2018/04/11 Wed
「介護保険卒業がもたらす悲劇~あなたのまちが大東市と同じ失敗をしないために」を発刊した。
以下、私が第1章で書いた冒頭部分
大東市で何がおこっているか
~介護保険改定と大東市介護保険の問題点
はじめに  ~なぜ「大東市方式」が問題なのか
総合事業(介護予防・日常生活支援総合事業)が全自治体でスタートし、2018年度からの介護保険制度改定が進められているさなかに、私たちは、大東市(だいとうし)の介護保険・総合事業の実態を徹底して調査し、市当局とも話し合いを重ねてきました。 2017年11月17日の「大東市介護保険総合事業現地調査団」を中心とする調査活動や大東市当局とのやり取りの中で、私たちは大東市の介護保険問題が、大阪府の一地方都市の問題にとどまらない問題だと認識するに至りました。
それは、2018年度から本格実施される改定介護保険制度の下での自治体の機能変質を象徴しているからです。
大東市の異常な介護保険運営が全国的な意味を持つのは次のような点です。
第一に、総合事業において、現行相当サービス利用者を徹底して削減し、「卒業」を強制し「通いの場」へ移し替え、あるいは住民主体サービスへ移行させ、要介護認定申請をさせないことで、給付を削減し、認定者を減少させるという「突出」したモデルを作りだしたことです。
第二に、大東市自らがこの「方式」を、介護給付費を削減した「成功例」として全国に普及させようとしていることです。大東市は市が100%出資する「大東まちづくり会社」の主要事業に「地域健康プロフェッショナルスクール」を打ち出し、全国の自治体職員・リハビリ専門職に「大東市の地域ケアマネジメント手法を伝授する」として全国展開し、自治体向けのコンサルティングまで行っています。
第三に、介護保険制度改定によって、全国の市町村に「介護予防・重度化防止」のための保険者機能を強化することが義務付けられたことです。2017年5月に成立した「地域包括ケアシステム強化のための介護保険法等の一部を改正する法律」(以下「地域包括ケアシステム強化法」)で打ち出された「介護予防・重度化防止のための保険者機能強化」では、国が示す評価指標に基づいて市町村が目標を設定し、その成果に応じて財政的インセンティブの付与(合計200億円規模の新たな交付金の交付)を行うとされました。大東市が行ってきた「地域の通いの場への高齢者の参加」「保険者によるケアマネジメントの基本方針の周知」「地域ケア会議での『自立支援型ケアマネジメント』の徹底」などいくつかの手法が、そのまま国の評価指標に取り入れらており、全市町村にとって行うべき「目標」とされる危険性があります。
第四に、介護保険制度における「自立支援」が捻じ曲げられようとしていることです。2016年10月安倍首相は未来投資会議で「介護のパラダイムシフト」を宣言し、「『お世話型介護』でない『自立を目指す介護』」、「科学的介護」への転換をはかるとしました。2018年度介護報酬改定では部分的にしか導入されていないものの、「回復」「機能改善」を一面的に強調し、「介護サービスからの卒業」を行政と事業者が一緒になって迫るような制度への変質が狙われています。大東市でこの間起きている、「卒業」の強制などの実態はこうした現政権の「自立支援型介護」が何をもたらすのかを「先駆」的に示すものです。介護保険制度変質を許さないためにも、現にその「先進自治体」で起こっている弊害を明らかにすることは全国的にも意義があると考えるからです。
Category: 介護保険見直し
2018/04/02 Mon
 現役公務員時代、2000年4月から2016年3月まで、堺市役所本庁からこの区役所に「島流し」のように不当配転され一切の昇進栄達の機会を奪われた職場。2000年4月この桜を見ながら、「負けてなるものか」と誓った桜。
 一昨年退職して2年。すっかり忘れていた感覚が、この風景で蘇った。
  しかし、なぜか懐かしい。あそこまで蹴落とされたからこそ、覚悟を決めて16年間闘い続けられた。悔いなき木っ端役人人生。
  今の私があるのも、2000年4月のこの桜と区役所である。

介護保険は詐欺だ と告発した 一公務員 恥ずかしながら18年前のこの桜の誓いが 原点である。

拙著「『介護保険は詐欺だ』と告発した公務員」   


Category: 雑感・雑記
2018/04/02 Mon
日下部雅喜の講師活動  2018年4月~5月

 
 4月18日(水)午後1時30分~5時   大阪府保険医協会M&Dホール
    大阪社会保障推進協議会全国地方議員社会保障研修会
          「第7期介護保険制度の内容と自治体での課題」

 
4月28日(土)午後2時~3時    社会医療法人同仁会本部3階 第3会議室
   みみはらグループ介護職責任者会議
         「介護報酬改定をむかえ、同仁会に求められること」

5月13日(日)午後2時~4時30分 大東市民会館2階ホール
大東社保協・大阪社保協主催 
どうなる?大東市の介護保険市民集会(「介護保険『卒業』がもたらす悲劇」」出版報告会)
 「介護保険制度改定でどうなる大東市の介護保険~大東市の介護保険の実態と私たちの取組みを踏まえて」

5月25日(金)午後6時30分~8時  大阪市港区 田中機械ホール
  NPOみなと合同ケアセンター 「みなと・西・大正かいわい 介護職・事業者の学習と交流のつどい」
   「4月からどうなったん?介護報酬・制度改定」

5月27日(日) 午後    岸和田市立福祉総合センター
  岸和田社会保障推進協議会総会学習会
    「改定介護保険でどうなる」
Category: 活動日誌
2018/03/31 Sat
 一昨年3月末に公務員(堺市職員)生活に終止符を打ち、「第2の人生」を踏み出して丸2年が過ぎた。

 週5日、大阪市西成区でケアマネジャーとして働き、週1日は京都の大学で社会福祉行財政論と福祉計画論を教えさせていただいている。残った時間で、大阪社保協や介護保険料に怒る一揆の会などの活動と、各種学習会などの講師活動と若干の執筆活動を行っている。

公務員時代と比べると収入は半分以下に激減し、休む日・時間も減ったが、何の気兼ねもなく、自由にのびのびと、働き、闘い、学び、そして教えることができる日々に感謝である。もっと早く、この生活に踏み出せばよかった! 決して若くない私にとって一年一年が貴重であるからである。 

今の仕事・活動・生活を考えてみる。

 まず、「本業」のケアマネジャー。 
 行政の末端で長年介護保険に関わってきた私にとっては「憧れ」の職種であった。
 現在、私が担当させていただいている方は43人。そのうち6人が入院中であるが、乏しい経験の私にとっては、まごつきながら支援させていただいている。2年やって、やっとケアマネらしきことが少しはできるようになったかな、といったところである。
 末期がん・在宅看取りのケアマネジメントを担当させていただいた3人の方は、その生き方・逝き方を通して「人間」を教えてくださった。
 「尊い」ケアマネジャーの仕事の一端に私のような未熟な者でも加われたことに感謝している。

 ところで、そのケアマネジャーの仕事が、今回の介護保険制度改定では、評価されるどころか、行政によってがんじがらめにされようとしている。
 一つは、生活援助回数の多いケアプランの市町村への届出義務化と点検・検証の仕組みの導入である。
もう一つは、市町村による「自立支援型地域ケア会議」による、「多職種」によるケアプランの検証の仕組みである。これは、保険者機能強化推進交付金による「保険者評価指標」によって全国に広がろうとしている。

 「利用者本位」はケアマネジャーの生命である。利用者の暮らしを支え続けることにこそケアマネジャーの存在価値があり、人生の「最期」によりそうことができるからこそ『尊い』仕事だといえる。

 ところが一連の改定は、行政主導で、それも介護給付費の抑制のために、「自立支援・重度化防止」をすすめるというものだ。利用者・家族の参加しない「地域ケア会議」で、利用者に会ったこともない「多職種」が検討する「自立支援型のケアプラン」とはいかなるものか。
 加齢とともに老いゆく体に鞭打つように「自立」をせまる「自立支援型介護」は、高齢者の尊厳を否定しないか。

 残念なことに、ケアマネジャーの全国的職能団体は、この一連の「自立支援型介護」にも「ケアマネジャー管理統制策」に反対していない。それどころは、その幹部たちは、まるで厚生労働省のちょうちん持ちのような言動さえ行っている。私も更新研修で拝聴させていただいた職能団体役員ケアマネたちの「研修」内容たるや、まるで厚生労働省のイヌである。

 3年目を迎える今年、利用者と介護現場を守るためにも、ケアマネジャーを行政が管理統制するこの仕組みづくりに「異議あり!」と声をあげ、行政に抵抗していく活動を本格的に始めようと思っている。 
 大阪社保協での活動や介護保険学習会講師活動も、この介護保険改悪の「主軸」というべき、「自立支援型ケアマネジメント」押しつけとケアマネジャー管理統制への闘いを呼びかけ、広げる場として位置づけて頑張りたいと思う。
 一人ひとりの利用者のよりよい暮らしを支える仕事上の実践と、行政・制度に対する社会的な運動とを車の両輪としていきたい。

 大学非常勤講師としての週1日は、社会福祉の行財政論を学生に講義する。これは今年2年目だが、政府のいう「少子高齢化」危機」「社会保障財政危機」論のまやかしを克服し、福祉国家型行財政への展望を明らかにする舞台としたい。20歳前後の社会福祉を学ぶ若者たちは、未来への明るい展望をもってくない。そして半数が奨学金貸与を受けているなど経済的にも恵まれていない。
 若者たちと、日本の社会福祉行財政の真実を見つめ、政府のいう「高齢社会危機論」「財政危機論」を打ち破っていくような学びを作りたいと思っている。

 「第2の人生」まだまだこれからである。
 

 

 


Category: 雑感・雑記
2018/03/16 Fri
大阪市の不当な要介護認定処分に対し、不服審査請求をしていた事件で、大阪府介護保険審査会の「裁決書」が送られてきた。結果は、「認定処分の取り消し」=私たちの勝利だった。

昨年(2017年)6月9日に不服審査請求を行い、審査会の裁決は今年(2018年)の3月8日。実に9カ月に及ぶ審査請求であった。
問題となったのは、入院中の要介護認定の調査で、大阪市の調査員は、本人にまったく質問せず、たまたま廊下にいた看護師に適当に質問し、ケアマネジャー(私)の言葉も無視したずさん調査の結果、不当に低く認定された大阪市の要介護認定処分である。
もともと脳出血後遺症で右半身麻痺があり、大腸がんの手術で入院中の調査であった。本人は70歳代後半の独居男性。退院すれば毎日、複数回の訪問介護が必要な状態であった。
本人はこの不当な認定結果のために、退院後は在宅で1日2回の訪問介護した受けられず、長期にわたり入浴さえできなかった。そのため、病状悪化し、再入院、再手術となった。
ケアマネジャーとして怒り、苦しんだ事件でもあった。
認定結果は「要介護2」。右上下肢麻痺もチェックされず、病院内を看護師に介助されながら歩行器で移動しているのに、移動は「見守り」。前日まで絶食で中心静脈栄養であったのに「食事接収」は「自立」。という基本調査であった。その一次判定を大阪市の認定審査会はそのまま認定した。
しっかり、調査すれば私たちのシミュレーションでは要介護3か要介護4に該当する。
担当ケアマネジャーである私が代理人となって不服審査請求。
経過
2017年6月9日  大阪府介護保険審査会に不服審査請求申立
7月19日  処分庁(大阪市)が「弁明書」提出
8月4日   「反論書」提出
9月25日  大阪市が再弁明書提出
10月16日  「再反論書」提出
12月13日  大阪府介護保険審査会の専門調査員による調査(本人及び当時の入院先病院)
2018年1月26日 口頭意見陳述
2月1日  大阪市が口頭意見陳述質問事項に対する「回答書」提出
3月8日  大阪府介護保険審査会が「裁決」
裁決書
 主文 「本件処分はこれを取り消す。」
 裁決の理由 「当審査会が行った専門調査結果では、第1群1(麻痺(右ー上肢)・(右-下肢))が「ある」、同群5(座位保持)が「自分で支えれば可」、第2群4(食事摂取)が「全介助」、その他過去14日間に受けた特別な医療について(点滴)が「ある」となり、処分庁が本件処分の基礎とした認定調査か結果と相違する点が認められた。 専門調査結果に基づき、当審査会で一次判定を行ったところ、要介護認定等基準時間は、86.1分で「要介護3」となり、本件処分に係る一次判定結果である「要介護2」と相違することが認められた。 本件審査請求に係る一次判定の結果が、これを基礎とした二次判定や本件処分の内容に影響を与えた可能性は否定できない。以上のことから、法第183条第1項に基づく本件審査請求については、本件処分に瑕疵があると認め、行政不服審査法(平成26年法律第68号)第46条第1項の規定により主文のとおり採決する。」
大阪市はこの事件を契機に、ズサンかつ横柄な認定調査の姿勢と、まともな審議も行わず不当な一次判定結果をスルーした介護認定審査会の運営を改善すべきである。
参考
私が提出した2017年8月4日付けの「反論書」
処分庁 大阪市長 吉村 洋文 から提出された弁明書(平成29年7月19日付大福祉第1293号)について、次のとおり反論する。
1 調査が「適正」かどうかについて
弁明書において、「別室にて看護師・同席のケアマネージャーと3人で話をした」「動作確認を行わず聞き取りによる調査へと変更を行った認定調査員の判断に誤りがあるとは言えず」「特記事項には、被保険者本人及び介護者双方からの聞き取り内容の具体的な記載が見られる」「当該調査は適正に実施されたものと考える」と主張されている。当方は、動作確認を行わなかったことのみを不当だと主張しているわけではない。具体的な状況を聞き取り確認することをしないまま、機械的に調査項目の選択をしていったことを問題にしているのである。聞き取りの場所は「別室」ではなく、廊下であり、ナーステーションの前でパソコン入力作業中の看護師に、横から声をかけ、立ち話でいくつかの調査項目を手短に聞いただけの不十分な調査であった。作業の片手間で対応した看護師は聞かれたことしか答えず、調査員も日頃の具体的状況をほとんど質問することなく調査項目の選択を行ったものである。
以下、具体的な問題点を指摘する
(1) 麻痺について
本人は、2007年に発症した脳出血後遺症による右半身麻痺がある。このことは本人や看護師に聞き取ればすぐにわかることであるが、調査員はこのことをまったく把握しないまま調査を終えたため、「1-1麻痺等の有無」は「ない」が選択され、特記事項のどこにも右上下肢麻痺については記載されていない。わずかに「拘縮もないと看護師が伝える」と記載されているのみである。認定調査員テキスト2009改訂版では、麻痺等の有無の調査項目を実際に行ってもらえなかった場合は、①その理由や状況②聞き取りの内容③選択した根拠等の「具体的内容を特記事項に記載する」とあるが、本件調査では「1-1麻痺等の有無」についてはその記載はまったくない。
調査員は当日、本人の下肢を見て著しく浮腫していたため驚き、「あーこれでは歩けませんね」と一人合点し、「あとは看護師さんに聞きますから」と病室を出て、廊下にいた看護師に声をかけ、看護師の「歩行器で歩けますよ」の一言で「えっ歩けるんですか」と驚いていた。特記事項の記載に「両下肢は浮腫している為歩行器の使用で廊下もゆっくり移動」と記載しているのはその「印象」によるものであろう。しかし、右下肢麻痺による歩行の不安定さや、右上肢麻痺による移乗等の動作の困難さについてはまったく特記事項に記載がない。また、特記事項の1-6~9については、動作確認はおろか看護師への聞き取りも不十分なまま作文されたものである。
※参考①(別添1)
本人は身体障害者手帳(右下肢機能著しい障害・4級、右上肢機能軽度障害・7級)の交付を受けており、症状固定している。
※参考②(別添2)、参考③(別添3)本件認定以外の基本調査(平成28年8月16日調査及び平成29年7月13日調査)では、適切に調査した結果、右上肢・右下肢とも麻痺有が選択されている。
※処分庁から提出された証拠書類3主治医意見書にも右不全麻痺については明記されている。
(2)食事摂取について
「2‐3えん下」「2-4食事摂取」について、特記事項で「昨日までは中心静脈栄養の装着であったが今は口で出来ていると看護師が伝えた」と記載し「できる」「介助されていない」を選択している。「口で出来ている」ことだけを聞いて、食事摂取の方法は確認していない。事実は、前日(5月16日)から少量(数口)のおかゆ摂取を始めたものの、腸の縫合不全により保存的加療のためその後再び絶食・中心静脈栄養にもどり、6月8日にようやく食事が再開とり、6月26日に退院となったものである。調査時点で中心静脈栄養が「終了」していたかどうかの判断であるが、「6.特別な医療」では、「6‐2中心静脈栄養」を「有」にし、特記事項では「昨日まで中心静脈栄養されていたがその後食事を口に入れている。介護側より、食事がうまくいくと、中心静脈は取るが、不明な為今も右首に装着ができるようにしていると話す」と根拠づけしている。中心静脈栄養が「継続」扱いであれば、「2-4食事摂取」は「全介助」を選択することになる(調査員テキスト2009改訂版)。調査項目の選択において明らかに矛盾した特記事項の記載をおこなっている。
(3)聞き取った者の確認
介護保険認定調査票の「介添者・同席者氏名欄」は、「調査にあたり主に聞き取った者の氏名を記載する。2人であれば2人の氏名を記載するようお願いしている」(大阪市認定事務センターの説明)とされているが、本件認定調査票では、当方(ケアマネジャー)の氏名のみを署名させ、回答した看護師については確認も署名も求めていない。
2 調査結果の再確認について
調査員の調査が終了した後、当日の本人の「移乗」「移動」にかかる実際の状況は、審査請求代理人とともに確認したヘルパーの「報告者」(別添4)のとおりである。
調査員の特記事項の最後に「翌日同席事業所より電話入り、歩行器を使用しているが介護側は体にぴったりくっつく状態でトイレまで介助したことを伝えて来て『一部介助』と言ってきたが看護師は見守ると言う」と記載されている。あたかも当方の申立てを病院看護師に再確認したかのような記載となっているが、弁明書にはそのような記載はない。調査時には、あまりにも安易に調査員が「介助なし」を選択していくので、当方が「見守りはしていませんか」と口を挟み、看護師が「ええ見守ってます」と答えたもので、「一部介助でなく見守り」と積極的に答えたわけでない。
調査員テキスト2009改訂版では「調査員は調査対象者や介護者に、認定調査の結果で不明な点や選択に迷う点があれば再度確認する。それにより、調査内容の信頼性を確保するとともに、意思疎通がうまくいかなかったための誤りを修正することができる」とある。本件はそのような再確認は一切行われず、修正を拒否した不当なものである。
(1)「移動」の項目の選択について
調査員テキスト2009改訂版では、「2‐2移動」について、「介護者が手を添える、体幹を支える、段差で車椅子を押す等の『移動』の行為の一部に介助が行われている場合」を「一部介助」の選択基準としている。調査日当日のトイレまでの移動はまさにこれに合致するものであった。なお、当日介助していた看護師は「いつもこんな感じです」と述べており、調査日より概ね過去1週間も同様の介助が行われていたものと考えられる。
(2)「移乗」の項目の選択について
調査員テキスト2009改訂版では、移乗について、「介助はおこなわれていないが『見守り等』が行われている場合」を「見守り等」の選択基準としている。当日のベッドから立ち上がり、歩行器につかまるまでの動作は、看護師の見守りの下で行われ、歩行器の位置や角度を看護師が移動させながら行われていた。ベッドから車椅子への移乗に置き換えてみれば「見守り等」が選択されるべきである。なお、特記事項にある「ベッドの端から歩行器へと一人で立って歩く」の記載は、看護師にも当方にも確認していない調査員の作文である。
3 一次判定の修正等について
弁明書では、介護認定審査会で「修正すべき理由はない」と述べているが、つぎの点で不適切なものである。
①処分庁の証拠書類5の審査判定議事録には、「右半身不全麻痺」を主治医意見書が明記しながら、基本調査及び特記事項で麻痺について一切触れていないという不整合について検討した形跡が全くない。
②特記事項で調査員が「※印」をつけて記載した、「2‐2移動」が一部介助に該当するとの当方の申立てについては、審査会で検討すべき内容だが、審査判定議事録では検討の記録がない。
③「6‐2中心静脈栄養」が調査日時点で「終了」か「継続」かについて、特記事項で「特別な医療」としては事実上継続扱いにして「有」選択しているが「2‐4食事摂取」では、終了扱いとし「介助されていない」を選択していることの矛盾についても検討した記録がない。
以上から、「介護認定審査会の運営について(平成21年9月30日付老発0930第5号厚生労働省老健局長通知)」で行われるべき「特記事項及び主治医意見書の記載内容から、基本調査項目の選択が適切に行われたかの確認」「矛盾を認めた場合は、一次判定を修正する」等の検討がなされていないと言わざるをえない。
4 要介護認定等基準時間と一次判定結果について
本件認定での誤った基本調査項目の選択によって算出された要介護認定等基準時間と一次判定は、処分庁の証拠書類4「介護認定審査会資料」によれば、
基準時間 68.2分  一次判定結果 要介護2  である。
これを前述したとおり、基本調査項目の選択を、選択基準に則して一部変更された場合の一次判定は次のようなパターンになる。
パターン1 「2‐1移乗」を「見守り等」へ、「2-2移動」を「一部介助」へ変更
基準時間 79.4分  一次判定結果  要介護3
食事 排泄 移動 清潔保持 間接生活 BPSD関連 機能訓練 医療関連
6.8分 16.1分 14.2分 8.0分 4.5分 6.4分 10.5分 12.9分
パターン2 「1‐1麻痺等の有無」の右上肢および右下肢を「有」に変更
基準時間 73.2分  一次判定結果  要介護3
食事 排泄 移動 清潔保持 間接生活 BPSD関連 機能訓練 医療関連
3.4分                                16.1分 8.2分 16.4分 5.1分 6.4分 7.1分 10.5分
パターン3 「2‐4食事摂取」を「全介助」に変更
基準時間 80.7分  一次判定結果  要介護3
食事 排泄 移動 清潔保持 間接生活 BPSD関連 機能訓練 医療関連
15.4分 11.6分 7.6分 13.6分 5.1分 6.4分 10.5分 10.5分
パターン4  パターン1,2,3の項目をすべて変更
基準時間 92.2分  一次判定結果  要介護4
食事 排泄 移動 清潔保持 間接生活 BPSD関連 機能訓練 医療関連
15.4分 11.6分 20.5分 13.6分 7.8分 6.4分 4.0分 12.9分
5 結論
本件要介護認定処分は、①「調査方法」において、認定調査員テキスト2009改訂版に則した適切な聞き取り及び特記事項記載がなされていない ②調査結果の再確認についても適切に行われず修正もなされなかった ③基本調査項目の選択の一部が認定調査員テキスト2009改訂版に則した選択基準に基づいていない ④介護認定審査会においては、基本調査及び特記事項並びに主治医意見書の記述の整合性等について十分検討されないまま一次判定を「修正する理由はない」と判断され「要介護2」の認定が行われたものである。
本人は2017年6月8日に区分変更申請を行い、2017年7月27日に「要介護3」と認定されたが、6月26日に退院して在宅独居生活を開始し、もっとも手厚い介護が必要な期間は、区分変更認定の結果が出ておらず「要介護2相当」の区分支給限度額内の暫定ケアプランでのサービス利用とならざるを得なかった。その結果、福祉用具貸与と1日2回の訪問介護のみの利用で、長期間入浴もできず、訪問看護もリハビリテーションも利用できない生活となった。
病状が悪化し、7月20日に救急搬送され10日間の入院となるなど不利益を被った。本件認定は不当なものであり、取消しの裁決を改めて求める。
Category: 介護保険見直し

プロフィール

福祉・介護オンブズマン管理者 日下部雅喜(くさかべまさき)

Author:福祉・介護オンブズマン管理者 日下部雅喜(くさかべまさき)
 福祉・介護オンブズネットおおさか事務局長
 介護保険料に怒る一揆の会事務局長
 大阪社会保障推進協議会介護保険対策委員
 
 

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