2014/05/16 Fri
 認知症で身元不明になっていた女性の7年間の生活費など1000万円を、再開した家族に請求するかどうかの問題で、館林市は「請求しない」と判断したようです。全国からの抗議と問合せが相次いでいたこともあり、「特例」、「人道的措置」としての判断。
 まずは、最悪の事態は避けられたが、認知症高齢者の徘徊、行方不明問題では、「発見」「見守り」と同時に、こうした「事後」の負担が本人・家族に負わされることのないような公的仕組みづくりが求められています。
 
 5月14日には、認知症の人と家族の会 が、今年4月24日の、JRの認知症の人の事故に関する名古屋高裁の判決に対して、見解を発表されました。
 鉄道事故の損害賠償を死亡した認知症高齢者の家族に求めた一審判決から、賠償額が減額されたとは言え家族の責任を問うたことには変わりはなく、「再び下された非情な判決は時代錯誤」と批判しています。「家族の会」としては最高裁においてこれまでの判決が取り消されることを期待するとしています。同時に、認知症の人の徘徊は家族が完全に防ぎきれるものではなく、また、鉄道会社においても軌道内への侵入を100%防ぎきれないと思われるので、このことによる損害の補填については社会的な救済制度が必要と、訴えています。
 認知症列車事故名古屋高裁判決に対する見解

 認知症高齢者の「身元不明」期間の保護に要する費用についても、同様の公的な救済制度が求められていると思います。 

毎日新聞


認知症:女性7年間不明…館林市、生活費請求せず

毎日新聞 2014年05月16日 21時06分

 東京都台東区の認知症の女性(67)が2007年に群馬県館林市内で保護され、今月12日まで身元不明のまま民間介護施設に入所していた問題で、館林市は16日、これまでかかった7年間の生活費を女性側に請求しない方針を決めた。市は「認知症に起因し、社会全体で考えるべき問題。人道的見地から、請求すべきでない」と判断し、特例措置を示した。【尾崎修二】

 ◇1000万円「人道的配慮」

 市や入居していた介護施設などによると、女性は身元不明状態だったため、仮の名前で住民票が作成された。収入や資産がないものとして、生活費や介護費用は生活保護で賄われてきた。7年間の費用総額は1000万円以上とみられる。

 生活保護受給者に無申告の資産や年金があることが判明した場合、その分の保護費は返還を請求されるのが一般的。館林市は「認知症の人が増え続け、今回のことはこれからも起こりうる深刻な事例」として慎重に対応を検討していた。

 市は、7年前に女性を保護した経緯について、「人命を守るのは当然の責務。人道的見地から施設入所措置をした」と総括したうえで、かかった経費を請求しない方針を決めた。全国的にも前例がないため、今後、女性の資力などを確認し、国や県と協議したうえで正式に決定する。

 市の担当者は「資力が判明した場合に返還を求めるのは本来の形ではあるが、今回は別の話。ましてご家族は7年ぶりに再会したばかり」と話した。

 ◇難しい判断、「特例」強調

 高齢化社会を迎える中、群馬県館林市のようなケースは今後増えることが予想される。だが、保護中の生活費が請求されないとなれば、いなくなった認知症患者を家族が熱心に捜さないというような事態も懸念され、自治体は難しい判断を迫られそうだ。

 市は、生活費を請求しない判断について、人道的見地からの「特例」を強調する。女性は本名が言えず、群馬県警が「迷い人」として全国の警察に手配する際、下着に書かれていた名前を間違って記入した。このため、家族から家出人届があったにもかかわらず、身元の判明が遅れたという事情もあった。

 さらに、女性の家族が生活費を請求される可能性が報道されると、市には苦情や問い合わせが相次ぎ、市の業務に支障が出た。「火消し」のため、国や県との調整が終わる前に、方針表明を急いだ面もあるという。




【参考】 公益社団法人認知症の人と家族の会の認知症列車事故 名古屋高裁判決に対する見解

再び下された非情な判決は時代錯誤ー
家族を責めず社会的救済制度をこそ提起すべき




認知症列車事故 名古屋高裁判決に対する見解
 2014年5月14日公益社団法人認知症の人と家族の会
 4月24日、名古屋高裁は、昨夏の同地裁一審判決に続き、再び介護家族に責任があるとする判決を下しました。一審判決と比べて、長男が外されて妻だけの責任となり、賠償額が半分の359万円になったとしても、「徘徊を防がずJRに損害を与えたのは家族の責任」と断じた一審判決と、本質はなんら変わっていません。
 家族にとっては、裁判所が認知症の人と介護の実態に目をつぶり、二度にわたって家族を責めたと感じる非情な判決です。
 「家族の会」は、昨年12月に、「認知症の人の徘徊は防ぎきれない家族に責任を押し付けた一審判決は取り消すべき」とする見解(別紙参考)を発表し、それは遺族側の弁護士を通じて裁判所に書証提出もされていました。また、日本神経学会、神経治療学会、認知症学会、老年医学会、老年精神医学会が連名で「地裁の判決は介護の現状にそぐわない内容」と批判する声明を出していました。さらに一審判決を報じた報道内容も、そこに出てくる識者の意見も、「家族に酷な判決」という論調がほとんどでした。
 また、今年3月、厚労省は、特別養護老人ホームの入所待機者数をそれまでの40万人から52万人に修正しました。そのうえ、入所は原則要介護3以上にされようとしています。在宅介護の困難さはいっそう大きくなっているのです。
このような状況下での今回の高裁判決は一審に続く時代錯誤と言わなければなりません。高裁は、家族を責めるのではなく、一審判決を破棄し、このような場合の社会的救済制度の検討をこそ提起するべきであったのです。
 認知症の人の徘徊による事故とそこから発生する第三者の損害の救済について、「家族の会」は次のように考え、社会としての取り組みが進むことをあらためて強く求めるものです。「認知症の人の徘徊を家族が防ぎきれないのと同じように、鉄道会社も認知症の人が軌道内に立ち入ることは完全には防ぎきれない。事故は起こりうるし、誰もが、またどの鉄道会社もが当事者になる可能性がある。事故発生時の損害については、当事者どうしの責任にするのでなく、社会的に救済する制度を設けるべきである。その制度を設けるために、国が主導し早急に検討を始めるべきである。」
 そのこととともに、認知症の人の徘徊事故を減らすためには、鉄道会社を含む関係者と地域における認知症への理解や見守り活動を進める取組みが重要であり、安心して介護が出来る介護保険制度の充実と使いやすさを進めることもまた大切です。「家族の会」はそれらの課題に今後も積極的に取組んでいきます。
 
追記:この見解の発表直前に、JR東海は判決を不服として上告すると発表しました。認知症の人の徘徊による事故について社会的に対策を検討するべきときであるのに、自社の損害額のみに拘泥する態度は社会的責任を自覚していないと言わざるをえません。
以 上

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Category: 介護保険見直し
 
 
 
 
 
 
 
 

プロフィール

福祉・介護オンブズマン管理者 日下部雅喜(くさかべまさき)

Author:福祉・介護オンブズマン管理者 日下部雅喜(くさかべまさき)
 福祉・介護オンブズネットおおさか事務局長
 介護保険料に怒る一揆の会事務局長
 大阪社会保障推進協議会介護保険対策委員
 
 

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