2017/08/24 Thu
 自治体による「自立」「卒業」の強制
  改定介護保険の先取り、大阪府大東市の実態と問題点  その3


 介護保険の大改革 住民力で費用を抑制!?

「卒業加算」「移行加算」地域包括支援センターへのアメ
 地域包括支援センターが「がんばる仕組み」として、「卒業加算」(サービスから卒業-1年以上サービス利用なし、地域の見守りと活動参加が条件)、「移行加算」(訪問・通所サービス現行相当から緩和型サービスに移行した場合)を設け、100人以上卒業・移行すると200%加算率とした。予防プランを担当する地域包括支援センターを加算というアメでつって卒業・移行へ駆り立てようというのである。
卒業・移行が少ないと「指定更新しない」-事業者へのムチ
 訪問・通所サービス現行相当の指定事業所は、2017年度末で「みなし指定」期限が切れるが、大東市は、総合事業移行時の利用者の30%以上を卒業もしくは緩和型サービスへ移行していないと「指定更新しない」としている。サービス事業所は指定更新されないと2018年度からは要支援の利用者は一人も受け入れられなくなるので、有無を言わさずこれに従わされることになる。まさに、サービス事業者をして利用者を卒業・移行させるムチである。
緩和A型通所サービスも「卒業」に
 多くの自治体では、総合事業で現行相当のサービスが利用できなくなり「基準緩和A型」に移行させられることが問題となっているが、大東市では、緩和A型の通所サービスも原則「3ヶ月で卒業」とされている。市の担当者の説明では「カラオケやレクレーション、マッサージなどは禁止で『楽しくないデイ』」とのことで、「元気でまっせ体操」の通いの場に移行させるためのサービスである。
 また、市の指導を受けて予防プランを担当している地域包括支援センターが通所リハビリ事業所に対して「3ヶ月で卒業して『近くの元気でまっせ体操』に通ってください」と言い、通所リハビリの担当者が「体操の場所まで歩いて20分。そんなに歩けません」と抵抗すると、「3ヶ月で20分歩けるようにしてください。それがプロです」と説教されたという例もある。
(つづく)
Category: 介護保険見直し
2017/08/23 Wed
 自治体による「自立」「卒業」の強制
  改定介護保険の先取り、大阪府大東市の実態と問題点  その2


 介護保険の大改革 住民力で費用を抑制!?

市がケアマネジメントに介入・統制 
 2016年4月に総合事業に移行した大東市では、要支援者のケアプラン(予防プラン)はすべて地域包括支援センター(委託3か所)で作成することにし、居宅介護支援事業所のケアマネジャーは関与することができなくなった。さらに、従来のホームヘルプ・デイサービス(現行相当サービス)を利用するには市と「協議」が必要になった。
 「地域ケア会議」では、自立支援マネジメント事例検討会を居宅介護支援事業所、地域包括支援センターの参加で行い、さらにすべての総合事業プランを市のリハビリ職・保健師がチェックするなど、市が全面的にケアマネジメントに介入し統制するシステムを作り上げている。さらに今年5月には要介護1、2のケアプランの全件点検も実施した。
要介護認定申請をさせない振分けシート
 大東市の「相談窓口対応マニュアル」では、相談を受け付けた場合、要介護認定を案内する振分け基準の1番目に「一人では歩けない(杖をついたり、歩行器を使用しても歩くことができない場合)があげられるなど、認定申請の抑制が行われている。実際に「窓口まで歩いてきた人が『申請できません』と断られた」「認知症の人にも『トイレまで歩いて行けるのなら申請は必要ない』とさせてもらえなかった」という事例があり、ケアマネジャーへの締め付けが強く「認定申請代行すると目を付けられる」という意識が広がっている。2016年4月から2017年2月まで11か月間で、要支援・要介護認定者数は10.5%減少し、とくに要支援1は▲32.3%、要支援2は▲26.0%と激減している。
(つづく)
Category: 介護保険見直し
2017/08/22 Tue
自治体による「自立」「卒業」の強制
  改定介護保険の先取り、大阪府大東市の実態と問題点  その1


はじめに
 7月19日、NHKの「クローズアップ現代」は、介護予防・日常生活支援総合事業(以下「総合事業」)が「もっともうまくいっている自治体」として大阪府大東市を紹介した。 
 介護保険の大改革 住民力で費用を抑制!?
「大東元気でまっせ体操」と住民ボランティアによる「生活サポート事業」によって元気な高齢者が増え、地域の支え合いが進み、介護費用の削減できている、といった紹介がされた。しかし、番組後半で取り上げられたように、デイサービスからの「卒業」(強制的な打ち切り)で行き場所を失い、孤立する人や、週1回の通所リハビリテーションの利用すら認められず、閉じこもり生活になって病状が悪化し、わずか1年で要支援1から要介護5まで重度化した「被害者」も出てきている。
 この大東市の「自立支援」の取り組みは、2017年4月から全国の自治体で実施された要支援者のサービスの一部を市町村事業に移行する総合事業の「模範例」とされ、さらに今年5月26日に成立した「地域包括ケアシステム強化のための介護保険法等の一部を改正する法律」(以下「改定介護保険法」)で打ち出された「介護予防・重度化防止のための保険者機能強化」の「先進例」とされている。今後、総合事業が本格化し、来年度から改定介護保険法が施行され、全国の自治体が「保険者機能強化」として「自立支援」型の介護保険運営をめざしていくことになれば、大東市で起きている事態が全国の自治体で起きかねない。
 
「元気でまっせ体操」を卒業の受け皿に 
 大東市は人口約12.2万人、高齢化率は約26%(約3.2万人)で大阪市のベッドタウンの一つで市域は奈良県と隣接している。
 大東市の高齢者施策の最大の「セールスポイント」は、市の理学療法士が考案した「大東元気でまっせ体操」である。「効きまっせ、若ぅなりまっせ、寝たきりにならんで儲かりまっせ」の合言葉で、市内で約100ヶ所、千数百人が参加しているという。大東市は早くから二次予防事業(要介護状態になるおそれのある高齢者を対象に自治体が行う介護予防事業。一般高齢者対象は一次予防事業)をやらず、この「大東元気でまっせ体操」による地域づくり・住民主体の取り組みを行ってきた。国が2014年法改定で二次予防事業を「非効率」として廃止し一般介護予防事業に再編し、地域リハビリテーション推進事業を制度化すると、大東市は自らの「先見性」に確信をもつことになった。総合事業移行にあたって多くの自治体が、現行相当サービスに基準緩和型サービスを加えて緩やかな移行に踏み出そうとしている時に、大東市は、徹底した「自立」、「サービスからの卒業」路線を打ち出すに至った。
大東市は「元気でまっせ体操」の場を「要支援者はデイサービスに行かなくても通いの場に行けば大丈夫」「介護保険を卒業する人の受け皿」と位置付けている。
(つづく)
Category: 介護保険見直し
2017/08/01 Tue
日下部雅喜の講師活動  2017年8月

 8月3日(木)午前10時~12時  日本共産党滋賀県委員会
 滋賀県地方議員会議学習会
   「介護保険・総合事業 自治体に問われるもの」
 
8月18日(金)午後6時30分~8時 西宮市職員会館1階大会議室
NPO法人介護保険をよくする西宮市民の会学習会
    「介護保険 18年度改定のポイント・狙い ~私たちに何ができるのか~」

8月23日(水)午後1時30分~3時  大阪グリーン会館2階ホール
  介護保険料に怒る一揆の会等 不服審査請求学習意思統一集会
「介護保険はどう変わるか 総合事業と法改定」

8月27日(日)午後1時30分~3時30分  堺市総合福祉会館2階第1会議室 
    特定非営利活動法人堺難病連介護保険学習会
 「これからどうなる?介護保険」
Category: 活動日誌
2017/07/07 Fri
7月5日、第142回社会保障審議会介護給付費分科会が開催され2018年度介護報酬改定に向けた議論が行われたが、「居宅介護支援」については、資料は配布されたものの、他の課題の議論が長引き、時間切れで資料説明さえ持ち越しになった。第142回社会保障審議会介護給付費分科会資料記載されている「論点」から透けて見えるものは何だろうか。
第一は、居宅介護支援事業所の管理者のあり方である。現在は、居宅介護支援事業所の管理者の要件配布「介護支援専門員」であるが、厚生労働省資料からはこれを「主任介護支援専門員」にしようと考えているような表現となっている。管理者の主任ケアマネの割合は44.9%と過半数以下であるため、いきなり指定基準改正は無理にしても報酬の加算減算などで差をつけることなどをたくらんでいるのではないか。介護保険制度始まって以来、全国平均で一貫して「赤字」を続けているのが居宅介護支援事業所である。この欠陥報酬を見直しもせず、ケアマネに対する締め付けばかりしてきたのが厚生労働省である。このような新たなハードル設定など無理難題を持ち出すよりも報酬改善が先であろう。
第二は、特定事業所集中減算見直し問題である。2015年度報酬改定で、大幅に強化されたこの減算は、現場で大きな混乱を引き起こし大問題となっていた。昨年3月に会計検査院が「有効な施策でない」と指摘し、参議院の委員会では見直しを求める決議がされた。まさに「愚策」「失策」であり、即刻見直されてしかるべきものであるが、次期報酬改定まで放置されてきた。サービス付き高齢者住宅併設のサービス事業所の「囲い込み対策」の問題と混同されているが、サービス付き高齢者住宅問題はケアマネ締め付けだけで解決できる問題ではない。
他にも問題は多いが、ケアマネに対する無理難題や締め付けを繰り返す議論でなく、「中立公正」=すなわち経済的独立が出来るだけの抜本的な居宅介護支援費の改善をベースとした検討が行なわれるべきである。
第142回社会保障審議会介護給付費分科会資料
= 論点1 =
居宅介護支援事業所における人材育成の取り組みを促進する観点から、事業所の管理者のあり方についてどのように考えるか。
現状・課題
ケアマネジャーの資質の向上を図るためには、個々の居宅介護支援事業所における人材育成の取り組みが重要となるが、事業所の管理者の中には、人材育成やケアマネの業務の実施状況の把握に課題を抱えている実態がみられる。
管理者が主任ケアマネである割合は44.9%だが、管理者が主任ケアマネでない場合と比較すると、事業所のケアマネに対する同行訪問による支援(OJT)の実施や、ケアマネジメントに関する相談の時間を設けている割合などが高くなっている。
= 論点2 =
公正中立なケアマネジメントを確保する観点から、特定事業所集中減算のあり方や利用者・家族に対する説明・同意プロセスなどについてどう考えるか。
現状・課題
特定事業所集中減算については、昨年3月に会計検査院から、必ずしも合理的で有効な施策であるとは考えられないことなどの指摘を受けており、同年5月の参議院決算委員会において、「ケアマネジメントの公正・中立の確保に向け、現行施策の抜本的見直しも含め、その在り方を十分に検討すべき」との決議がなされている。加えて、介護保険部会においても、その実効性が乏しく見直しをすべきとの意見があった。
近年増加傾向にある有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅などの高齢者向け住まいについて、特に適切なケアマネジメントを求める意見や、訪問介護の生活援助の適正利用の観点から、生活援助の提供がどのように重度化の防止や自立支援につながるかをケアプランに明記することを義務づけるべきとの指摘がある。
居宅介護支援事業所には集合住宅の訪問に係る減算の仕組みはないが、有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅などの集合住宅と併設している事業所は、併設事業所がない場合と比較して、利用者宅までの平均移動時間が短い傾向にある。
= 論点3 =
退院後に円滑に必要な居宅サービスを受けられるようにするために、入院時を含めた医療機関と居宅介護支援事業所との更なる連携に向けた取り組みについてどう考えるか。
現状・課題
今後、重度者や医療の必要性が高い利用者が増えていくと考えられることから、医療ニーズを踏まえた適切なアセスメントや、ケアマネジメントを行う際の医療との連携が重要。例えば、医療機関へ入院した人が退院後に円滑に在宅生活へ移行するためには、入退院時にケアマネジャーが関与し、医療機関との連携を図ることが重要であるが、その取り組みが必ずしも十分でないとの指摘もある。
介護報酬においては、利用者が病院などに入院するにあたって、ケアマネが病院などの職員に対して、利用者の心身の状況や生活環境、サービスの利用状況などの情報を提供することを評価する「入院時情報連携加算」があり、利用者が入院してから遅くとも7日以内に情報提供した場合に算定が可能となっている。実際には、入院後2日以内に入院先の医療機関に情報提供を行った割合は5割を超えている。
入院時の情報提供において問題と感じる点については、医療機関から情報提供を求められないことや、医療機関の医師とコミュニケーションがうまくとれないこと、医療機関に情報提供する機会・タイミングを確保するのが難しいことなどが多い。
介護報酬においては、病院などを退院し自宅でサービスを利用するにあたって、病院などの職員と面談を行い利用者に関する必要な情報を得た上でケアプランを作成し、サービスの利用に関する調整をすることを評価する「退院・退所加算」があり、入院期間中3回まで算定することができる。
利用者が病院などから退院する際、ケアマネ側から医療機関に対してカンファレンスの開催を求めるなどの取り組みも行われているが、医療機関の都合に合わせた訪問調整など、退院時に医療機関から利用者情報を得ることに困難を感じている事業所が多い。
= 論点4 =
末期がんの患者に係るケアマネジメントについてどう考えるか。
現状・課題
末期がんの患者へのサービス提供に際して、患者の状態に応じた真に必要なサービスが迅速に提供されていない場合があるとの指摘がある。
Category: 介護保険見直し

プロフィール

福祉・介護オンブズマン管理者 日下部雅喜(くさかべまさき)

Author:福祉・介護オンブズマン管理者 日下部雅喜(くさかべまさき)
 福祉・介護オンブズネットおおさか事務局長
 介護保険料に怒る一揆の会事務局長
 大阪社会保障推進協議会介護保険対策委員
 
 

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