2013/12/11 Wed
 堺市は、12月10日、介護保険被保険者証に使用する「印影」に「一部誤り」があったと発表した。
 堺市報道提供資料

 保険者「大阪府堺市」を示す「大阪府堺之印」でなく、「大阪府堺市之印」の印影を印刷した保険証を送ったので、再発行し、差し替えた との公表である。

 65歳になると自動的に住んでいる市町村の介護保険の「第1号被保険者」になり、介護保険証が送りつけられ、介護保険料が徴収される。しかし、この保険証は、「要介護認定」を受けない限り、給付を受けられない。「市之印」であろうが「市長之印」であろうが、赤い刻印は読み難くちょっと見ただけではほとんどわからない。堺市がいうように何の影響もないのである。

 実は、堺市は、この印影間違い問題は、今回が初めてでない。介護保険制度が始まった2000年に高齢者に送付した当時の介護保険被保険者証が、すべて「市之印」が印刷されていたのである。ほとんどの人が気付くことなく、問題にならなかったため、当時の堺市は、まったく知らぬ顔で通した。

 2000年10月に65歳になり、「介護保険料に異議あり!」と不服審査請求を行った福井宥さん(故人)にもこの「堺市長之印」が印刷された介護保険被保険者証が送りつけられていた。不服審査請求で福井さんはこのことを指摘し、保険者は「堺市」と印字されているにも関わらず印鑑が「堺市長之印」はおかしい、「保険証として無効ではないか」と追及していた。
 ところが、当時の堺市当局は、大阪府介護保険審査会に提出した弁明書で、「当然ながら有効である」と言い切り、この印影問題について、まったく不問にしたのである。

 不服審査請求をした福井さんは、「もともと介護保険証は、認定を受けないかぎり何の役にもたたないただの紙切れ。その紙きれの印鑑まで間違って送りつけ、高い介護保険料を徴収するとは何事か」と言っておられた。ただ、「『公印間違い』なんていう低次元の争いにせず、介護保険料の不当性・違憲性を正面から問うべき」と裁判をはじめたので、この「公印間違い」問題はこれ以上進展しなかった。

 当時、同じ堺市が発行している国民健康保険証にはきちんと「堺市之印」が印刷されているのに、介護保険証が「堺市長之印」となっていたことからも、明らかに「印刷発注ミス」であった。そして、翌年から発行する介護保険証には、「堺市之印」にこっそり変更したのである。マスコミはおろか高齢者にも何の説明も報告もなしである。

 それから13年。今回の事態は、堺市が、かつてやった同じ「公印間違い」問題を抜きに考えることはできない。しかし、堺市当局の報道提供資料では、担当職員の問題であるかのように扱っている。

 介護保険スタート時に10数万人の被保険者証に「市長之印」を印刷して送付しながら、知らん顔で、不服審査請求で指摘されても弁明書で「被保険者証として有効」と開き直り、差し替えもプレス公表もせずに済ませ、翌年度発行の被保険者証から「こっそり」と公印を変更した堺市当局。年月もすぎ、人も入れ替われば、「公印問題」など忘れ去られ、組織内に継承されないだろう。

 過去に堺市の行った誤りと不誠実な態度を不問にしたまま、現在の担当職員個人の問題とするような対応はいかがなものか。

 それよりも、こんな何も使えない「保険証」1枚送りつけるだけで、高齢者から年間6万4千円もの「介護保険料」を徴収する介護保険制度の方がはるかに問題である。
 「どっちみち何の役にも立たん保険証の印鑑間違いなんていう低次元のケンカしたらアカン。ワシは介護保険制度そのものの憲法違反を問題にする」と、決然と裁判闘争に立ち上がった、今は亡き福井さんの雄姿をしみじみと思い出す。 
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Category: 介護保険料
 
 
 
 
 
 
 
 

プロフィール

福祉・介護オンブズマン管理者 日下部雅喜(くさかべまさき)

Author:福祉・介護オンブズマン管理者 日下部雅喜(くさかべまさき)
 福祉・介護オンブズネットおおさか事務局長
 介護保険料に怒る一揆の会事務局長
 大阪社会保障推進協議会介護保険対策委員
 
 

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