2010/11/07 Sun
介護保険は市町村が保険者という点では、国民健康保険と同じである。

そこで、少し 全国の介護保険特別会計と国民健康保険特別会計を比較してみた。

介護保険が赤字の市町村は全国でどれくらいあるか?

介護保険の保険者は全国で1,587。赤字(財政安定化基金から貸し付けを受けた保険者)は 9である。たったの0.6パーセント。平成21年度の実態である。黒字の保険者率は99.4%ということになる。
 データは 厚労省の「財政安定化基金貸付状況(平成21年度)」を参照のこと。全国47都道府県のうち赤字保険者がいるとことは7県のみである。

 これが、国民健康保険では、全国1788市町村のうち、赤字は 812市町村で45.4%を占める。
 データは厚労省の「平成20年度国民健康保険の財政状況等について(速報)」を参照のこと。

大変な違いである。

 国保は、単年度収入(経常収入)12兆4,588億円から単年度支出(経常支出)12兆4,496億円を控除した単年度収支差(経常収支差)は93億円であり、さらに、これに国庫支出金精算額等(+109億円)を考慮した精算後単年度収支差引額は202億円となっている。しかしながら、一般会計繰入金(法定外)のうち赤字補填を目的とする2,585億円を収入から除いた、精算後単年度収支差引額は、2,384億円の赤字となる。基金積立金等は、3,375億円あるが、膨大な赤字を考えると厳しい財政状況である。


 介護保険に目を転じよう。
 

 平成20年度介護保険特別会計経理状況を見てみる。
 歳入合計7兆2,351億円、歳出合計7兆469億円、差引残額1,882億円(黒字)となっている。この差引残額のうち、国庫支出金精算額等を精算した後でも1,054億円の黒字となる。
 平成20年度末現在で介護給付費準備基金(取りすぎて余った介護保険料のため込み)の保有額は4,050億円となっている。
 介護保険は、全国で1,054億円の単年度黒字で、保険料のため込み金4,050億円を抱えていたのである。ため込み金(準備基金)をもっていたのは1534保険者だから、全保険者の96%ほどにあたる。ほとんどすべての市町村が介護保険料を余らせて第3期を終えたことになる。


 このため込み金は、平成21年度~22年度の第4期に一部繰り入れられているが、全部ではない。

 介護保険にはもう一つのため込み金が手つかずに残されている。前述した「財政安定化基金」である。


 市町村の介護保険が、保険料の未納や計画を上回る介護給付費の伸びなどにより財源に不足が生じた場合に、一般会計からの繰り入れに頼ることなくこれに対応できるよう、「財政安定化基金」が設けられている。

 これは各都道府県にあり、基金の原資は国、都道府県、市町村が3分の1ずつを負担する形で造成されるが、市町村の負担金は保険料に原資を織り込んで造成されることになっている。要するに財政安定化基金の3分の1は高齢者の介護保険料なのである。

 この財政安定化基金が、先述したように、平成21年度の貸付した保険者数がたった9である。
 市町村の介護保険財政はどこも黒字なので貸し付ける必要などほとんどなくなってしまったのである。
 
 それなのに、全国47都道府県には、平成21年度末で 2,767億円もの基金積立残額がある。


 データは 「都道府県別財政安定化基金貸付・交付等の状況(平成21年度末現在)」

 平成21年度で全国の基金で活用(貸付・交付)されている金額は81億円ほどしかなく、基金積立総額2848億円の2.8%に過ぎない。使うあてのないカネである。

 これを「埋蔵金」と呼ばずして何というか。

 
 将来はさておき、現時点での 市町村介護保険の財政状況、ため込み、そして都道府県財政安定化金の状況というトータルな介護保険財政の実態を見る限り、軽度者の生活援助を縮小したり、軽度者の負担割合を引き上げるような短期的必要性はまったくない。
  
 むしろ、削られ、押さえつけられた介護サービスを取り戻すことこそ必要である。

 社会保障の財政は「黒字」であることが健全なのではない。給付を必要とする人々にきちんと給付がなされているか、これが健全かどうかのメルクマールである。 
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Category: 介護保険見直し
 
 
 
 
 
 
 
 

プロフィール

福祉・介護オンブズマン管理者 日下部雅喜(くさかべまさき)

Author:福祉・介護オンブズマン管理者 日下部雅喜(くさかべまさき)
 福祉・介護オンブズネットおおさか事務局長
 介護保険料に怒る一揆の会事務局長
 大阪社会保障推進協議会介護保険対策委員
 
 

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