2013/12/28 Sat
 年末ぎりぎりにまとまった厚生労働省の社会保障審議会介護保険部会の「介護保険見直しに関する意見」。
 私は、内容以前に、ぜったいに許せないことがある。それは、唯一の「当事者団体」である認知症の人と家族の会の代表(勝田委員)が、最後まで反対したにも関わらず、「予防給付の見直し全般については、概ね意見の一致を見た。」としたことである。「見直し意見」では、『懸念』『異論』があったと申し訳程度に書くだけで、会議のたびに具体的な問題点をあげて反対し続け、12月20日の会議でも、ハッキリ「最後まで反対せざるを得ません」と明言したこの意見をさしおいて「概ね意見の一致」とはどういう認識であろうか。
 

第54 社会保障審議会介護保険部会(12 月20 日)
公益社団法人認知症の人と家族の会勝田登志子

意見
 65 歳以上の高齢者の15%が認知症、13%が軽度認知障害とされ、全体で約900 万人にのぼ
る認知症の人がいます。
 8 月28 日の介護保険部会以来、公益社団法人認知症の人と家族の会は認知症の当事者団体と
して本人、介護家族の立場から発言してきました。また、6 月2 日の総会や10 月12 日の全国
支部代表者会議で当事者の声の反映を願うアピールを採択し、介護保険部会や関係団体に提出
してきました。
 しかし、認知症の人たちを支え、今後ますます増えると予測される認知症を重度化させない
ためには、「介護保険制度の見直しに関する意見(案)」はあまりにも給付抑制が優先されてい
ます。残念ながら今回のまとめには最後まで反対せざるを得ません。 12 月11 日にはイギリスでは世界初のG8 認知症サミットが開催され、併行してADI(国際
アルツハイマー病協会)会議が開催、参加各国の大臣あての宣言文(別紙)を採択しました。ア
ジア・太平洋会議も開催され二つの会議に「認知症の人と家族の会」も参加しました。認知症
について世界的な取り組みがはじまり、なかでも、超高齢化が進行する日本の動きが注目され、
日本への期待も大きなものがあります。
 日本では昨年来、国家戦略として「認知症施策5ヵ年計画」(オレンジプラン)が一般財源で
実施され、認知症カフェなどの取り組みが各地で成果を挙げているのは嬉しいことです。しか
し、「意見(案)」では「認知症施策の推進」の多くが地域支援事業に位置づけられています。
認知症施策は義務的経費として縮小しないとの説明もありますが、地域支援事業では「事業
費は前年度実績を上回らないことを原則とすべき、上限を超える場合の対応を検討するとして
も先ずは上限内に納めることを基本認識とすべき・・」とあります。
 予防給付の自然増予測は毎年5~6%にも関わらず、後期高齢者の伸び率3~4%に抑制する
わけですが、抑制できる費用は年間1,450 億円です。一方、復興特別法人税は13 年度末に前
倒し廃止が決まり、税額8,000 億円は一般財源から手当てされるそうです。「お金がない」の
ではなく、「税金の使い方」が問題なのではないでしょうか。
 今回の案でもっとも懸念しているのは、「予防給付のうち訪問介護と通所介護については、
地域支援事業の形式に見直す」ことです。これは、認知症ケアには「初期こそ適切なサービス
が必要」であるとするオレンジプランとの整合性がありません。
市町村が実施する地域支援事業では、「多様な主体による柔軟な取組により、効果的かつ効
率的にサービスを提供できる」とされていますが、これまでの予防給付の質を低下させること
なく効果的、効率的に提供できるという根拠はどこにあるのでしょうか、
 認知症の人にとって、初期対応こそ介護サービス事業者の専門職によるケアが必要と考えま
す。「NPO、民間企業、協同組合、ボランティア、社会福祉法人など」による「柔軟な取組」へ
の変更は、サービス提供事業者や介護スタッフが積み上げてきた経験にもとづくケアを初期化
するものです。また、地域支援事業への移行が利用控えを生じさせると、重度になってから発
見するケースが増え、かえって費用がふくらむことも懸念されます。
 また、地域支援事業に位置づける「介護予防・日常生活支援総合事業」では、「高齢者を事
業の担い手」とすることで高齢者に生き甲斐を提供することもできると期待しています。しか
し、高齢者の社会貢献活動と介護保険のサービス(給付)は別のものです。
別表に添付した「JR事故名古屋地裁判決に対する家族の会の見解」に示したように、介護
を担う家族に賠償責任が生じるという判決は、全国の介護家族に大きな衝撃を与えました。
 介護保険のサービスが広がるにつれて、私たちは高齢者虐待や介護心中、介護殺人といった
悲劇が各地に頻発していることも知らされるようになりました。予防給付の訪問介護と通所介
護の地域支援事業への移行が、在宅介護の現場に何をもたらすのか大きな懸念があります。
 また、「意見(案)」では、「世代内公平」という視点で一定以上の所得者は1 割負担の利用
料を2 割に引き上げる、施設サービスの補足給付の厳格化、特別養護老人ホームの利用は要介
護度3 以上に限定などが盛り込まれていますが、利用者や介護家族の実態調査が不十分ななか
での提案に不安が募ります。
「認知症の人と家族の会」は34 年間、「認知症があっても安心して暮らせる社会」を願い、
その実現を目指してきました。
 今回の「意見(案)」は「介護の社会化」を掲げて発足し、介護を必要とする本人と家族を
支えてきた介護保険制度を停滞させるものと考えます。「認知症があっても住み慣れた町で安
心して暮らせる」ための介護保険制度が継続されることを希望し、今回の案に反対します。


 介護保険部会の25人の委員のうち、要介護高齢者の「当事者団体」と言えるのは、他にはない。
 介護保険は何を目的とした制度か。「高齢者の尊厳の保持」「自立した日常生活を送るために必要な支援」である。そして「利用者本位」が原則であるはずである。 その利用者(当事者)がこれだけ「反対」をした見直し案を、他の保険者代表や経済界、事業者団体、学者などが賛同したことをもって「概ね意見の一致」というのである。

 nothing about us without us (私たち抜きに私たちのことを決めないで) 

 障害者が、自立支援法で1割の「応益負担」を押し付けられた時に、その廃止を求めてたたかった時の合言葉である。もともとは、国連の障害者権利条約採択時のスローガンであるが、政府によって無視され施策を決められた障害者の血の出るような叫びである。

 介護保険改悪が強行されようとしている今、そっくりそのまま、政府厚生労働省に行ってやりたい。

 「要介護者の、認知症の人の、そしてその家族の 声を抜きに 勝手に 要支援切り捨てや 2割負担導入を決めるな」 nothing about us without us (私たち抜きに私たちのことを決めないで)!


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Category: 介護保険見直し
 
 
 
 
 
 
 
 

プロフィール

福祉・介護オンブズマン管理者 日下部雅喜(くさかべまさき)

Author:福祉・介護オンブズマン管理者 日下部雅喜(くさかべまさき)
 福祉・介護オンブズネットおおさか事務局長
 介護保険料に怒る一揆の会事務局長
 大阪社会保障推進協議会介護保険対策委員
 
 

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