2010/12/23 Thu
 2010年もあと1週間あまり。

 久々に 介護問題以外について記す。

 「坂の上の雲」の映像化問題で昨年から物議をかもしている司馬遼太郎の本を何冊か読んだ。「竜馬が行く」全八巻に続き、「ロシアについて 北方の原形」を読んだが、今日の いわゆる「北方領土問題」を考える上で とても興味深かった。

 私は、歴史観はマルクス主義の唯物史観であるので、いわゆる「司馬史観」とは相いれない。しかし、この本のロシアの、シベリア進出の 数世紀にわたる歴史の上に、千島列島問題がある、という指摘は、心底納得できるものである。
 同時に、ロシアのシベリア進出が一方では外蒙古(モンゴル)問題につながり、千島列島とモンゴル問題は、ロシアのシベリア領有という共通項がある ことに初めて気がついた。

 第二次大戦後の千島列島問題の発端となった「ヤルタ協定」の第1項が「外蒙古(蒙古人民共和國)ノ現状ハ維持セラルベシ」であり、第3項が、「三 千島列島ハソヴィエト聯邦ニ引渡サルベシ 」とされたのも、なるほど、この本を読んで納得した。

 一公国にすぎなかったロシアが、ウラル山脈を越え、コザックによる広大なシベリアを征服した行きつく先が、千島問題と蒙古である、という 壮大な叙事詩のような文学的評論であるが、案外、領土問題や民族問題というのはこんなものかもしれない。
 
 くわしくは、同書を読まれたし。
ロシアについて 北方の原形

 それにしても、司馬氏の
「私は、日本が大した国であってほしい。北方四島の返還については、日本の外務省が外交レベルでもって、相手国(ソ連)に対し、たとえ沈黙で欧州され続けても、それを放棄したわけではないという意思表示を恒常的にくりかえすべきだと思っている。しかし、それを国内的な国民運動にしたたていくことは有害無益だと思っている。有害というのは、隣国についての無用の反感をあおるだけということである。ロシア史においては他民族の領土をとった場合、病的なほどの執拗さでこれを保持してきたことを見ることができる。かれらは感情の上では、千島列島は対日参戦という血であがなったものだと信じている(むろん、そういうばかなことはない)。日本が政府主導による国民運動などをしているぶんには、彼の国は、日本はそれを流血でもってとりかえすつもりなのかなどということを、ある種の政治的感情でもって考えかねない体質をもっている。」
「ソ連にはシベリアがある。そのそばに、日本の島々が弧をえがいている。日本が引っ越しをすることができないかぎり、この隣人とうまくつきあってゆくしかない。なにごとかがあって互いに接触する場合、日本側もソ連側も、以上のような原形論ぐらいは頭に入れておく必要がある。」
 という巻末の指摘は、そのまま、2010年の現代に当てはまると思う(ソ連が再びロシアに戻っている点をのぞけば)。

 私としては、この千島列島問題は、1956年の日ソ共同宣言にあるように「日ソ両国は引き続き平和条約締結交渉を行い、条約締結後にソ連は日本へ歯舞群島と色丹島を引き渡す。」、これが日本の領有権主張の限界であると思っている。

 「北方四島」ではない。北海道の一部である二島(歯舞、色丹)のみは、領有権は平和条約交渉の中で主張すればよいと思う。しかし、択捉、国後は、千島列島の一部ある限り、無理である。日本政府のように、「サンフランシスコ講和条約で千島列島は放棄したが、国後、択捉は千島ではない」などという、地政学的にも、国際的にも通用しない詭弁で領土問題を語り、「北方四島」返還などというおろかな「国民運動」を主導するのは愚の骨頂である。

 ロシア大統領が自国の施政権下にある千島列島を訪問したことを、何かしら新たな侵略行為であるかのように、騒ぎ立て、対中国の尖閣諸島問題とセットで、「領土問題」を国民感情に訴えるに至っては、危険な「火遊び」の類である。

 同時に私としては、「スターリン憎し」のあまり、ヤルタ協定そのものを無効とし、千島列島全体(国後、択捉からロシアのカムチャツカ半島の南西に隣接する占守までの諸島)は、1875年に明治政府と帝政ロシアが結んだ樺太・千島交換条約とにより、戦争ではなく平和的な交渉で日本領土として確定しているから、「全千島返還が正当だ」などという 主張は同意することはできない。いくら 平和的交渉だといっても、日露戦争前の「国境」に歴史の歯車をもどすなどどいうのは土台無理な話である。

 領土問題は、外交交渉の場で、行うべきであって、偏狭な民族主義的な「国民運動」や「政争の具」にすべきでない。
 これが私の意見である。
 
スポンサーサイト
Category: 時局争論
 
 
 
 
 
 
 
 

プロフィール

福祉・介護オンブズマン管理者 日下部雅喜(くさかべまさき)

Author:福祉・介護オンブズマン管理者 日下部雅喜(くさかべまさき)
 福祉・介護オンブズネットおおさか事務局長
 介護保険料に怒る一揆の会事務局長
 大阪社会保障推進協議会介護保険対策委員
 
 

月別アーカイブ

ブロとも申請フォーム

ブログ内検索