2014/04/28 Mon
 4月25日、大阪社保協が企画し、中央社保協も呼びかけて開かれた「介護保険見直し案に関する厚生労働省レクチャ―」は厚生労働省の老健局振興課、介護保険計画課、老健局高齢者支援課が事前の質問書に対する「回答」を行い、質疑応答を行った。大半が「法案成立以降に」「今後検討」「夏以降お示しする」といったものが多かったが、厚労省が見直しを決めた「根拠」や見直し後の運用についていくつか明らかになった。


その② 利用者負担引上げ 何の救済策も対策もなし

事前の質問
 2割負担とする基準は「合計所得160万円以上」(同資料91頁)とし、毎年6月に行う保険料段階区分と同時期に、前年所得により自動的に負担区分割合(1割又は2割)をシステムにより判定」「毎年8月から7月まで有効な書面を発行する」(同資料102頁)としているが
①合計所得は総所得と異なり繰越控除・特別控除の適用前の金額であり、居住用財産を買い替えた翌年などは急上昇するという不利益はどうするのか


厚労省老健局介護保険計画課の回答は
回答)合計所得を用いることで、例えば前年に家を売ってそれを使ってしまっても合計所得額が大きくなるという問題が起きることはは認識している。ただ、現在、保険料でも合計所得金額を用いており、総所得や旧ただし書き所得などを用いると、再計算が必要になり、保険者の事務負担が増大してしまう。合計所得によって、そうした影響を受ける方はごくわずかだと考えており、合計所得金額を用いると判断した。
 
 これは、介護保険料段階決定と同じ理屈。高齢者の負担よりも、市町村(保険者)の事務負担に配慮するという発想である。役所が楽をしたいがために、少数の人々が不利益をこうむっても構わないというサイテーな発想である。

さらに事前質問では
②前年所得より当年度の所得が著しく減少している場合などの軽減措置は予定しているか
③夫婦世帯で、一人が所得160万円以上で、もう一人が無収入である場合や夫婦二人とも多額の介護費用等が発生している人などに対する救済措置は予定しているのか


厚労省回答
②③
回答)具体的なことは法案成立後 政令事項を検討する過程で検討することとなる。仮に前年度より所得が減少している人を軽減する基準を市町村判断とすると市町村によって差がでてしまい、不公平な利用者負担となってしまう。また、様々な個別の要素を勘案すると市町村の事務負担が増えるので、全国一律基準が適当と考えている。
 
 
 何をこの連中は言っているのか。

質疑応答でさらに突っ込んでみた
※質問)65歳以上でも、働いていて脳梗塞などで倒れて要介護4とか5になる人もいる。働いていたので前年所得が大きくても、現在は収入ゼロ、こんな場合でも前年所得が160万円以上なので2割負担になる。収入減少の場合の減額などは制度化しないのか
回答)現行でも利用者負担減免がある。災害・失業などで著しく収入が減った場合の減免があるので特段の事情がある場合は、適用されるものと考えている。


 法定の利用者負担減免など、実際は災害時くらいしか運用されていない。
 国が新たに利用者負担を 所得により 1割 と 2割 の2段階に分けるなら、「前年合計所得」方式による不利益を是正するくらいの規定は考えるべきであろう。それを、制度開始時に申し訳程度に規定した「利用者負担減免」があるからそれでいい、とする。おさぼり役人の典型ではないか。

さらに質問
※質問)現行の減免は特別な事情がある場合だが、負担割合の減免ではない。規定は整備するのか。

回答)2割を1割にするという規定はおかないが、現段階でも減免規定があるので、特別な事情があれば、市町村が負担能力などを見て対応をするというのは可能と思う。

国は何にもしないが、市町村が対応するから行けるだろう、というお気楽答弁。その市町村も多くが何もしなかったのがこの間の利用者負担をめぐる経過ではないか!
 
さらに質問した
※質問)前年所得があっても、今年は国民年金だけになった場合などの扱いについては、対象とするのか。これまでの減免規定は、厚生年金の収入がある場合は減免の対象とは認めていないが。
回答)意見として承る。検討中なのでその中で検討することになる。
 ご意見として聞くということか。社交辞令でなく、ホントに検討してほしいものである。

さらに、実務運用について質問。同じ被保険者でも「1割」の人と「2割」の人がでてくるので、それは全員の介護保険被保険者証に記載するのか。別の「自己負担割合証明証」を毎年配るのか、という少し細かい質問 
※質問)負担割合を証する書面はどのようなものか。被保険者証に記載も可能とあるが、これも市町村が任意で決めるのか

厚労省の回答
回答)事務負担とか費用対効果を考慮すると被保険者証と別な書類に記載する方向で検討している。全員に発行するかどうかについては、実際必要とされるのは介護サービスを利用する人になるので、その人々に発行して行けば足りるのではないかと考えている。
 ここでも、市町村の事務負担ばかり。この方法だと、高い介護保険料を払っている高齢者は、要介護認定を受けて利用してみないと自分は1割負担なのか、2割負担なのか、分からないことになる。市町村はシステム上、全被保険者の介護保険料を決定すると同時に自動で、1割負担者と2割負担者の区分ができるのに、利用者にしか「負担証」を発行しなくてもよい、という立場である。
 だいたい、「保険」に入って、保険料を徴収されているのに、いざ、その人が要介護状態になったとき、1割負担か2割負担かも分からない状態でもよい、とする 発想が間違っている。

さらに、今回の2割負担導入は、65歳以上だけに限定されている問題。新たな65歳問題について事前質問
(4)この2割負担への変更は、第1号被保険者のみ(改正法案第49条の2ほか)とされ、「高齢者世代内の負担の公平化を図る」(同資料91頁)とされているが
 ○65歳年齢到達により、介護保険料が急上昇した上に、利用者負担が倍加するという二重の負担増について納得が得られると考えるか


厚労省回答は
回答)今回の改正趣旨は高齢者の世代内の負担の公平化を図ることになるので、2号被保険者については、2割負担を導入することは理解得られないと考えている。 また、2号被保険者は子にかかる支出があったり、就労していた場合それにかかる所得がある場合等があり、1号被保険者との違いがあるので、 整合がつくのではないかと考えている。

まさに勝手な理屈である。

以下質問と回答

(5)一定以上所得者の高額介護サービス費の限度額見直しについて
 ○対象となる利用者の人数及び負担増の見込みを具体的に明らかにされたい

回答) 高額介護サービス費の負担上限については、要介護状態が長期になることから、基本的には据え置くが、とくに所得が高い人について 負担上限額を見直すことは公平の観点から必要と考えている。現行の高額医療介護合算制度での所得区分と同等の条件をつけて医療保険と同じ上限額に見直すことにした。
対象人数は、現役並み所得者は、後期高齢者 7%程度、第1号被保険者の7%とした場合は210万人くらい。 受給者数に換算して実際に月額上限額444000円以上使う人はごくごくわずかだと考えている。


(6)利用者負担引上げで影響を受ける利用者数(居宅、施設別及び要介護度別)と財政影響額について明らかにされたい
回答)要介護者の所得分布は全高齢者の所得分布と比較しては低いので 全被保険者の上位20%の基準を設定したとしても、在宅サービス利用者の15% 特養で5%、老健で12%と推定される。平成24年度受給者は居宅サービスで338万人だったので、15%として、50.7万人。 施設は特養46.5万人の5%、老健は33.6万人の7%となる。
 財政影響金額については、第6期で推計すると、給付費で740億円くらい。 保険料で320億円、公費で420億円、1号保険料一人当たり影響額は39円程度となる。


(7)自治体の判断で、利用者負担を据え置く、または 引上げ対象の所得金額を変更するなどの独自の利用者負担軽減措置は可能と考えるが、厚生労働省の見解について明らかにされたい
回答) 利用者負担の引き上げは「できる規定」でないので 保険者独自では据え置くことはできない。また、2割負担となる者を所得などを勘案せず1割にするという独自減免は厚労省としては不適切と考えている。ただ、利用者負担の減免を地域の実情に応じてサービス負担を軽減していることは知っているのでこうしたものまで厚労省として禁じるものではない。
 つごうのよい時は「市町村任せ」だが、こういう問題になると、市町村独自軽減は不適切。じつにご都合主義である。

(つづく)



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Category: 介護保険見直し
 
 
 
 
 
 
 
 

プロフィール

福祉・介護オンブズマン管理者 日下部雅喜(くさかべまさき)

Author:福祉・介護オンブズマン管理者 日下部雅喜(くさかべまさき)
 福祉・介護オンブズネットおおさか事務局長
 介護保険料に怒る一揆の会事務局長
 大阪社会保障推進協議会介護保険対策委員
 
 

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