です。私たちもまた、社会保障の専門家として、社会保障制度の
将来のために何が良いかを、論理的、実証的に論議してまいりました。この
報告書は、日本を世界一の長寿国にした世界に冠たる社会保障制度を、将来
の世代にしっかりと伝えるために、現在の世代はどのような努力をしたらよ
いのか、ということを考え抜いた私たち国民会議の結論であります。


 読んでいて「御用学者」の傲慢に強い不快感を覚える。

この御用学者どもが言っているのはただ一つ。
社会保障給付は年100兆円を超え、現役世代の保険料や税負担は増大し、将来世代の負担となっている。
 社会保障給付を削るための方策をあれこれと考え、これに様々な理論的装いをこらしたに過ぎない。

 社会保障の現場も老若男女国民の苦しみも、社会保障に従事する労働者の実態も無視したこの犯罪的な報告書をまとめた自称「社会保障の専門家」たちの名をあげておく。

社会保障制度改革国民会議 委員名簿
 伊藤 元重 東京大学大学院経済学研究科教授
○ 遠藤 久夫 学習院大学経済学部長
 大島 伸一 国立長寿医療研究センター総長
 大日向雅美 恵泉女学園大学大学院平和学研究科教授
 権丈 善一 慶應義塾大学商学部教授
 駒村 康平 慶應義塾大学経済学部教授
 榊原 智子 読売新聞東京本社編集局社会保障部次長
 神野 直彦 東京大学名誉教授
◎ 清家 篤 慶應義塾長
 永井 良三 自治医科大学学長
 西沢 和彦 日本総合研究所調査部上席主任研究員
 増田 寬也 野村総合研究所顧問
 宮武 剛 目白大学大学院生涯福祉研究科客員教授
 宮本 太郎 中央大学法学部教授
 山崎 泰彦 神奈川県立保健福祉大学名誉教授
◎は会長、○は会長代理


社会保障制度国民会議報告書要旨
 【総論】
 持続可能な社会保障の構築には、徹底した給付の重点化・効率化が求められる。必要な財源は、後代につけ回しすることなく、現在の世代で確保することが不可欠だ。
 「給付は高齢世代中心、負担は現役世代中心」という構造を見直すことが求められる。全世代型の社会保障への転換を目指し、子育て支援などの投資を積極的に行うことが必要だ。2025年には団塊の世代がすべて75歳以上となり、超高齢社会になっていく。能力に応じて支え合うことが必要だ。
 世代間だけでなく世代内の公平も重要だ。特に格差の大きい高齢者は一律に対応するのではなく、負担能力に応じて社会保障財源に貢献してもらうことが必要だ。「年齢別」から「負担能力別」に負担のあり方を切り替え、社会保障・税番号制度も活用し、資産を含め負担能力に応じて負担する仕組みとしていくべきだ。
 少子化は社会保障全体に関わる問題。子育て支援は未来への投資と認識し取り組むべきだ。
 改革は短期と中長期に分けて実現すべきだ。まずは、消費税増収が段階的に生じる期間内に集中的に実施すべき改革。中長期は25年を念頭に段階的に実施すべき改革だ。改革は、定期的に方向性や進捗(しんちょく)状況をフォローアップしていくことが必要。政府の下で必要な体制を確保すべきだ。
 【少子化対策】
 待機児童の解消は喫緊の課題だ。できることから対策を打つ必要がある。財源確保が必須で、消費税増収分などを活用すべきだ。
 次世代育成支援対策推進法の延長、見直しを検討すべきだ。育休中の経済的支援も含めた検討を進めるべきだ。
 子ども・子育て支援は量拡充のみならず質改善が不可欠。消費税引き上げによる財源(0・7兆円)では足りず、0・3兆円超の確保を図る必要がある。
 【医療・介護】
 ◆改革が求められる背景◆
 急速な高齢化で、医療は「病院完結型」から、住み慣れた地域や自宅での生活のための「地域完結型」に変わらざるを得ない。選択と集中による提供体制の構造的な改革が必要だ。
 保険料・税の徴収と給付の両面で、これまで以上に能力に応じた負担のあり方、公平性が強く求められる。
 急性期を中心に人的・物的資源を集中投入し、入院期間を減らして早期の家庭復帰を実現するとともに、受け皿となる地域の病床や在宅医療・在宅介護を充実させていく必要がある。
 ◆サービスの提供体制改革◆
 医療機能情報の都道府県への報告制度を早急に導入する必要がある。データに基づき、機能ごとの医療の必要量を示す地域医療ビジョンを都道府県が策定することが求められる。18年度を待たず策定し直ちに実行に移すのが望ましい。地域の医療提供体制に責任を果たせるよう、都道府県の権限・役割の拡大が具体的に検討されるべきだ。
 国民健康保険の財政運営に責任を担う保険者を都道府県とし、都道府県が住民負担のあり方を総合的に検討できる体制を実現すべきだ。都道府県への移行は、(18年度の)次期医療計画の策定前に実現すべきだ。
 要支援者に対する介護予防給付は、市町村が住民主体の取り組みなどを活用しながらサービスを提供できるよう、受け皿を確保しながら、新たな地域包括推進事業(仮称)に段階的に移行させていくべきだ。
 医療・介護の提供体制改革の推進のために消費税増収分の活用が検討されるべきだ。全国一律の診療報酬・介護報酬と、別の財政支援の手法を組み合わせることが必要で、基金方式も検討に値する。
 ◆医療保険制度改革◆
 国民皆保険の維持のため、国保の財政基盤の安定化が優先課題だ。この解決が国保を都道府県に移行する前提条件。財源は後期高齢者支援金の負担方法を全面総報酬割にすることで生じる財源を考慮に入れるべきだ。
 多くの非正規労働者が国保に加入しており、被用者保険の適用拡大を進めることも重要。低所得者に対する保険料軽減措置の拡充を図るべきだ。
 高所得でも保険料の限度額しか負担しない国保の仕組みを改め、限度額を引き上げるべきだ。被用者保険も標準報酬月額上限引き上げを検討すべきだ。
 後期高齢者支援金の負担方法は、15年度から被用者保険者間の案分方法を全面的に総報酬割とし、協会けんぽと健保組合、共済の保険料負担の平準化を目指すべきだ。その際、協会けんぽの支援金負担への国庫補助が不要になるが、生じる税財源は社会保障の機能強化に活用すべきだ。こうした貢献は、国保の都道府県への移行を実現するのに不可欠だ。
 後期高齢者医療制度は十分定着している。現行制度を基本に必要な改善をするのが適当だ。
 医療資源を効率的に活用する観点から、医療機関間の役割分担が必要。大病院の外来は紹介患者を中心とし、一般的な外来受診は「かかりつけ医」への相談が基本。紹介状のない患者の一定病床数以上の病院の外来受診について、定額自己負担を求める仕組みを検討すべきだ。
 暫定的に1割となっている70~74歳の医療費の自己負担の特例措置は、世代間の公平を図る観点からやめるべきで、早期に結論を得るべきだ。新たに70歳になった者から段階的に進めることが適当だ。
 難病対策の医療費助成は、消費税増収分を活用して、対象疾患の拡大や都道府県の超過負担の解消を図るべきだ。
 ◆介護保険制度改革◆
 持続可能性を高めるために、予防給付の見直しのほか、利用者負担の見直しが必要。一定以上の所得の利用者の負担は引き上げるべきだ。
 低所得者の1号保険料で軽減措置を拡充すべきだ。2号被保険者が加入する被用者保険が負担する介護納付金は、被保険者の総報酬額に応じたものにするべきだ。
 【年金】
 基本的に年金財政の長期的な持続可能性は確保されていく仕組みだ。負担も給付も現役時代の所得に応じた形の制度にするのは一つの理想形。しかし、正確な所得捕捉などの条件は整っておらず、実行可能な制度構築を図る観点から政策選択しなければならない。制度の一元化には、委員間で認識の違いが存在した。どんな制度をめざすにも必要な課題解決を進め、将来の制度は引き続き議論するという2段階のアプローチが必要だ。
 マクロ経済スライドは、デフレ脱却をした後でも物価や賃金の変動によっては、調整が十分機能しないことが短期的に生じうる。仮に将来再びデフレが生じても、年金水準の調整を計画的に進める観点から、検討することが必要だ。
 高齢者の働き方と年金受給のあり方をどう組み合わせるかは、今後の検討課題。現在、厚生年金の支給開始年齢を引き上げている途上にあり、直ちに見直す環境にはなく、中長期的課題として考える必要がある。雇用との接続など幅広い観点からの検討が必要で、作業は速やかに始める必要がある。多様な就業と引退への移行に対応できる弾力的な年金受給のあり方について、在職老齢年金も一体で検討を進めるべきだ。
 世代内の再分配機能の強化が求められる。高齢期の所得によって基礎年金の国庫負担相当分の給付を調整するのみならず、様々な方法を検討すべきだ。公的年金等控除など年金課税のあり方を見直すべきだ。
 3号被保険者制度は、短時間労働者の被用者保険適用を拡大するなど、制度の支え手を増やす方向で検討を進めるべきだ。
スポンサーサイト
Category: 介護保険見直し
 
 
 
 
 
 
 
 

プロフィール

福祉・介護オンブズマン管理者 日下部雅喜(くさかべまさき)

Author:福祉・介護オンブズマン管理者 日下部雅喜(くさかべまさき)
 福祉・介護オンブズネットおおさか事務局長
 介護保険料に怒る一揆の会事務局長
 大阪社会保障推進協議会介護保険対策委員
 
 

月別アーカイブ

ブロとも申請フォーム

ブログ内検索