2015/12/16 Wed
介護保険の申請にマイナンバー(個人番号)が必要と、さんざん言いながら、 12月15日付け厚労省事務連絡で、①本人がわからない場合は介護保険申請書にマイナンバー(個人番号)を書かなくてもよい ②個人番号は市町村職員が住民基本台帳等で検索して書き込んでよい ③認知症の人などは個人番号を記載せず受け付ける ことが可能となった。
マイナンバー制度による介護現場の混乱の前に厚生労働省が一定の「柔軟性」を示した格好だ。しかし、もともと、個人番号を付けるのは住民票のある市町村長であり、住民基本台帳にはすでに個人番号は書かれており、介護保険担当課の職員はそれを見ることができるわけだから、申請する側が手間をかけて申請書に個人番号を書く必要などさらさらないはずである。

さらに自治体レベルで柔軟な対応をさせることで、マイナンバー制度を空洞化させていくことができないだろうか。


いくつかのポイントを考えてみた。
【申請書を出す側】
①本人が個人番号通知カードを受け取っていない、またはなくしても、不都合なことはない。「わからなければ書かなくてもよい」からである。むしろ、通知カードなど受け取っていなければわからないままである。ましてや写真付き個人番号カードなど、絶対に交付申請しないことである。
②委任による申請や申請代行の場合でも、無理に個人番号を書かず、「本人がわからないので書けない」と窓口で言って受けと取らせることである。
③認知症など意思表示能力の低下している人の申請書は個人番号を書かずに受け取ることとなったので、これはその扱いを窓口で徹底させる。

【市町村側】
申請書を受け取り事務処理を行う市町村側のポイントは
①申請受付の際に一律には個人番号記載を求めない。書いてなくても受つけるというスタンスに立つ
②当面まったく活用しないマイナンバー制度なので個人番号が未記載でも事務をすすめる
③個人番号未記載ならば特定個人情報ではないで、受け付けの際の「厳格な本人確認」も、保管の際の「安全管理措置」も対象とならず従来の申請書の扱いで可となる。記載せずにいたほうが事務負担がかからない
④情報ネットワークが稼働した後でもマイナンバー制度で個人番号検索を行うのはほんのわずかなので、個人番号記載は「本当に必要な人」だけの扱いにできないか検討する

法令上、かなりの規制が伴うが、なんとか市町村の現場から、柔軟・臨機応変策を積み重ねて、マイナンバー制度の弊害を少しでも減らし、制度そのものを掘り崩していくことにチャレンジしてみてはどうか。

【解説】
厚生労働省令の規定により、形式的には2016年1月からは介護保険の各種申請書等には今番号の記載が必要になった。申請書に個人番号が記載されれば、「特定個人情報」となり、番号法等では、厳格な「本人確認措置」が必須になり、①個人番号の正確性(個人番号記載の通知カード等との突合確認 ②身元確認(面前にいる人が本人であることを免許証等で確認)が求められることになる。これだけでも、申請する住民も受け付ける市町村担当課職員は新たな手間が発生する。市町村ではその申請書の保管・提供・廃棄に至るすべての過程でガイドラインによる安全管理措置が求められ事務負担が続くことになる。
しかし、申請書に個人番号が記載されたところで、それによるメリットは介護保険ではほとんどないのが実態である。また、2016年1月からマイナンバー制度は始まるが、情報連携できるネットワークシステムが稼働するのは2017年7月以降であり、それまでは、個人番号の利活用は一切できない。また、市町村では、住民基本台帳等で個人番号の確認が可能であり、申請書に記載が無くても何ら困ることはない。
2015年12月15日の厚生労働省事務連絡では、原則として個人番号の記載を求めるとしながら、「個人番号がわからず申請書等への個人番号の記載が難しい場合等には、市町村の住民基本台帳又は住民基本台帳ネットワーク等を用いて当該申請者の個人番号を検索し、職員が記載して差し支えない」とした。また、認知症等の人の場合は、「意思表示能力が著しく低下しており、代理権の授与が困難である場合等には、申請書に個人番号を記載せずに受け付けること」と一定の「配慮」を示した。

こうした「配慮」も活用しながら、市町村レベルでは、さらに以下のような対応をさせることを提言する。
①申請書等の受付の際には柔軟な対応を行い、番号記入、番号確認、本人確認を一律にしないようにする。
②受付後も申請書類のマイナンバー確認と記載事務も一律に行わず、記載していなくても通常の事務手続きを行うようにする。介護保険事務にとって当面マイナンバーのメリットがゼロで、無理に個人番号記載を求めても負担とトラブルしかならないことを考慮すべきである。また、個人番号の記載がなければ、申請受付の際の一連の確認措置も不要であり、受け付けた書類も「特定個人情報」ではないので通常の個人情報として管理ができ、事務負担は増えない。
③情報連携が始まる2017年7月以降でも、必要なもの(転入者・2号被保険者等でマイナンバー制度の情報連携の対象となる申請・届出)に限定して番号記載を求める扱いとする。これは市町村の介護保険事務の中で情報連携によるメリットがあるものだけマイナンバー制度を活用するという効率的対応である。

参考 厚生労働省12・15事務連絡(抜粋)
6.個人番号導入に伴う配慮について
(1)申請書受付時の配慮
介護保険給付の申請書等に個人番号を記載することは、法令に基づく義務であるため、基本的には、申請等を行う者(以下「申請者等」という。)に申請書等への個人番号の記載を求めることとなるが、申請者等が高齢であることにも鑑み、申請受付時等の対応については、以下のとおりとすること。
○ 各種申請については、原則として個人番号の記載を求めることとなるが、その際、申請者が自身の個人番号がわからず申請書等への個人番号の記載が難しい場合等には、市町村の住民基本台帳又は住民基本台帳ネットワーク等を用いて当該申請者の個人番号を検索し、職員が記載して差し支えないこと。
○ 同一の給付の2回目以降の申請等の際には、保険者において初回の申請により当該申請者の個人番号を既に保有していると確認できる場合には、申請窓口において個人番号の記載を求めないこととしても差し支えないこと。
○ 高額介護サービス費の支給等について、申請書の記載内容の工夫などにより実質的な申請は初回時のみで足りるようにしている場合において、番号制度の施行以前に既に初回時の申請が行われている者については、改めて番号の記載された申請書の提出を求める必要はないこと。
○ 住民基本台帳法第22 条から第24 条、第25 条、第30 条の46 又は第30 条の47 の規定による届出を介護保険法第12 条第1項の規定による届出があったものとみなすときは、市町村の住民基本台帳又は住民基本台帳ネットワークを用いて当該申請者の個人番号を検索し、職員が記載して差し支えないこと。
(2)本人確認の措置における配慮
個人番号を利用する事務において、本人から個人番号の提供を受けるときは、個人番号が正しいこと(番号確認)や、現に手続きを行っている者が当該個人番号の正しい持ち主であることの確認(身元確認)を行わなければならない。
① 本人による申請の場合
本人が自ら申請を行う場合、保険者等で申請書を受け付ける際等に、(ア)本人の番号、(イ)本人の身元の2つを確認する必要がある。それぞれの場面で必要となる書類は下記のとおりである。(別添1参照)
(ア) 番号確認
本人の個人番号カード、本人の通知カード、本人の個人番号が記載された住民票の写し等によって行われる。これらが困難な場合は、保険者等において、地方公共団体情報システム機構(住民基本台帳ネットワーク)への確認や、住民基本台帳の確認等によって番号確認をすることが可能である。
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(イ) 身元確認
本人の身元確認は、
(ⅰ)個人番号カード
(ⅱ)運転免許証 等
(ⅲ)官公署から発行・発給された書類その他これに類する書類であって、写真の表示等の措置が施され、個人番号利用事務実施者が適当と認めるもの((a)氏名、(b)生年月日又は住所が記載されているもの)などによって確認することとなる。これらによる確認が困難な場合には、公的医療保険の被保険者証、年金手帳など所定の書類を2つ以上提出させることにより確認する。(介護保険被保険者証と負担割合証等)
② 代理人による申請の場合
代理人が申請を行う場合、保険者等で申請書を受け付ける際等に、(ア)代理権、(イ)代理人の身元、(ウ)本人の番号の3つを確認する必要がある。
それぞれの場面で必要となる書類は下記のとおりである。(別添1参照)
(ア) 代理権の確認
代理権の確認は、法定代理人の場合は、戸籍謄本その他その資格を証明する書類、任意代理人の場合は委任状によって行われるが、これらが困難な場合は、本人の介護保険被保険者証など官公署等から本人に対し一に限り発行・発給された書類その他の保険者が適当と認める書類で確認することとなる。
(イ) 代理人の身元確認
代理人の身元確認は、
(ⅰ)代理人の個人番号カード、運転免許証 等
(ⅱ)官公署から発行・発給された書類その他これに類する書類であって、写真の表示等の措置が施され、保険者が適当と認めるもの((a)氏名、(b)生年月日又は住所が記載されているもの)(居宅介護支援専門員証等)などによって確認することとなる。これらによる確認が困難な場合には、公的医療保険の被保険者証、年金手帳など所定の書類を2つ以上提出させることにより確認する。
(ウ) 本人の番号確認
本人の番号確認は、原則として、本人の個人番号カード(又は写し)、本人の通知カード(又は写し)、本人の個人番号が記載された住民票の写し等によって行われるが、これが困難な場合は、保険者等において、地方公共団体情報システム機構(住民基本台帳ネットワーク)への確認や、住民基本台帳の確認等によって確認することが可能である。
③ ①②以外の場合
ア 代理権の授与が困難な被保険者に係る申請を行う場合
本人が認知症等で意思表示能力が著しく低下しており、代理権の授与が困難である場合等には、申請書に個人番号を記載せずに受け付けること。
イ 代理権のない使者による申請の場合
本人の代わりに使者が申請書の提出を行っただけに過ぎない場合は、個人番号が使者に見えないよう、申請書を封筒に入れて提出する等の措置を行わせること。また、この場合、使者が利用者本人に代わって申請書等に個人番号を記載することはできないこと。
また、提出を受け付ける際は、本人から郵送により個人番号の提供を受ける場合と同様の本人確認措置を行うこと。
(3)留意事項
郵送による提出の場合は、本人確認のための書類は、写しにより申請を受け付けて差し支えないこと。


【参考】
マイナンバー 内閣府 内閣官房 地方公共団体向けFAQコーナー
Q1-8 窓口で申請者が個人番号の記載を拒否している場合、どうすれば良いですか。本人の同意なしに住基端末から個人番号を取得しても良いですか?
A1-8 申請書などに個人番号を記載することが各制度における法的な義務であることを説明し、記載していただくようにしてください。それでも記載を拒否された場合は、番号法第14条第2項に基づき地方公共団体情報システム機構から個人番号を含む機構保存本人確認情報の提供を受けることはできますが、あくまで、住民基本台帳法別表に規定する事務として住基端末を利用する必要があります。なお、申請書などに個人番号が記載されてない時点では、個人番号の提供を受ける場合に該当しないため、番号法第16条の本人確認措置の義務は生じないこととなります。(2014年7月更新)
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Category: 時局争論
 
 
 
 
 
 
 
 

プロフィール

福祉・介護オンブズマン管理者 日下部雅喜(くさかべまさき)

Author:福祉・介護オンブズマン管理者 日下部雅喜(くさかべまさき)
 福祉・介護オンブズネットおおさか事務局長
 介護保険料に怒る一揆の会事務局長
 大阪社会保障推進協議会介護保険対策委員
 
 

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