2018/04/12 Thu
中央社保協が、保険者機能強化推進交付金と評価指標問題で厚生労働省レクチャー
明らかになった「交付金」「評価指標」の危険な狙い
4月11日、中央社保協は、介護保険改定で今年度から制度化された「保険者機能強化推進交付金」(2018年度200億円)とその配分を決める「評価指標」について、厚生労働省からレクチャーを受けました。
厚生労働省からは、老健局介護保険計画課の芝課長補佐ら3人が説明され、中央社保協からは10人が参加。
「ソフト」で巧妙な説明に終始した厚労省でしたが、その内容を通じて保険者機能強化推進交付金の危険な狙いと問題点が明らかになりました。
最初に概要説明として、今年2月28日に出された事務連絡をもとに次のような説明を行いました。

【厚労省説明の概要】
制度趣旨
平成30年度から保険者機能強化推進交付金が制度化され200億円の交付金が新設された。これは、自立支援・重度化防止という介護保険の理念を保険者がしっかり実施すること推進していこうという趣旨での介護保険法改正により制度化されたものである。
保険者のインセンティブのために交付金で、保険者に協力していただきながらPDCAを回していただき、しっかり取り組めた市町村には交付金を多くし、やっていない市町村には低めに交付する。
交付金は市町村分と都道府県分とがあるが、都道府県には市町村への広域的指導をお願いするために都道府県も10億円程度の交付の対象とした。
スケジュール
市町村に対し、近いうちに指標に対してどのくらいやっているかという回答を依頼する。回答締め切りは10月までなので、この指標を見て、今からやって間に合うものはトライしていただきたい。去年の実績を問うものも数ヶ所あるがそれ以外はやっているかどうかなので、やっていただきたい。11月には評価結果、内示額を提示する。
評価指標の内容
市町村指標61項目は、3つのカテゴリーに分かれている。
「Ⅰ PDCAサイクルの活用による保険者機能の強化に向けた体制等の構築」8項目(82点)は、PDCAサイクルを回す市町村の体制がどうなっているのかを評価する項目
「Ⅱ 自立支援、重度化防止等に資する施策の推進」46項目(460点)は実際にどんなことをどれだけやっているかというもので、重度化防止自立支援に実際に何をしているかを問う。
「Ⅲ 介護保険運営の安定化に資する施策の推進」7項目(70点)は介護保険の安定化に資する施策の推進 給付の適正化、人材確保等を問うもの。
【厚生労働省との主な質疑応答】
保険者機能強化推進交付金の仕組み等
○市町村交付金の使途は 保険給付にあててもいいのか。
A:特別会計に入れてその中であれば自由に使っていい。都道府県交付金とは全く違う。
市町村評価指標
○Ⅱ(8)①「要介護認定等基準時間の変化」だが具体的にはどう比較するのか。
A:同じ人の基準時間を足し上げて比較する(全体として)。一年後の変化(維持改善)した率がどうかを見る。①は基準時間なので、平成29年3月と平成30年3月の同じ人の基準時間を足し上げて変化を見る。時間の合計で変化を評価。この1年間の変化だけでなく(2)のその前の一年間の変化率の差も見る。②は要介護認定なので、同じ人で介護度が改善した人、維持した人、悪化した人の比率を見る。指標の細かい計算式などはQ&Aも出すことにする。
○統計データを出すことは厚労省が計算するのか。
A:今月次報告で厚労省の介護データベースに入っているのでそれを計算させていただく。
○新規認定を入れると水際作戦になるというが、要介護者の維持改善率を評価するとなると市町村は「要介護度を上げない」という意識が働き軽度認定になるおそれはないか。
A:新規の水際作戦は窓口で断るということで起きるが、要介護認定は調査員が違うところにチェックするということになり、そうことをやれば問題になる。また、評価指標は多職種での検討などプロセス指標の得点が高ければ、あまり不誠実なことでこの指標を下げるということにはならないと思う。
○Ⅰ④2025年の目標は留意点で「内容は評価しない」とあるので、目標・重点施策なるものがあれば内容は何でもよいか。
A:そこは自治体の状況で判断されることなので内容は問わない。
○Ⅱ(2)①「保険者としてのケアマネジメントに関する基本方針」とはどのようなものか
A:介護保険の理念は「自立支援・重度化防止に資する」なので、たとえば持てる能力を生かすためにどういうリハビリをいれるかとか、自立支援を達成するためにはどのようなケアマネジメントが必要かとかいうようなもの。個別のことはQ&Aで示す。
○Ⅱ(3)地域包括支援センター ⑩地域ケア会議は10月までにやっていないとだめか。個別事例は要支援だけでもよいか。
A:地域ケア会議で個別事例のどれをピックアップするのかは自治体の実情なので、要支援1を重点的に見るか、困難事例を見るのかなど何をピックアップするかはあまり縛りをかけるつもりはない。
○「自立支援・重度化防止に資する」とあるが、個別事例は虐待事例やゴミ屋敷事例だけでもよいか
A:そこは個別にお聞きしないとわからない。
○Ⅱ(3)⑪地域ケア会議での個別事例の検討件数は、保険者上位3割以内 10点、5割内5点とあるが、「受給者数」の中には、総合事業だけ利用者は「受給者」数に含むのか
A:基本的には含まないイメージだが、受給者数の計算方法はこれから計算方法をQ&Aを出すので今の時点では答えられない。4月中に回答依頼を出すのでそこに書く予定。
○厚労省として、上位3割以内とはどのくらいのパーセンテージやっているのか
A:今資料がないので答えられない
○Ⅱ(3)⑫生活援助プランの地域ケア会議検証の実施体制については、届出プランの件数見込みを出してそれをさばくだけの地域ケア会議の開催計画をしているかということか
A:この仕組みは10月からなので体制をとっているかどうかである。
○Ⅱ(3)⑩地域ケア会議での検討事例のフォローアップとは、短期目標がその後どうなっているかを検証するような仕組みのことか
A:フォローアップのルールを見るものでその内容を問うものでなく、フォローアップのルールの有無を問うものである。
○現在の会議の中には、一応多職種から意見を聞くがあくまでアドバイスだけで、あとはケアマネ任せという介護もあるが、このフォローアップはその後、どうなっているのかを確認するものなのか
A:コストをかけて地域ケア会議をやって、個別事例の検討をして、その結果がどういう帰結になっているのかを確認するという単純なことである。ケアプランが変わったかどうかでなくフォローアップのルールやその件数を聞くだけである。
○Ⅲ(1)給付の適正化②ケアプラン点検の件数は 全国平均〇%以上とかいうのは実施状況の報告を受けて今から決めるのか
A:平成29年度実績なので、規模によっては同じ条件で並べるのは難しいという意見もあったので、調べてみて差があれば同程度の規模で並べるということ。
○全国平均以下は評価無しか
A:平均以下であれば0点である。
○評価結果はどのように公表するのか。合計点数順に発表するのか。
A:公表方法はただいま検討中。
○課長会議では「順位は公表してほしくない」という意見があったがどうするのか
A:趣旨としては我々もランキングをするためにやっているわけではない。事務連絡の趣旨のとおりなので気持ちは自治体と一緒だと思う。あとは予算の話でもあるので、どれだけ結果がどうだったか、意見も聞きながら考えたい。
【レクチャーを通じて明らかになったこと】
厚生労働省は①従来の国庫負担25%に加え200億円のプラスであること ②評価指標は61のうちアウトカム評価(要介護認定改善)は2項目のみであること ③評価指標は一律10点で加点し、がんばれば交付金が多く配分される ことなどを強調しました。
しかし、今回のレクチャーをつうじて、いくつかの問題点が明らかになってきました。
市町村を「点数稼ぎ」競争に駆り立てる
第1は、市町村を61項目もの「採点基準」で評価し、回答期限までの今年10月までにクリアすれば交付金がより多くもらえ、逆にクリア項目が少なければ少なくなるというノルマを課したことです。市町村分190億円は65歳以上の第1号被保険者で均等に割れば、一人547円程度となります(19,000,000,000円÷34,724,954人)。言い換えれば一人あたり介護保険料が年間574円下げられる金額です。これを全市町村に61項目(612点満点)の評価点を付けて被保険者数を乗じた数で、190億円を割り返して配分するというのです。大半の評価指標が今年10月までにやっているかどうかを基準としているため、市町村は、交付金欲しさに国の評価指標に到達することを競い合わされることになります。
交付金交付額の算定方法
予算総額(190億円程度)×当該市町村の評価点数×当該市町村の第1号被保険者数 / (各市町村の評価点数×各市町村の第1号被保険者数)の全国総和
2018年度~2020年度の第7期介護保険事業計画を策定したばかりの市町村にひたすら国の評価指標の「点数稼ぎ」を強いるこの仕組みは市町村の主体性も自治もないがしろにするものです。
ケアマネジャーへの締め付けを競う合う結果に
第2に、評価指標は61項目のうち、露骨なアウトカム指標(要介護認定の抑制)は二つですが、「介護予防・重度化防止」の名のもとに市町村をして、ケアマネジャーへの締め付けである「自立支援型地域ケア会議」や「ケアプラン点検」、要支援者のサービスを住民ボランティア等に多様なサービスへと移し替えていくことにつながる指標が3分の1以上を占めています。また、その内いくつかは、「全保険者の上位5割」とか、「上位3割」に入らないと加点されず、「全国平均以下」は得点なしという項目もあります。厚生労働省は、どの程度の水準が得点圏内に入るかも明らかにしていません。こうした相対評価は市町村を無内容な競争に追い込むことになります。それは、ケアマネジャーや関係者の意向を無視した強権的な「自立支援型地域ケア会議」の設置運営やケアマネジメントの管理統制などの事態を各地で引き起こしていくことになります。2018年度から居宅介護支援事業所の指定・指導監督権限が市町村に移譲されたことも併せて考えると、市町村によるケアマネジャー締め付けは一挙に強まり、「利用者本位」やケアマネジャーの専門的裁量は否定されていくことになります。「生活援助プラン」(厚生労働省の定める回数以上の訪問回数のケアプラン)の市町村届出義務化と地域ケア会議での検証と是正促しの手法はこれにとどまらず、市町村の自立支援型地域ケア会議を通じて他のサービスへと拡大していく危険性があります。
今後の市町村機能の変質への第一歩
第3に、今後の交付金による市町村機能変質です。制度導入時であることから、厚生労働省は「プラス」面を強調し、評価指標についても「アウトカムは二つだけ」、「広範な指標」で「一律10点」で公正な評価がされ、“ふつうにやっていればそれなりの交付金がもらえる”かのように説明しています。しかし、「200億円の国費を充てる以上は結果説明が必要」と強調し、今後「国庫負担(25%)の削減・傾斜配分」も議論に上る可能性も否定していません。評価指標も来年度以降見直すことも表明しています。最初の一歩は「ソフト」に踏み出しながら、「評価指標-市町村努力-採点・交付金配分」というサイクルがいったん回り始めると、国のさじ加減一つで全国の市町村の「保険者機能」がどんどん変質し、介護保険運営が激変していく危険性があります。
【今後の運動の課題と方向性】
国への交付金撤廃・予算公平配分要求
「保険者機能強化推進交付金」は改定介護保険法の最も重要な内容です。2018年度政府予算では、介護報酬改定(0.54%プラスと公称)分の137億円を大きく上回る200億円規模であることからもこの交付金の重要性は明らかです。
私たちは、この200億円については、このような不当な手段で配分せず、高齢者の負担軽減や介護サービス充実に充てるよう国に求め、保険者機能強化推進交付金の制度撤廃を改めて要求していくことが重要です。
財務省は介護給付費の5パーセントにあたる調整交付金(5000億円規模)をこの保険者機能強化の「評価指標」で傾斜配分する案に固執しています。そうした企みを許さないためにも、その第一歩である、この交付金について撤廃・予算の公平配分を改めて政府と国会へ求めていくことが必要です。
地方自治体に対する課題
保険者機能強化推進交付金制度が動き出した中で、自治体に対する要求運動はきわめて重要です。全市町村が4月から10月までに「評価指標」に対する回答を出さなければなりません。
評価指標については、61項目すべてを否定するわけではありませんが、この指標の中心は、自立支援・重度化防止のために保険者機能を変質させる項目です。
とくに重大な評価指標は次の項目です。
Ⅰ①地域包括ケア「見える化」システムを活用して他の保険者と比較する等、地域の介護保険事業の特徴を把握しているか等
Ⅰ④介護保険事業に関する現状や将来推計に基づき、2025年度に向けて、自立支援、重度化防止等に資する施策について目標及び目標を実現するための重点施策を決定しているか
Ⅰ⑤自立支援・介護予防に資する施策など、保険者としての取組を勘案した要介護者数及び要支援者数の推計を行っているか
Ⅱ(2)①保険者として、ケアマネジメントに関する保険者の基本方針を、ケアマネジャーに対して伝えているか等
Ⅱ(3)⑩地域ケア会議において多職種が連携し、自立支援・重度化防止等に資する観点から個別事例の検討を行い、対応策を講じているか
Ⅱ(3)⑪地域ケア会議における個別事例の検討件数割合はどの程度か等
Ⅱ(6)②介護保険事業計画において介護予防・生活支援サービス事業に多様なサービスの量の見込みを立てその見込み量確保に向けた具体策を記載しているか
Ⅱ(6)⑤介護予防に資する住民主体の通いの場への65歳以上の方の参加者数はどの程度か等
Ⅱ(6)⑦介護予防の場にリハビリ専門職が関与する仕組みを設けているか
Ⅱ(8)①②要介護認定者の要介護認定の変化率はどの程度か
Ⅲ(1)②ケアプラン点検をどの程度実施しているか
Ⅲ(1)④⑤福祉用具や住宅改修の利用に際してリハビリ専門職等が関与する仕組みを設けているか等
これらの評価指標は、612点のうち、140点程度になります。前年実績で評価されるⅡ(6)⑤(通いの場への参加状況)や、厚生労働省が統計データで算出するⅡ(8)①②要介護認定者の要介護認定の変化率などは除き、今年度も可能とされた評価指標について、点数欲しさに市町村が追随しないよう求める必要があります。大阪市などを除き大多数の市町村は第7期の介護保険料を決めるにあたってこの調整交付金は計算に入れていません。また、市町村としてやるべき地域包括支援センターの体制強化や在宅医療介護連携事業、認知症総合支援などをしっかりやっていればある程度の評価点は得られることになります。関係者やケアマネジャーの意見も聞かずに評価指標に合わせるような無謀なことをしないよう要求していくことが重要です。
また、各都道府県にも申入れを行い、保険者機能強化推進交付金への具体的対応策と市町村支援の内容について明らかにさせ、国に追随した市町村指導を行わないよう求めていく必要があります。
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Category: 介護保険見直し
 
 
 
 
 
 
 
 

プロフィール

福祉・介護オンブズマン管理者 日下部雅喜(くさかべまさき)

Author:福祉・介護オンブズマン管理者 日下部雅喜(くさかべまさき)
 福祉・介護オンブズネットおおさか事務局長
 介護保険料に怒る一揆の会事務局長
 大阪社会保障推進協議会介護保険対策委員
 
 

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