2010/10/06 Wed
「公費と保険料を税源とする公的社会保険である以上、日常の生活費に困っている高齢者から保険料を徴収したり、これまで保険料を支払ってきた高齢者が、退職して収入がすくなくなったために介護サービスが受けれらない、といったことがあったりしてはならない。」

ごりっぱ! と思わず拍手したくなるような 文書である。

なんと、大阪府の作成した「大阪府高齢者施策戦略レポート2010」の「はじめに」の一節である。
「大阪府では、本レポートにより国に対して制度見直しを要望するとともに、レポートを具体化するため、市町村をはじめ関係機関と連携して予算措置をはじめ、介護保険制度の円滑な運営、高齢者福祉施策の推進に取り組んでいく」と締めくくられている。

さぞかし、りっぱな提言や国への要望が書かれていると思ったら、何のことはない。

府民不在でとりまとめ 
府民の声を全く聞かず大阪府と市町村担当者だけで取りまとめたため、その内容は制度改善とはほど遠いものとなっている。
大阪府は、介護保険料は、2012年度には20%以上も上がるとの試算をしてる。
【大阪府の介護保険料試算】
現在  月4,588円(2009年度~2011年度大阪府平均)
次期  月5,527円(2012年度~2014年度大阪府平均)
   月額939円増 +20.4%
この試算は、介護職員の給与を4万円上げるのに必要な財源まで介護保険財政の枠内で賄うことを前提とした不当なものだが、府が、今年このような試算をあえて行うことで、来年府内市町村で行われる介護保険料改定で大幅引上げは当然というような事態を招きかねない。
公費負担割合引上げも求めす 高齢者に負担押し付けか
 国に「提言」している内容がさらに問題である。大阪府の「提言」は、介護保険料を抑えるための介護保険財政への交付負担割合の引き上げについてあえて国に求めていない。大阪府議会が国に負担割合引上げを要望していることと比べてもきわめて不当な態度である。
 大阪府は、技術的なシミュレーションを行い、「個人単位での賦課」「定額制と定率制併用」(後期高齢者医療保険料と同じ方式)などを主張するにとどまっている。わずかに低所得者軽減のための公費投入を提言するのみである。これでいくと所得によっては現行より大幅に保険料負担が増すことさえ想定される。さらに、「所得と活用可能な資産の双方を保険料に反映する仕組み」まで提言し、高齢者の資産にまで介護保険料をかけようというのである。
減免制度の格差、大阪府としてどうする!
 減免制度について、国に「全国統一の基準を設定されたい」と要望するだけである。大阪府内にある大きな格差(「減免制度なし」から「年収150万以下対象の減免制度」まで大きな開きがある)について、現状を述べるだけで、大阪府としてまったくその方向性について述べていない。さらに、大阪市など一部自治体が国の指導に反して「取り過ぎ保険料」をため込み(介護給付費準備基金)、保険料を不当に釣り上げている問題についても一切触れていない。国に提言するとともに大阪府としてやるべきことをまずやるべきではないか。
介護保険制度の改善求めず、市町村に責任押し付け
 大阪府のレポート(「大阪府高齢者施策戦略レポート2010」)は、保険料以外に、「低所得対策」「認知症施策」「独居高齢者施策」「住まいの安心・安全」の4つについてそれぞれ具体的な提言を行っている。そのなかには注目すべきものもいくつかある。
 しかし、「何年待っても入れない特別養護老人ホーム」に示される「介護難民」問題の解決に向けた施設づくり、必要なサービスも受けられない在宅サービス、とくにホームヘルプサービスを市町村が勝手に制限する「ローカルルール」解消や、状態が悪くなっているのに軽く判定される要介護認定など、介護保険の深刻な問題については、まったく改善の提言も要望もない。

 この「大阪府高齢者施策戦略レポート2010」は大阪府のホームページに公表もされていない。府民の目で総点検と書きなおし要求が必要であろう。


 ちなみに、今年3月に大阪府議会が採択した「意見書」は、特養ホーム待機者解消のための施設整備、介護従事者処遇改善のための報酬引き上げ とともに、保険料上昇を抑えるための公費負担割合の増額を明記している。大阪府の「レポート2010」は、この水準にも遠く及ばない。小役人のたわごとに等しい駄作である。

 

参考 大阪府議会意見書
  介護保険制度の抜本的な基盤整備を求める意見書

 介護保険制度がスタートしてから10年を迎えたが、介護現場では深刻な問題が山積している。
 特に特別養護老人ホームの入所待機者は42万人にも上り、在宅介護においても家族の心身の負担など深刻である。介護保険を利用している要介護認定者とその家族、そして介護事業者および介護現場で働いている人など、介護保険制度に関わる方々から、必要なサービスおよび介護施設の確保、経済的負担の軽減、介護報酬や処遇の改善などを要望する切実な声が数多く上がってきている。
 しかも、15年後の2025(平成37)年には、65歳以上の高齢者人口がピークを迎えると言われている。
 今後さらに進展する超高齢化社会を見据え、「安心して老後を暮らせる社会」の実現を目指すには、介護施設の大幅な拡充や在宅介護の支援強化、利用者負担の抑制、公費負担割合の引き上げなど、必要な見直しが求められている。
 そのため、2012(平成24)年に行われる介護保険制度改正では、抜本的な制度設計の見直しが必要と考える。
 よって国会および政府は、介護保険制度の抜本的な基盤整備をすべく、特に下記の点について、早急な取組みを行うよう強く要望する。 

                       記
1.2025(平成37)年までに「介護施設の待機者解消」を目指すこと。そのために、介護3施設をはじめ、特定施設、グループホームを緊急整備すること。
2.在宅介護への支援を強化するため、24時間365日利用可能な訪問介護サービスへ大幅な拡充を行うほか、家族の介護者が休息を取れるよう「レスパイト(休息)事業」も大幅に拡大すること。
3.煩雑な事務処理の仕分けを行い、手続きの簡素化、要介護認定審査の簡略化を実施し、すぐに使える制度に転換すること。
4.介護従事者の待遇改善につながる、介護報酬の引き上げを行うこと。
5.介護保険料の上限が高くなりすぎることを抑制するため、公費負担割合を5割から増額すること。
6.包括支援センターの機能を充実し、高齢者の生活支援や健康づくりに貢献できるよう支援すること。
 以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
 
平成22年3月24日

衆議院議長
参議院議長
内閣総理大臣
厚生労働大臣
内閣官房長官 各あて

 大阪府議会議長
     朝倉 秀実
 
 

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Category: 介護保険料
 
 
 
 
 
 
 
 

プロフィール

福祉・介護オンブズマン管理者 日下部雅喜(くさかべまさき)

Author:福祉・介護オンブズマン管理者 日下部雅喜(くさかべまさき)
 福祉・介護オンブズネットおおさか事務局長
 介護保険料に怒る一揆の会事務局長
 大阪社会保障推進協議会介護保険対策委員
 
 

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