2010/08/13 Fri
 社会保障審議会介護保険部会での介護保険制度改正に向けた議論が進められている。

 厚生労働省の「論点提示」には軽度者の生活援助サービスの切り捨てなどとんでもないものもあるが、どうも納得がいかないのは、現在の介護保険制度についての基本的な認識である。

 論議のベースにすえられている「地域包括ケア研究会報告」について、介護保険部会で報告した田中滋慶応大学大学院教授は、現在の介護保険を中心とする日本の高齢者ケアのシステムについて「世界でもトップクラス」という認識から出発している。

 「日本の高齢者ケアの姿は世界でもトップクラスであるとの評価のもとに、何を直したらいいかという議論の立て方をしていました。日本のシステムが大変劣っているからではなく、世界でもトップクラスの国の一つであるからこそ、どうなのだという議論でした。私たちもその立場は崩しておりません。」

 なんとお気楽な検討姿勢ではないか。
 この先生には、介護殺人・介護心中も介護退職も、介護難民も、そして介護人材確保困難による介護崩壊など、日本の介護のまったく認識されてない。

 膨大な特別養護老人ホーム待機者についても
  「不安感からくる見せかけの需要」と決めつける。

 「施設に対する見かけ上の需要が多く生じていて、いわゆる待機者の数となってあらわれています。これは経済学の用語を使うと、本当に高齢者の方のニーズを反映しているわけではなく、施設に対する見かけ上の需要も多く含まれているはずです」
 そして、「理想郷」のような「2025年の地域包括ケアの姿」を描き、「自助、互助、共助、公助」の組み合わせを説く。

 この先生によれば、介護保険は「共助」というのだ。

 そして締めくくりは
「介護保険はとても大切なものです。だから、頼り過ぎてはいけないし、頼り過ぎると逆に不満が生じてしまいます」

と説教をたれる始末である。

 

 これには、介護保険部会で「認知症の人と家族の会」の勝田委員が異議を唱えられた。


「私たちは介護保険とか医療保険というのは公助だと思っているのですが、こちらの中では自助、互助という言葉が入ってきて、社会保険というのは共助なのだ。それで救えない人が公助なのだという区分けをしてありますけれども、一体どこでこのような定義付けがされたのか。」
「だれだって自助・互助も含めて頑張っています。でも、介護の社会化ということを願って介護保険ができて、これを公的介護保険だと思うのですが、この報告書を見ますと、だんだんそれから遠く離れていくのではないかという懸念を抱きます。」



これに対し、この先生は、
「言葉遣いの問題」「居心地がよければ公助とよんでもいい」とゴマカシの2枚舌答弁をのべた。

「言葉遣いの問題なので、公助と呼んでも結構です。公助に2種類あって、ミーンズテストの付かない普遍的な公助と、ミーンズテスト付きの制限的な公助という言葉づかいにしても、それは言葉の定義の問題です。前者を私たちは共助と呼んだだけで、普遍的公助という言葉でも特段に違和感はありません。公助の方が居心地がよければ、そう呼んだらいいと思います。」

 御用学者とはこのようなものなのか。長期間かけて検討した研究会報告書で「自助、互助、共助、公助」とシステムを区分けしたとは、彼らの描く「地域包括ケア」の核心部分である。そして介護保険制度をわざわざ共助に位置づけることのよって、介護保障の公的責任を否定したうえで、「住民助け合い」を描き出したのである。

 その核心部分を批判されると、「言葉遣いの問題」「居心地のよい呼び方で」などとはぐらかすのである。

 まじめに介護保険の利用者・家族に向き合う姿勢など皆無ではないか。

 第26回社会保障審議会介護保険部会議事録 を参照

 

 


 
 
 
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Category: 介護保険見直し

kaigoken >>URL

そうでしたか・・・

>これには、介護保険部会で「認知症の人と家族の会」の勝田委員が異議を唱えられた。

同郷の女性活動家です。
『ゆりかごから・・・・・・墓場まで・・・・・』の活動をされています。(されて来ました)

Edit | 2010/08/15(Sun) 18:58:56

福祉・介護オンブズマン管理者 日下部雅喜(くさかべまさき) >>URL

Re: そうでしたか・・・

大阪でも2年前に勝田さんを講師に学習会を開きました。社会保障審議会で孤軍奮闘されています。勝田さんの頑張りを応援したいと思います。

Edit | 2010/08/15(Sun) 23:09:57

木下 小櫻 >>URL

今後の介護を取り巻く社会

某田舎町の介護支援専門員です。
はじめてコメントします。

介護・福祉・医療をめぐる社会情勢の変化。

わが町では、相次ぐ企業の倒産、雇用の不足から、子供世代の流出・経済的困難を抱える世帯の増加・・・

高齢化率は非常に高いパーセンテージを推移しているのに、
デイサービス事業所の相次ぐ事業縮小・閉鎖。

現在でさえも、利用したくても利用できない人が多く存在し、
次の改正案の動向を思うと、
その人らしい、尊厳を持った、主体的な生活を、送りたくても送れない。

ますます困窮を極めています。

私に出来る事といえば、声に出すこと…それしかない。
でも、時々、凹みます。
それでは、高齢者を守ることもできないだろう?って、自分で叱咤しますが、
「頑張ろう」・「頑張れないかもしれない」
それを繰り返して、介護保険施行後10年間過ごしてきた気がします。

「穏やかに自分なりに暮らしたい」
そんな、ごく当然のせめてもの願いを実現できるようであって欲しいと思います。

長文駄文、失礼しました。

Edit | 2010/08/19(Thu) 02:06:40

 
 
 
 
 
 
 
 

プロフィール

福祉・介護オンブズマン管理者 日下部雅喜(くさかべまさき)

Author:福祉・介護オンブズマン管理者 日下部雅喜(くさかべまさき)
 福祉・介護オンブズネットおおさか事務局長
 介護保険料に怒る一揆の会事務局長
 大阪社会保障推進協議会介護保険対策委員
 
 

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