2013/08/25 Sun
 「議論のレベルが違う」。感動と勇気をいただいた2日間。
 8月24日~25日岡山市内で開かれた第31回障全協(障害者の生活と権利を守る全国連絡協議会)活動者学習会にお招きいただいた。私のテーマは、「このままでいいのか介護保険!危険な『改革』の動向と私たちが求める介護制度実現への課題」。障害者は「65歳問題」もあり、介護保険への関心は極めて高い。そしてとても鋭い感覚で質問やご意見をいただいた。講演し終わった後、「うちでもこの話をしてほしい」と埼玉と東京から講師依頼を受けた。

 65歳問題。障害者と介護保険を結ぶ問題である。
 2006年、若年層からも介護保険料を徴収するか「皮算用」を狙って、障害者福祉サービスを介護保険制度に吸収する第一歩として「障害者自立支援法」がスタートした。1割の「応益負担」、利用契約制度、障害区分認定など介護保険の仕組みをそのまま持ち込んだ。
 しかし、障害者の大同団結した「応益負担反対」の運動と「自立支援法違憲訴訟」により、低所得者については障害福祉サービスは「無料」を実現させてきた。

 ところが、その障害者が65歳になって介護保険の第1号被保険者になると「介護保険優先」の原則により、介護保険サービスに移行させられる。所得に関係なく「1割」負担となる上に、介護保険でサービス量が足りなくなる、またサービス内容に制約がありすぎて障害者のニーズにこたえられなくなる。これが「65歳問題」である。

 岡山市の市営住宅でひとり暮らしをしてきた浅田さんは、四肢と言語に重度の障害があり、これまで障害者自立支援法によって月249時間の重度訪問介護(うち25時間は移動介護)を受けて生活していた。
 今年2月16日に65歳の誕生日を迎える浅田さんに「介護保険法による支援に変更することになる」と1割負担が示された。浅田さんは「そんなに請求されたら生きていけない」と何度も市に相談しました。市は「65歳になれば介護保険優先になる」の一点張り。
 浅田さんや支援の方々は、「他の自治体では65歳過ぎても自立支援法を認めている自治体もある。市の一方的な考えで打ち切るのは不当だ」と、岡山市の対応を改めるよう求め、正式に障害者自立支援法による介護給付の継続を申請した。
 しかし、岡山市は2月12日「介護給付費等不支給(却下)決定」を出した。理由は「要介護認定がされていない」というものだった。

 浅田さんと支援者は、障害者サービス打ち切り後の生活をカンパとボランティアによる介護で支えながら、岡山県に不服審査請求をして闘ってきた。その後4月に岡山市が自ら行った不支給決定の一部を取消し「移動介護」の支給を認めるなど変化はあったが、7月20日に岡山県は不服審査請求を「棄却」した。これに対し、浅田さんは、9月19日に岡山地裁に提訴する。
「支援法による給付を一切受けさせなかったのは憲法14条に違反する差別である」「重度障害者に対するサービス不支給はいのちを奪いかねない生存権侵害で憲法25条に違反する」という裁判である。
岡山市 浅田さん2

 学習会では、浅田さん本人が発言し訴えられた。たどたどしい言葉ながら、命をかけた人間の尊厳あふれる決意表明に全員が大きな拍手を送った。
 
 「私の闘いはこれからが本番だと改めて決意し、二度と私のような例が生まれないようにしてほしいから必死で粘り強くがんばりたいと思っております。岡山、そして全国の仲間もきっと、一緒に闘ってくれることを信じています。
 私たち障害者抜きでは、制度を作らないでほしい!!
 『みんなが、平等で幸せに暮らせる世の中で一生を終わりたい。』それが願いであり、今回、9月19日(木曜日)に裁判に提訴する理由なのです。今後ともどうか、よろしくお願いします。」


 障害者だけでなく、介護保険そのものの問題点を問う歴史的な裁判である。何としても勝利させなければならない。


 さらに、障全協は裁判だけでなく、国会に対し「介護保険制度における利用料負担の廃止等を求める請願署名」も提起した。
 請願項目は
 1.介護保険制度における保険料負担を大幅に軽減するとともに、利用料負担はなくしてください。当面、障害者総合支援法と同様に、住民税非課税世帯からの利用料徴収はやめてください。
 2.障害者総合支援法の第7条(介護保険優先原則)をなくし、介護保険・自立支援給付のどちらかを障害者本人が選択できるようにしてください。


介護保険利用料負担廃止署名
 異議なし! すばらしい!のひとことである。

 社会保障制度改革国民会議報告書が「一定の所得以上は利用者負担を引き上げるべき」などというたわごとをほざき、厚労省が250万円~300数十万円の収入があれば「2割負担」などという暴論を言っているとき、障害者に方たちの勇気あふれる、きわめてまっとうな訴えに耳を傾けるべきである。

 この間、御用学者の「有害文書」である社会保障制度改革国民会議報告書を読みすぎて、すっかり感覚がほけていた私であるが、岡山市の浅田さんの言葉と障全協の訴えを聞いて、はっと我に返った思いである。
 これこそが日本の社会保障=自助と自己責任でなく憲法24条に基づく生存権保障 の「良識」というものであろう。
 すべての介護関係者はこの「良識」に触れるべきである。そして、介護保険制度を乗り越える「勇気」を持つべきである。



  
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Category: 介護保険見直し
 
 
 
 
 
 
 
 

プロフィール

福祉・介護オンブズマン管理者 日下部雅喜(くさかべまさき)

Author:福祉・介護オンブズマン管理者 日下部雅喜(くさかべまさき)
 福祉・介護オンブズネットおおさか事務局長
 介護保険料に怒る一揆の会事務局長
 大阪社会保障推進協議会介護保険対策委員
 
 

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