2014/08/03 Sun
要支援者切捨てと「自助・互助」強制の仕組み
~「介護予防・日常生活支援総合事業ガイドライン案」について~

その① 新総合事業の制度的枠組み・構成



はじめに

厚労省は、7月28日全国介護担当課長会議を開催し、6月に成立した「医療介護総合確保推進法」による介護保険改悪の具体的内容とその実施方法などについて、提示した。
その中で示された「介護予防・日常生活支援総合事業ガイドライン案」は、新しい総合事業について、①介護保険法に基づく厚生労働大臣が定める指針(大臣告示)と②その具体的取扱方針(通知)を含め、提示したものである。「ガイドライン案」は現時点ではただの「会議資料」であり、確定されたものではない。今後告示に向けてパブリックコメントもあり、関係者が意見をのべ、修正を求めていく機会はある。しかも、この大臣告示は、「基準」でなく「指針」であり、市町村に強制力はない。
しかし、全国の大半の市町村は、「市町村の裁量」とされた新総合事業について、自らどうしていいかわからず「ガイドライン待ち」の状態であった。このため、今後、この「ガイドライン案」を金科玉条のごとく扱い、無批判な追随が横行することになることが想定される。
 ガイドライン案で改めて示された、要支援者の保険外しと「自助・互助」強制の企みについて明らかにするとともに、これに対するたたかいの課題と方向性について提起する。

1 新総合事業の制度的枠組み・構成
(1)「多様な方法」によるサービス事業の実施
 改定後の介護保険法では、地域支援事業の中に「新しい総合事業(介護予防日常生活支援総合事業)」が設けられ、その中に「介護予防・生活支援サービス事業」(以下「サービス事業」がつくられ、「訪問型サービス」「通所型サービス」「生活支援サービス(配食等)」、「介護予防支援事業(ケアマネジメント)」がつくられた。これらのサービス事業が保険給付を外される要支援者のホームヘルプ(介護予防訪問介護)・デイサービス(介護予防通所介護)の受け皿となる。
改定介護保険では、サービス事業の実施方法について、市町村による直接実施や委託方式に加えて、「指定事業者制度」も併用し、これまでの保険給付と似た仕組みを作った。一方で、住民主体のサービスとして、市町村が訪問型サービス、通所型サービス及び生活支援サービスを提供する者に対して補助(助成)する方法も可能とした。しかも、現行の指定事業者は移行時に一切の手続きなしに「みなし指定」扱いになり、自動的に総合事業サービス事業者に組み込まれる。まさに、現行の指定事業者から住民ボランティアグループまで一緒にして「サービス事業」としてくくってしまったのが総合事業である。まさにサービスの「多様化」である。
(2)「現行基準サービス」プラス「サービスA・B・C」の4タイプ導入で、ホームヘルプ・デイサービスは混乱、劣悪化
 ガイドライン案では、予防給付の訪問介護(ホームヘルプサービス)と通所介護(デイサービス)の移行先となる「訪問型サービス」「通所型サービス」について4タイプに分け、その提供主体と実施方法を示した。
 ①現行の訪問介護等に相当するサービス 【指定事業者】
 ②緩和した基準(訪問型・通所型サービスA) 【指定事業者または委託】
 ③ボランティアなど(訪問型・通所型サービスB) 【補助】
 ④保健師などによる従来の2次予防事業相当(サービスC)【直営、委託、補助】
 第1の問題は、現行の予防給付が、国の定める全国一律の人員・設備・運営基準であるのに対し、これらサービスは、「市町村が基準を定める」とあり、ガイドライン案の内容も「参考例」でしかないことである。法令により遵守すべき事項は「従事者の清潔保持・健康管理」「秘密保持」「事故発生時の対応」「廃止・休止の届出等」のみである。まさに、サービスの基準は市町村しだいでどうにでもされる。
 第2の問題は、「緩和した基準によるサービス」(サービスA)が、専門性を問わない「無資格者」を大量に雇用(登録)することを奨励していることである。「訪問サービス」では、「一定の研修」さえ受ければ、ヘルパー資格なしで訪問サービスができ、「訪問事業責任者」も無資格者でも可である。「通所サービスA」にいたっては、看護職員も生活相談員も機能訓練指導員もなしで、単に「従事者」(資格不問)が「利用者15人に1人」とされているのみである。この「サービスA」は、ホームヘルプ・デイサービスに「無基準」・「無資格者」によるサービスを混入することによって、専門性を薄め、掘り崩していくことになる。
 第3に、「サービスB」は、「有償・無償のボランティア等による住民主体の支援」とされている。実施方法は、NPO等住民主体の支援実施者に対する補助(助成)を市町村が出す方式である。ガイドライン案では、人員・設備について一切の基準を示しておらず、わずかに「清潔保持」「秘密保持」「事故対応」などを運営基準に書いているだけである。しかし、その主体が任意の「ボランティアグループ」ならば、そのような基準が厳守されるかどうかも疑問である。このような「善意」「自発性」に基づく行為を、法令に基づく「サービス事業」に位置づけること自体に大きな無理がある。
第4に、現行の指定事業者が、介護給付のホームヘルプ・デイサービスを実施しながら、「一体的」に総合事業の「サービスA」(基準緩和・無資格)と「サービスB」(ボランティア)も実施できることである。その際、介護給付サービスの基準も大幅に緩和し、管理者が兼務することも可、サービス提供責任者の必要数算定から要支援者は除外して計算するなど、既存事業者を参入しやすくしている。また、「サービスB」(ボランティア)についても、管理者が兼務でき、職員についても「最低基準を下回らない範囲で活動に関与することは可能」とされている。介護保険のホームヘルプ・デイサービスの指定事業者を、安上がりの「無資格者サービス」の大量導入に引きずり込み、さらに、市町村の育成すべき「住民ボランティア」の主体にまで道を開いている。
 総合事業の導入は、ホームヘルプ・デイサービス全体に、混乱を与え、その専門性と社会的評価を低め、サービスの質を低下させる可能性がある。また、無資格者や住民ボランティアと同列の事業従事者にされたヘルパーなど介護労働者の賃金・労働条件には、「引下げ」の吸引力となって、これをいっそう低下・劣悪化する役割を果たすことになる。検討中の2015年度介護報酬改定で、訪問介護(とくに生活援助)と通所介護(とくに機能訓練以外のサービス)がどのように扱われるか、不当な切り下げを許さない取組みも併せて必要である。
(3)利用者の希望はどうなるか 
 現行相当サービスから、住民主体のボランティアまで、「多様化」された訪問型・通所型サービスだが、利用者は希望に基づく「選択」が可能か。結論は否ある。ガイドライン案では、新しく事業の対象となる要支援者等について「自らの能力を最大限活用しつつ、住民主体による支援等の多様なサービスの利用を促す」と多様なサービスへと強引に移行させることを強調している。そして「現行の介護予防訪問介護相当のサービス」については、「認知機能の低下等により日常生活に支障があるような症状や行動を伴うケース等、訪問介護員による専門的なサービスが必要と認められる場合に利用することが想定される」と、ごく一部の利用しか認めず、さらに、「現行相当のサービス」だけでなく「サービスA」(基準緩和サービス)を利用する場合まで、「一定期間後のモニタリングに基づき、可能な限り住民主体の支援に移行していくことを検討することが重要」として、片っぱしから「サービスB」(住民ボランティア)に移行することを推奨している。
 利用者の「希望」はないがしろにされ、可能な限り住民主体のボランティアなど安上がりサービスに移されていくことが示されているのである。
(つづく)
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Category: 介護保険見直し
 
 
 
 
 
 
 
 

プロフィール

福祉・介護オンブズマン管理者 日下部雅喜(くさかべまさき)

Author:福祉・介護オンブズマン管理者 日下部雅喜(くさかべまさき)
 福祉・介護オンブズネットおおさか事務局長
 介護保険料に怒る一揆の会事務局長
 大阪社会保障推進協議会介護保険対策委員
 
 

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